最大の問題は憲法の基本原理である権力分立を破壊する検察庁法改正案を入れ込んだことだ―― 内閣による検察人事への介入を恒常化する検察庁法改定案を含む国家公務員法等改定案が、衆院で審議入りし、質疑にたちました。
私は、発端は安倍政権が1月に黒川弘務東京高検検事長の定年を、検察庁法の63歳退官の規定を踏みにじり延長させる閣議決定をしたことだ、と指摘。戦後、日本国憲法のもとで制定された検察庁法が退官年齢を定めたのは、検察官人事への政治の恣意的な介入を阻止し、検察官の独立性確保のためだと強調しました。
検察庁法の立法趣旨や『国公法の定年制度は検察官に適用されない』とのこれまでの政府見解に照らして閣議決定が違法であることは明らかだ。昨年10月に確定していた改正案は、検察官の定年退官を65歳に引き上げ、63歳からは役職につかないというものだったのに、違法な閣議決定につじつまを合わせるため検察官の役職定年に例外を設け、内閣が認める時は63歳を超えても、さらには退官年齢(65歳)を超えても検事長などのまま勤務させることができるという抜け穴まで設けたもので許されない。黒川氏の定年延長を決めた閣議決定と検察庁法改定案は撤回すべきだと求めました。
菅義偉官房長官は、閣議決定も法案も撤回の必要はないと強弁しました。
検察庁法改定案、国家公務員法改定案への質問の要旨は以下の通りです。
新型コロナウイルス感染症対策について野党は一貫して、全国民に10万円の給付金支給をと求めてきました。所得制限を設けず、ただちに給付金支給に踏み出すべきです。
国家公務員法等改正案の最大の問題は、憲法の基本原理である権力分立を破壊する検察庁法改正案を入れ込んでいることです。コロナ対策に全力を尽くすべきさなかに火事場泥棒的に押し通すことなど許されません。
発端は、安倍政権が1月31日、黒川弘務東京高検検事長の定年を、検察庁法の規定をふみにじり、国公法の勤務延長制度を根拠として延長させる閣議決定にあります。これは、1981年以来、「国公法の定年制度は検察官に適用されない」とする政府見解を投げ捨てるものです。
そもそも検察庁法が検察官の退官年齢を定めたのは、検察官が強大な権限を持っていることから、その人事への政治の恣意(しい)的な介入を阻止し、検察の独立性を確保するためです。
重大なのは、この違法な黒川氏の定年延長の閣議決定による解釈変更につじつまを合わせるために検察庁法を「改正」しようとしていることです。
昨年10月に内閣法制局の審査を完了していた改正案は、検察官の定年退官を65歳に引き上げ、63歳からは役職につかないというものでした。ところが法案は、検察官の役職定年に例外を設け、内閣が認めるときは、退官年齢も超えて検事長や次長検事などのまま勤務させることができるという抜け穴まで設けたのです。
「桜を見る会」や前法相への家宅捜索が問題になる中で提出されたのを見ても、政権の保身を図るためであることは明らかです。検察官を官邸に従属させ、刑事司法の独立と公正、権力分立を脅かす国家権力私物化は断じて認められません。
国公法改正案は、国家公務員の定年を60歳から段階的に65歳に引き上げます。60歳を超える職員の給与を7割に引き下げるとしていますが、根拠を示せない給与の切り下げは、地方公務員などの定年延長のあしき先例になりませんか。
総人件費抑制政策の下での定年延長は、給与引き下げと新規採用抑制によるいびつな年齢別構成を生み出すことになります。同政策は撤回すべきです。
「議事録」
<第201通常国会 2020年4月16日 本会議 19号>
○塩川鉄也君 日本共産党を代表し、質問します。(拍手)
冒頭、新型コロナウイルス感染症対策について伺います。
日本共産党を始め野党は、一貫して、全ての国民に十万円の給付金支給を求めてきました。今や、与党幹部からも同じ要求が出されています。
安倍総理が述べたという、方向性を持って検討するとは、どういうことですか。所得制限を設けず、全ての国民に十万円の給付金支給に直ちに踏み出すべきではありませんか。官房長官の答弁を求めます。
議題の国家公務員法等改正案の最大の問題は、憲法の基本原理である権力分立を破壊する検察庁法改正案を入れ込んだことです。コロナ感染症対策に全力を尽くすべきさなかに火事場泥棒的に押し通そうなど、断じて許されない暴挙であります。
発端は、安倍政権が、本年一月三十一日、黒川弘務東京高検検事長の定年について、検察庁法の満六十三歳退官の規定を踏みにじり、国家公務員法の勤務延長制度を根拠として延長させる閣議決定を行ったことです。
この閣議決定は、一九八一年に国家公務員に定年制度を導入して以来、国公法の定年制度は検察官に適用されないと一貫して示してきた政府見解を投げ捨てるものであり、断じて許されません。
そもそも、戦後、日本国憲法のもとで制定された検察庁法が検察官の退官年齢を定めたのは、検察官が起訴権限を独占し、時に総理大臣の訴追も行うという強大な権限を持っていることから、検察官人事への政治の恣意的な介入を阻止し、検察の独立性を確保するためです。このことは、一九四七年の法制定時から明確にされています。
検察庁法の立法趣旨、国公法の政府見解に照らして、黒川氏の定年延長の閣議決定が違法であることは明らかです。
重大なのは、この違法な解釈変更につじつまを合わせるため、検察庁法を改正しようとしていることです。
昨年十月に内閣法制局の審査を完了していた改正案は、検察官の定年退官を六十五歳に引き上げ、六十三歳からは役職につかないというものでした。
ところが、法案は、検察官の役職定年に例外を設け、内閣が認めるときは、六十三歳を超えて、さらには退官年齢も超えて、検事長や次長検事などのまま勤務させることができるという抜け穴まで設けました。
まさに、内閣による検察人事への露骨な介入を恒常化するもので、許されません。
安倍総理自身が桜を見る会の問題で刑事告発され、広島地検による前法務大臣らへの家宅捜索のさなかに提出されたことを見ても、本案が政権の保身を図るためのものであることは明らかであります。
検察官を官邸に従属させ、刑事司法の独立と公正、権力分立を脅かす、国家権力の私物化であり、断じて認められません。
黒川検事長の定年延長を決めた閣議決定及び検察庁法改正案は撤回すべきではありませんか。官房長官の答弁を求めます。
次に、国公法改正案についてです。
本案は、国家公務員の高齢期職員の活用を図り、年金受給年齢との接続のため、六十歳の定年を段階的に六十五歳へと引き上げるとしています。
六十歳を超える職員の給与を七割に引き下げるとしていますが、政府が給与七割の根拠としている厚労省調査は、再雇用が八割を占めるデータをもとにしています。雇用が継続する定年延長後の給与について、再雇用を参考にするのは、根拠となり得ないのではありませんか。
きちんとした根拠を示せない給与の切下げは、地方公務員や民間企業の労働者が定年延長した場合、あしき先例になりはしませんか。
背景には、公務の人員と給与の削減を推進してきた総人件費抑制政策があります。このもとでの定年延長は、給与引下げと新規採用抑制によるいびつな年齢別構成を生み出すことになります。総人件費抑制政策は撤回し、定員管理を柔軟に運用し、必要な定員を確保する仕組みに改めるべきではありませんか。
また、本法案には、能力や実績に基づいた人事評価を徹底し、給与に適切に反映することを求める附則が盛り込まれました。このような人事評価制度の徹底は、内閣人事局による幹部職員人事の一元管理と相まって、全体の奉仕者としての公務員制度をゆがめ、時の政権にそんたくする公務員を生み出す仕組みになるのではありませんか。
答弁を求め、質問を終わります。(拍手)