関東地方の主な米軍・自衛隊施設に関する2023年度予算案の内容が明らかになりました。
いくつかのポイントを記すと
1)安保3文書を受けて、概算要求段階よりも大幅に増額している。「事項要求」となっていた項目で、多くの予算が計上されている。概算要求段階では「事項要求」となっていた陸自大宮・相馬原・新町・吉井・宇都宮・古河駐屯地や空自百里・府中基地で、施設整備費の予算が計上されている。
百里基地では一気に44億円も計上され、「自衛隊施設の抗たん性の強化」などとして、空調設備の整備、格納庫の建替え、滑走路の液状化調査などが行われる。
入間基地では、概算要求段階は86億円だったが、予算案では210億円に増加。基地内の管路等の更新に115億円が充てられている。
2)空自入間基地や防衛医科大学校で、自衛隊衛生(軍事医療)の機能強化が図られている。自衛隊は、安保3文書「衛生機能の変革」に基づき、戦傷医療対処能力向上を中核課題として、
①統合運用態勢の強化
②南西地域重視のシームレスな医療・後送態勢の強化
③防衛医科大学校の抜本的改革に取り組むとしている。
空自入間基地では、航空機動衛生隊庁舎新設の調査費が計上され、C-2輸送機に搭載する「空飛ぶ手術室」の機動衛生ユニット1個を運用する要員を小牧基地から移転させる。
航空基地から自衛隊病院に患者を搬送するための大型救急車両も配備される。
自衛隊入間病院には、航空後送間救護のための訓練装置(輸送機内を模した装置)を導入する。
防衛医科大学校では、戦傷者の受け入れに対応するため、医療従事者確保の抜本的改革を図るとともに、中央診療棟の建替などをとらえ機能強化を図る。
防衛医学研究センターでは、人工知能の認知戦対処のための脳認知科学の研究を行い、脳波測定のシールドルームを設置する。
3)宇宙軍拡の推進。空自府中基地の宇宙作戦群が増員され、宇宙領域把握(SDA)衛星等の新たな装備品受け入れや指揮統制機能の強化を行う。そのための庁舎の新設を行う。
空自入間基地では、宇宙領域把握(SDA)衛星を運用する地上施設の整備を行う。
4)引き続き空自入間基地に関する予算が大きい。施設整備費だけで約210億円。
①航空輸送の兵站拠点。C-2輸送機関連の施設整備費として、誘導路の改修(6億円)、燃料貯蔵施設の新設(25億円)、整備格納庫の新設(23億円)、整備場の新設(15億円)、火薬庫の新設(2億円)、C-2対応のフライトシミュレーター、消音装置設置のための調査工事費2千万円を計上。C-2輸送機2機の取得費に597億円。滑走路側と災害対処拠点地区を結ぶため、西武池袋線をアンダーパスする地下連絡道路の整備に5億円。
②自衛隊衛生(軍事医療)に係る経費。航空機動衛生隊庁舎新設の調査、大型救急車両整備の調査。
③「電磁波領域における能力」として、電子作戦部隊(航空戦術教導団電子作戦群)の強化。電波情報収集機(RC-2)1号機の機体構成品の取得45億円。2号機の機上電波測定装置の取得135億円。1号機はすでに配備。今後の配備予定は、2027年度に2号機、2028年度に3号機。
④「宇宙領域における能力」として、宇宙領域把握(SDA)衛星の地上局の整備に係る経費約3億円を計上。
詳細は以下の通りです。
1.米軍施設(横田飛行場、所沢通信施設、大和田通信所、厚木海軍飛行場)に係る予算 | ||
横田飛行場提供施設整備 | 歳出ベース15億6000万円 | 契約ベース67億7500万円 |
消防署の老朽更新、倉庫(給油機器)、整備用格納庫(C130)の老朽更新、ユーティリティ(給水・給電・給汽) | ||
厚木海軍飛行場提供施設整備 | 歳出ベース8億3900万円 | 契約ベース21億6200万円 |
汚水排水施設(調査)、雨水排水施設(調査及び工事)、車両工場改築、ユーティリティ(給電・給水) | ||
所沢通信施設及び大和田通信所に関係する経費は要求していない | - | - |
- |
※金額欄の(*)は、防衛省が「予定価格が類推されることから提示不可」としたものを指す。
3.陸上総隊隷下の部隊(司令部および司令部付隊、第一空挺団、第一ヘリ団、中央即応連隊、特殊作戦群、中央特殊武器防護隊、対特殊武器衛生隊、国際活動教育隊、中央情報隊、システム通信団、水陸機動団、電子作戦隊)及びその他の主な部隊に係る予算(装備品等) | |
陸上総隊司令部及び司令部付隊(朝霞) | - |
計上事業なし | |
第一空挺団(習志野) | 約30億円 |
空挺傘4億円・中距離多目的誘導弾12億円・小銃等火器6億円・重量物投下機材7億円 | |
第一ヘリ団(木更津) | 約2億円 |
通信機テスト機材 | |
中央即応連隊(宇都宮) | 約4億円 |
近距離監視システム(宿営地センサー・カメラ)。IEDジャマー(無線式起爆装置妨害) | |
特殊作戦群(習志野) | 約10億円 |
「内容は公表できない」 | |
中央特殊武器防護隊(大宮) | - |
計上事業なし | |
対特殊武器衛生隊(三宿) | 約0.1億円 |
生物剤対処用衛生ユニット用消耗品 | |
国際活動教育隊(駒門) | - |
計上事業なし | |
中央情報隊(朝霞) | - |
計上事業なし | |
システム通信団(市ヶ谷) | 約80億円 |
システムネットワーク管理機能の整備(3年分) | |
水陸機動団(相浦) | 約56億円 |
小銃・狙撃銃・迫撃砲23億円。戦闘服一式12億円。火力戦闘指揮統制システム16億円。車両(大型トラック12台・偵察用オートバイ12台)3億円。ボート等4億円 | |
電子作戦隊(朝霞) | 約7億円 |
電磁波作戦管理統制システム | |
大井通信所(ふじみ野市) | 6100万円 |
保全警備システムの保守整備300万円、通信所警戒監視要員(役務)の確保3600万円。施設の整備2100万円 | |
防衛医科大学校(所沢) | 約176億円 |
患者医療費39億円、学校機能維持費78億円、インフラ整備費(医学生舎建替え等)31億円、医療備品整備28億円、防衛医学研究センター0.3億円。内部改修。研究機能強化(脳波測定のシールドルーム設置。人工知能の認知戦対処のための脳認知科学の研究) | |
航空医学実験隊(入間) | 約8.2億円 |
航空医学用器材等の維持費2.1億円。航空医学用消耗品の取得0.1億円。空間識訓練装置の改修4.9億円 | |
航空機動衛生隊(小牧) | 0.5億円 |
人体型の高度救急処置シミュレーターの取得、更新。隊の一部機能を入間基地に移転する。機動衛生ユニット1個分の入間に移す(ユニットは全部で4個) | |
航空戦術教導団電子作戦群(入間) | 約183億円 |
電波情報収集機(RC-2)1号機の機体構成品の取得45億円。2号機の機上電波測定装置の取得135億円 | |
陸自化学学校(大宮) | 284万円 |
学校教育に必要な消耗品、教材等の経費 |