第190 通常国会 2016/1/4~2016/6/1 日付:2016-06-20 |
(1)石炭火力発電推進政策を批判
1)温暖化対策に逆行、石炭火力推進の転換を求める。(3月8日、環境委員会)
石炭火力発電の国内新設と海外展開を一体で推進する安倍政権のエネルギー政策を批判し、省エネと再生可能エネルギーの普及へ転換することを求めた。
昨年12月の国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)は、今世紀後半に温室効果ガス排出ゼロを目指して「パリ協定」を採択。日本政府は2030年までに13年比26%削減を達成目標としているにもかかわらず、石炭火力発電41基の新増設が計画されている。
新増設が相次ぐのはなぜか。安倍政権が成長戦略としている「日本再興戦略」で「高効率火力発電(石炭・LNG)の導入推進及び国際展開」を掲げている。世界の流れに逆行する“石炭火力推進政策”だ。
丸川珠代環境相は「国内と海外は別。海外では石炭火力を選択せざるを得ない国がある」などと述べた。
石炭火力のプラント輸出を進めるために、国内でも石炭火力の建設を進める。これは原発輸出のために国内の原発再稼働をめざすのと同じ構図だ。
また、環境相と経産相が合意した電気事業分野における地球温暖化対策が電力業界の自主性にゆだねられている。電力会社などに排出削減を義務づけるものではない。政府の国際的な約束も達成することはできない。
2)地球温暖化対策推進法で参考人質疑/原発と石炭火発止め再エネへの転換を(4月22日、環境委員会)
地球温暖化対策推進法改定案について参考人質疑。気候ネットワークの平田仁子理事、東北大学の明日香壽川教授らの意見陳述と質疑が行われた。
意見陳述で、NPO法人気候ネットワークの平田仁子理事は「法律の中に削減の中長期目標が明記されていない。パリ協定での「今世紀末までに温室効果ガス実質ゼロ」を受けた長期的に取り組んでいく足掛かりとしては、全く不十分」と主張。東北大学の明日香壽川教授は「日本の削減目標(1990年比18%減)は低すぎて米中EUよりも劣るというのが国際的評価」と指摘した。
地球温暖化対策計画で、2030年における電源割合が原発20~22%、石炭火力発電26%を示し、両電源に固執する政府の姿勢について質問。
原発について平田氏は「福島原発事故後の多くの国民の思いを反映していない。原発はゼロにすべき」、明日香氏は「太陽光や風力発電のコストは原発よりも安くなっている。原発無しでも温暖化対策は可能」と指摘した。
石炭火力発電について平田氏は「40基を超える新設計画を出しているのは日本だけ。事業者の自主目標任せが原因」。明日香氏は「科学的事実として、パリ協定の1.5度目標を達成するためには、石炭を止めるしかない」として再生エネルギーへの転換を求めた。
原発推進が再生可能エネルギーの普及の障害となり、CO2削減を困難にしてきたことも問題です。主要国が石炭火力発電の抑制に踏み出しているのに、逆に増やしている日本の異常さが際立っています。
3)石炭火力推進は温暖化対策に逆行と追及(4月26日、環境委員会)
地球温暖化対策推進法案を採決し、与党などの賛成多数で可決。共産党は反対した。
反対討論で▽日本の削減目標は1990年比で18%減にすぎず、「2度を下回る」とのパリ協定の合意目標達成には不十分。▽日本の温室効果ガス総排出量の4割を占める電力部門で、石炭火力発電と原発を推進する一方、家庭部門には4割の削減を求め、石炭依存のツケを国民に押し付けるものだ。
討論に先立つ質疑で、二国間クレジット(JCM)の問題について質問。JCMとは相手国に製品やサービスを提供し、その結果削減された温室効果ガスの一部をクレジットとして取得し自国の削減分にカウントする仕組み。
JCMには原発や石炭火力発電も含まれるのか――との質問に、環境省は「二国間の合意内容による」と述べ、含まれることを認めた。
国内で石炭火力を新増設し温室効果ガス排出量を増やす。海外に石炭火力を輸出しJCMでクレジットを獲得する。そしてそのクレジットで国内分の穴埋めをする。国内でも海外でも石炭火力拡大では地球温暖化対策に逆行するものだ。
丸川環境大臣は「電気事業については、エネルギーミックスと整合性のある基準を設定し、火力発電の高効率化を促進していく」と述べ、石炭火力発電を推進する姿勢を示した。
(2)PCB対策
1)PCB処理問題/環境省は責任果たせ(4月1日、環境委員会)
毒性の強い化学物質・PCB(ポリ塩化ビフェニール)廃棄物の化学処理施設で相次ぐトラブルの問題を追及した。
PCB処理施設の建設時に環境省が住民に「安全対策に万全を期す」と説明してきた経緯を確認。しかし、処理事業者JESCOによる全国5施設で長期の操業停止が繰り返されている。
昨年11月末から停止したままの北九州事業所(福岡県北九州市)では、排ガスからの高濃度の有害物質の検出を1年半も隠蔽していた。環境省が事業運営をJESCOに任せ、JESCOも運営を他社に委託している。丸投げの連鎖がトラブルの大本だ。
また、11年に2カ月間操業停止した豊田事業所(愛知県豊田市)では、派遣労働者が職員の約6割を占め、現場作業の多くを担っている。夜間は派遣労働者だけで指揮命令者がいない実態がある。安定した雇用確保を求めた。
丸川珠代環境相は「住民との信頼関係をゆるがしてはならない」「JESCOへの指導監督を徹底する」と述べるにとどまった。
PCBの安全な処理は環境省の責任だ。非正規化でコスト削減を進めた安全対策の軽視が問われている。
2)PCB特措法改定案/「廃棄処理は業者負担で」と要求(4月5日、環境委員会)
毒性が強い化学物質PCB(ポリ塩化ビフェニール)の無害化処理の対象などを拡大するPCB廃棄物特措法改定案を採決し、全会一致で可決。採決に先立って質問した。
処理費用がすでに当初想定を上回る約4400億円に達したうえ、さらに3800億円の膨大な費用に加え、処理施設の解体撤去費用もかかる。排出事業者の負担と国民の税金によって賄われている。『汚染者負担の原則』に立って製造者に負担を求めべき。
丸川珠代環境相は、排出事業者が破産した場合などに限って「(製造者への)負担のあり方は検討する」と答弁。
条件を限定せず、しっかり負担させるべきだ。
経産省が電気事業法に基づいて把握している使用中のPCB使用電気工作物が2万台ある。環境省に、この2万台を今後見込まれる処理対象量に含んでいるのかただすと、同省は「すべて見込んではいない」と答え、処理対象量に含んでいないことを認めました。
処理を期限内に終わらせる必要があるのに、その計画作りにすでにあるデータすら活用していない。これではまともな対策はとれない。環境省の責任と本気度が問われる。
丸川環境相は「データはデータとして実態の確認をすすめる」と責任を認めませんでした。
(3)「環境再生保全機構法」改定案審議、公害被害の対策後退の懸念
大気汚染や石綿(アスベスト)健康被害等の補償資金の徴収・補償給付の配分等を行う独立行政法人環境再生保全機構に新たに業務を追加する「独立行政法人環境再生保全機構法」改定案の問題点を追及した。
環境省は「業務運営の効率化」を理由に、同機構の2009~13年度「中期計画」に対し、一般管理費・業務経費の2~3割削減、人員も154人から140人へと純減を強要。さらに、現状でも同機構が公害被害者への補償に支援体制を十分整備できていないのに、14~18年度計画でも大幅な削減目標が提示されている。
石綿健康被害に取り組む市民団体からの「以前は申請から認定まで2カ月で結果が出ていたが、今は長いと半年を超える。認定前に亡くなる方も多く、体制の強化が必要」との声を紹介。環境省の「効率化」方針に加え、改定案で機構への新たな業務の追加で、人員面でも財政面でも公害健康被害対策が後退することになりかねない。
同省の三好信俊総合環境政策局長は「(新規増員は)2名程度。既存の業務の配置転換で3名確保したい」とするにとどめ、丸川珠代環境相は「現場の声を聞きながら、業務がある程度効率化ができて、新しい業務に対応できるような体制を構築していく」と答弁。
同改定法案は同日の同委員会で、自民、公明、民主・維新、おおさか維新、生活、結集の各党・会派の賛成で可決した。(3月18日、環境委員会)