【内閣委員会】デジタル推進を口実にした行政サービス後退を批判

 行政の手続を原則オンライン化し「紙からデジタルへ」移行させる、デジタル手続法案についてただしました。

 マイナンバーカードを利用しコンビニでの住民票写し交付が可能になったことを理由に、東京都北区や練馬区で区民事務所分室や出張所が全廃となった。政府は、国民にデジタルを使いこなせと煽るだけで、ITやデジタルの対応が困難な人には、従来の窓口での対面による事務手続きがなくなることで利便性の後退が懸念される。

 また、富山県上市町議会では、日本共産党町議が「3人目の子どもの国保税の均等割りの免除、65歳以上の重度障害者の医療費窓口負担の償還払いを現物給付へ」と提案したのに対し、町長が、国が導入をすすめる「自治体クラウド」(複数自治体で情報システムを共有化し標準化)を採用しているため「町独自のシステムのカスタマイズはできない」と答弁している。

 総務省が自治体に「システムのカスタマイズ抑制等に関する基本方針」を通知していることは「地方自治の侵害」だ。自治体クラウド導入で、システムに業務を合わせるようになっており、住民の多様なニーズに応えることを棚上げにし、住民サービスの拡充の妨げになっている。

 総務省の佐々木審議官は「議会、首長が同意し、住民サービスの向上をするためのカスタマイズをしてはいけないという助言はしていない」と答えました。

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「議事録」(質疑)

<第198通常国会 2019年04月26日 内閣委員会 15号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 デジタル手続法案について質問をいたします。
 まず大臣に伺いますけれども、この法案は、行政手続に関する事務に用いる情報を書面からデジタルデータに転換をするものです。平井大臣も答弁の中で、紙からデジタルに移行するというふうに述べておられました。そうしますと、今後は、この行政手続に関する事務、業務においては紙は使わないということになるんでしょうか。

○平井国務大臣 本法案は、行政手続の利便性の向上を図り国民の負担を軽減するために国の行政機関に対してオンライン化の義務を課すものであり、紙による手続を否定し、申請者に対してオンライン申請を義務づけるものではありません。
 他方で、私はIT政策担当大臣として、全ての国民の皆さんにデジタルの利便性を実感していただき、将来的には行政サービスを全てデジタルで完結させる方向に向かわせたいとは考えております。
 このために、本法案においては、申請等に係る添付書類の省略やオンラインによる手数料の納付を可能とすることによりオンライン申請の利便性を向上させるとともに、高齢者等もデジタル技術を活用し、その恩恵を受けることができるようにするためのデジタルデバイド対策を講ずることとしています。
 このような取組を通じて、全ての利用者にとって利便性の高い行政サービスを実現しつつ、紙からデジタルへの転換を図っていくということであって、その場で全ての紙をなくすということを目的にしているわけではございません。

○塩川委員 紙を否定し、オンライン申請を義務づけるものではない、同時に、デジタルで手続が完結する、そういうものに向かっていきたいというお話です。
 それで、デジタルについては、やはり利便性の向上の面は当然あるわけですし、同時に、デジタルをめぐっては、セキュリティーの問題、あるいは議論にもなっているような個人情報保護の問題、またデジタルデバイドの問題も問われているわけです。ここに対しての対応策が実際どうなのかということが問われてくるわけであります。
 そういったときに、利便性の向上ということであれば、申請者、利用者にとって、デジタルも紙も両方使えるという状態が望ましいんじゃないかと思うんですが、どうでしょうか。

○平井国務大臣 ですから、国民との接点のところのインターフェースは、要するに、いきなりデジタルに全部踏み込んで、それにストレスを感じるような方々がたくさんいるようでは困るわけですね。ですから、そこらあたりを本当にうまく考えていかなきゃいけないし、デジタルにする場合には、そこにサポートする人たちがやはりいること。本来はデジタルも紙も一緒なんですけれども、結局デジタルの方が便利なのに、デジタルを便利だと感じない方々もいらっしゃると思うんです。そこのところをどのようにサポートすれば、一度やってしまえば必ずデジタルの方が便利だと感じていただける方がふえると思いますので、そこらあたりを社会全体で進めていくような、サポートする体制を総務省の方で御検討いただいているというふうに承知しております。

○塩川委員 ですから、サポートする人がいてデジタルの利用が進むようにするというのはわかるんですけれども、紙の利用も残すといったことは、それはもうなくなっちゃうということなんですか。

○平井国務大臣 紙を一気になくすというようなことは現実には非常に難しいと思います。
 今、例えば、ETCで高速道路を乗っていますけれども、どうしてもキャッシュで払いたいという人がいれば、払えるわけですよね。そのかわり、それは非常に不便だというふうに私は思います。
 ですから、これも、要するに、手続の種類にもよるんですが、必ず電子化で完結できるものを全てすぐにやるということではございません。

○塩川委員 でも、紙を残すということはないわけですね。

○向井政府参考人 この法律は、原則、オンラインを義務づけてはおりますけれども、紙をなくせということは一言も書いていないということでございまして、この法律上、紙の扱いについては触れられておりません。現状、今、手続自体は、オンラインは一部入っているにしても、紙のない手続というのはほぼないはずですが、その状態がどういうふうになっていくかというのは今後の社会の流れによって変わっていくものだと思いますけれども、今大臣の答弁にもありましたように、いきなりすぐに紙の手続がなくなるなんということはおよそ考えられないということでございますし、そんなことをすれば、恐らく、私どもとしても、やはりそういういろいろな批判が、耐えられないものだというふうに思います。
 こういうのは、やはり基本的には、国民の利便性の感覚というのが時代とともに変わっていくのに合わせてデジタルと紙というのを変えていく。現状は、私どもは、国民の感覚に比べてデジタルが余りにも進んでいない、政府部門は、というふうに考えております。

○塩川委員 すぐに紙をなくすということではない、将来的にはその方向に行くわけですけれども。そういう点でも、デジタルの活用も紙の活用も両方できるというのが、選択肢としても利用者の利便性にとっては望ましいのではないのか。
 そういうことを踏まえた上で、では、実際、政府はデジタルデバイド対策を行うということですが、先ほど大臣はサポートする人が必要というふうに言いましたけれども、デジタルがふえて、利用者に対してどういう取組を行うということなんでしょうか。

○向井政府参考人 いろいろな取組があろうかと思いますが、大臣が例示として挙げられましたのは、いわゆるデジタルサポーターと申しますか、以前はデジタル民生委員という言い方をしておりましたけれども、今、民生委員がいろいろな高齢者のサポートをしているようなこともございますけれども、そういうふうなまさにイメージだと考えていただきたいんですけれども、例えば、地域地域で、そういう中で、デジタルの能力にすぐれた方が、高齢者で疎い方にサポートしていくとかいうのもありますし、実は、マイナンバー制度で、マイナンバーの関係ではございますけれども、自治体にそういうタブレットを配りまして、それで、自治体の方で、例えば窓口でそういうデジタルデバイドの方の支援ということも考えられると思いますし、これらにつきましてはやはりいろいろな創意工夫をもってできるだけ支援していく。
 その上で、手続だけではなくて、やはりいろいろなデジタルのデバイスがございますので、スマホとか、そういうふうなものについてもなれ親しんでいっていただくと、そういうデジタルの恩恵というものが国民にできるだけ広く広がっていくというふうな、そういうふうなことにつながればいいなというふうに考えております。

○塩川委員 地域地域でサポートするということについて、国が何かやるというんじゃなくて、自治体とか、あるいは市民団体の方、そういった方にお願いするということなんでしょうかね。

○向井政府参考人 今の総務省の事業は国の予算で地域に支援をするということでございまして、実際にやるのは地域でございますけれども、国の予算でやるというふうなことであります。また、私どもがやっております、先ほどのタブレットの配付というのは国の予算でやっております。

○塩川委員 そうすると、経済的事情でIT機器が持てないという方に対しては、そのIT機器を配るという政策になるんですか。

○向井政府参考人 IT機器を配置しているのは自治体に配置しているので、個人に配置することにはなかなかならないと思います。ただ、いろいろな施策の中で、いろいろなケース・バイ・ケースにおいて考えられるというふうには思います。
 それが、デジタルデバイドというのが例えば公的な事業にかかわるような人だったら、それは例えばそういう人に対してもそういうふうな支援をするということも、個人とは言えませんけれども、そういうシステムに対する支援ということもあろうかとは思いますけれども、それらについてやはりケース・バイ・ケースで考えるべきものだと思います。

○塩川委員 ですから、経済的事情でIT機器を取得できないような人について、デジタルで手続してくださいというのは困難だと思うんですが、そういったデジタル機器の入手が経済的事情で困難な人に対してはIT機器を配るということはあるんですか。そういった方々はどうするんですか。

○向井政府参考人 お答えいたします。
 基本的には、やはり自治体の窓口とか、そういうところに置くというのが基本になろうかと思います。それを更に超えてどういうふうにやっていくかというのはやはりケース・バイ・ケースで考えますけれども、一律にそういうのを配るというふうなことにはなかなかならないのではないかと思います。

○塩川委員 そうすると、いずれにしても、自治体の窓口に行くという手続でいえば紙の手続と基本は同じになってくる話で、それはそういうことですよね。

○向井政府参考人 一般的には、デジタルと対面というふうな対比で物がしゃべられますけれども、実は、対面でもデジタルと紙がありますし、遠隔でもデジタルと紙があります。遠隔の場合の紙というのは郵送です。
 それで、対面は、基本的には、今、ほとんどの場合、紙で行われていますけれども、先ほどの答弁で申し上げましたとおり、例えば、マイナンバーカードでピッとやることによりまして、住所、氏名とかが全部相手先のファイルに入りますので、したがって、そういう、紙で一々書いて出す、窓口に行って出すというのではなくて、窓口のところでデジタルということも十分にあり得るということは考えられます。
 そういう意味でのデジタルに、来ていただくというのが便利なのかどうかという問題はとりあえずはおいておいて、まず、考え方としては、対面か、来るか来ないかがデジタル、書面ではなくて、それぞれに書面とデジタルがあって、それをデジタル化していくことも大事だというふうに思います。
 その上で、そういうデジタルデバイドについては、今おっしゃったような、例えば低所得で買えないというふうな方に関してどうするかについては、むしろ、デジタルの問題として捉えるのか、それとも低所得者に何をするかという問題として捉えるか、両方あろうかと思いますけれども、必ずしも、デジタルの方から捉えた場合に、じゃ、一律に全部配れというふうにはなかなかならないのではないかと思います。

○塩川委員 まあ、そういうことなんでしょう。
 ですから、基本は、デジタルに習熟していただきたいということでの働きかけをしようというのが今の政府のデジタルデバイドの対策ということになるわけです。ですから、私の方は紙も残した方がいいんじゃないかと思うわけですけれども、今の政府の施策的には、デジタルデバイドに、習熟してください、国民にデジタルを使いこなしてくださいということを求めるということです。
 ですから、今、遠隔と対面の話がありましたけれども、郵送はわかるんですけれども、遠隔という点ではね。でも、対面の場合というのの重要性というのは、この間強調されているというのは、要は、単なる手続だけじゃなくて、それそのものが、相談もしたいということも含まれているわけですよね、行政手続そのものを全部習熟しているわけではないので。それをデジタルでやるかどうか以前に、その手続そのものについてどうなっているのかといったことについて、やはり相談もしたいということも含めての窓口の意味合いがあるといった際に、デジタルの場合でそれがどういうふうに対応できるのかという問題というのは出てくるだろうと思います。
 ですから、デジタル対応が困難な人にとっては、従来の書面、あるいは窓口での対面による事務手続が今後はずっとなくなっていくということによる利便性の後退が懸念をされるということで、窓口の話でいったときにも、この間、自治体の窓口がどんどん減らされているという問題もあるんですよね。それが、コンビニ等でマイナンバーカード利用による住民票の写しの交付が可能となったといったことを理由にというか口実にというか、自治体の窓口が減らされている例というのが出てくるわけです。
 例えば、東京都の北区は、マイナンバー制度の導入による各種証明書のコンビニ交付サービスの開始を理由に、二〇一八年九月末に七つの区民事務所分室の全廃を行いました。戸籍や住民票、印鑑証明などの発行や各種収納事務を取り扱い、年間事務処理件数は十万件に及ぶというこの分室の廃止は、区民サービスの重大な後退ということで批判が寄せられております。
 我が党の区議会議員の八巻区議などが紹介していますが、王子の区民事務所は、年度がわりの繁忙期、この時期というのは五時間待ちとかになる、そのために、近くにある滝西分室が廃止となるとさらなる混雑が予想される、そういう事態になるということで、北区はマイナンバーカードを使えばコンビニで住民票などを取得できると宣伝していますが、高齢者や障害者などがコンビニでマイナンバーカードを使いこなすのは大変だということも批判が出ています。
 総務省として、こういった批判をどう受けとめておられますか。

○北崎政府参考人 お答えいたします。
 コンビニ交付は、全国のコンビニで、平日、休日を問わず早朝から深夜まで、住民票の写しなど各種証明書を手軽に取得することができるサービスでありまして、住民の利便性の向上のみならず、行政コストの削減にも資するツールとして、平成二十二年二月からサービスを開始したものでございます。今日まで、当該サービスの導入団体及び証明書の交付の枚数は年々増加しておりまして、交付する証明書の範囲についても徐々に拡大してきているところでございます。
 コンビニ交付の導入に当たって、従来の窓口事務との役割分担をどのように考えるかは、当該市区町村において適切に判断されているものと考えておりますが、総務省としては、コンビニ交付サービスの利便性等のさらなる向上を図りつつ、一層の普及を推進してまいりたいと考えております。

○塩川委員 コンビニと役所の窓口の役割分担という話じゃなくて、やはり窓口が減っているということが住民サービスの後退になっているといったところが問われているわけで、その点については、今のお答えでは説明になっていないわけです。
 同じように練馬区でも、二〇一七年三月から、十一カ所あった区の出張所が廃止をされました。出張所に続いて、いろいろな手続の文書の自動交付機も廃止ということで、我が党の区議団によりますと、区は、郵便局での証明書の交付やマイナンバーカードを使ったコンビニ交付で利便性が向上したと正当化をしていますが、区議団が実施をしました区民アンケートでは、約四割の区民の方から、出張所の廃止で不便になったという声が上がっているわけです。
 自治体では、行政手続のデジタル化を理由に、行政サービス、窓口サービスなどの利便性が後退する事態が起きていることで、こういったことが国で起きないということが言えるんでしょうか。

○平井国務大臣 このデジタルガバメントの推進というのは、要するに、利用者中心の行政サービスを実現するためであって、効率化による人員削減を目的としたものではありません。
 委員のお話を聞いておりますと、委員は、デジタル化のメリットということを認めた上で、その使い方に問題があるというふうにお話しになっているんだと思います。ですから、デジタルがだめだとはおっしゃっていない。そうであれば、そこのところは一緒なんですが、それから先のアプローチのやり方だと思います。
 逆に言うと、デジタルの恩恵を本当に全ての人に届けられない、つまり、デジタルにアクセスできないというようなハンディが、逆にそれが問題だと私は思うんです。
 結局、そういうケースの場合、私、地元の自治会で、スマートフォンを持っていない方々にその場で頼まれて、何人か、スマートフォンでマイナンバーカードの申請を私がその場でやってあげました。そうしたら、それは便利。彼らは所有していたわけではありません。たまたま私がそこにスマホを持っていて、彼らが通知カードを持っていたという状況の中で、そういうことも実現すると。
 つまりは、そういうものを所有するということではなくて、デジタルサービスの入り口にアクセスするということだと思うんです。その機会をできるだけふやしていくために、社会全体で協力していきましょうというのが、基本的なデジタルデバイド解消のための方向だと思いまして、平たく言えば、助け合っていこうねということ、それを基本にしたいというふうに考えているわけでございます。

○塩川委員 そうはいっても、このデジタル手続法を通じて行政の効率化を図るという面があるわけですよね。そういう点がこういった形であらわれているんだといった点を指摘しているわけです。利便性の向上といった点が、実際には行政の効率化ということが前面に出ることによって、結果とすれば利便性の後退になっているんじゃないのか、こういうことが国でも同様に起きる懸念はないのかといった問題というのは、これは論点として重要な問題だと考えています。
 ですから、デジタルは、基本は、習熟してくださいと求めるという点でいえば、自己責任を求めるような形であるわけで、窓口における対面業務の重要性を改めて認識すべきだということを申し上げたいと思います。
 それで、今回の法案では、デジタルを活用した行政の推進のため、情報システム整備計画を作成するとしています。これのポイントは何でしょうか。これまでのデジタル・ガバメント実行計画や各府省デジタル・ガバメント中長期計画とどこが違うんでしょうか。

○向井政府参考人 お答えいたします。
 今回の、まさに情報システム整備計画は、より具体的に、こういう事務のこういう手続について、情報システムをこういうふうな感じで整備して、いついつまでにするというふうなものでございまして、より細かく、しかも、BPRとかあるいは手法とかを細かく定めたようなものになるというふうに想定してございます。

○塩川委員 オンライン整備の義務や添付書類撤廃などを法定化をする、そういう中身を盛り込んでいくということですかね。同時に、府省別の計画とは違って、内閣総理大臣が作成する、実際にはIT室が担当するということで、府省縦割りを排すといった趣旨があると承知しているんですが、よろしいですか。

○向井政府参考人 縦割りを排すという意味で、御指摘のとおりでございます。

○塩川委員 内閣官房のIT室が全体を統括をするということで、政府全体の総合調整機能を持つ内閣官房、政府CIOを中心とするIT室において、政府における情報システム調達に係る予算の要求から執行までを一元的に管理するといったことも、ことしの二月のデジタル・ガバメント閣僚会議でも出されているところです。ですから、予算についての要求、執行までを一元的に管理をする、そういう仕組みになっていくということでしょうか。

○向井政府参考人 お答えいたします。
 現在まさに、官房長官をヘッドに、官房長官の指示を受けて、内閣官房を中心に、各府省集まって検討しているところでございますけれども、方向性といたしましては、先生の御指摘のとおり、これまでばらばらに予算に計上し、ばらばらに予算を執行していたというところが、やはり、これまでのシステム構築でいろいろなものが標準化できなかった理由の一つではないか、大きな原因ではないかというふうに考えております。
 もちろん、どこまで計上し、どこまで執行していく、執行というのも、具体的な執行までやるのかというのはさすがに難しいとは思っておりますけれども、ほとんど、例えば仕様書を作成するところまでは少なくとも内閣官房で相当のコントロールをきかせる必要があると思っておりまして、そうすることによりまして、調達が一元化して効率化するというのは、費用を削減する、安く、いいものを調達できるとともに、システムの標準化とかそういうものも進めていけるのではないかというふうに考えております。

○塩川委員 附則の第九条の検討条項にそういう中身が入っているということですので、そういう趣旨として承知をしているところです。IT室が予算の要求から配分まで一元的に管理することになります。
 そこで、大臣に伺いたいんですが、おとといの質疑で指摘をしましたように、IT室には営利企業から給与補填を受けている出向者が多数在籍をしておられるわけです。私、そういう点でも官民癒着の批判は免れないわけで、この公務の公正性の確保に疑念のあるIT室で予算の要求から執行まで一元的に管理することには重大な懸念を覚えるんですが、大臣はどのようにお考えでしょうか。

○平井国務大臣 前回も答弁をさせていただいておりますが、公務の公正性に疑念を抱かれることがないように十分に留意する必要があって、今回、新しい取組ですし、それぞれ職員が入りますと調達制限にも入りますし、企業も必ずしもハッピーではないんですね。
 それでも、今、全体のシステムを変えていかなきゃいけないということなので、このような形で我々が一元化を受けて、もともと各省庁がちゃんとした調達をできているんだったら、こんなことはしていないわけです。ですから、このサイロに陥った調達というものが国民にとって大きなマイナスなので、ここは、初めてのやり方ですけれども一元化して、そして、新しい知見を持った人たちにも協力してもらって、この窮地を乗り切りたいというような取組だと考えていただければと思います。

○塩川委員 公務の公正性の確保に疑念が生じないようにというんですが、今私が指摘しているように、給与補填というやり方そのものが疑念を生じているわけで、そういった問題をおいたまま、じゃ、信頼してくださいというふうにならないということであります。実際、この間、情報システム予算が増額の一途をたどっているわけで、IT室が司令塔となって、情報システム整備の計画や予算要求、執行の一元的な管理が行われることで、この官民癒着の疑念が一層深まるということを指摘せざるを得ません。
 そこで、次に自治体の関係なんですが、今回の法案は、地方自治体にも紙からデジタルへの転換を求めるというものになるということでよろしいでしょうか。

○向井政府参考人 これまでの答弁でもございましたように、国は義務、自治体につきましては努力義務というふうになってございます。

○塩川委員 努力義務ということです。
 法文の第五条第一項には、「国の行政機関等は、情報システム整備計画に従って情報システムを整備しなければならない。」とあります。自治体は、この規定に基づき講ずる措置に準じて、必要な措置を講ずるよう努めなければならないと第五条第四項でなっています。
 そうしますと、自治体に対して、国の情報システム整備計画に準じるような計画の作成を求めていくということになるんでしょうか。

○向井政府参考人 お答えいたします。
 官民データ活用計画と似たような構造になっておりますけれども、いずれにしても、自治体には努力義務というのがかかっておりますので、それについては自治体が努力していただくということになりますけれども、当然のことながら、国はサポートする必要があると思っておりまして、私どもとしては、各自治体にそういう計画をつくっていただけるような環境をつくるとともに、助言等のお手伝いをさせていただきたいというふうに思っています。

○平井国務大臣 このデジタル手続法案においては、地方公共団体については、先ほど話がありましたとおり、オンライン化を義務化せず、それぞれの事情や能力を踏まえてオンライン化を進めていけるように努力義務というふうにしているんですが、地方公共団体に対する支援策については、現在でも、例えば自治体クラウド導入に対する交付税措置、自治体のシステムの共同利用化を前提とした業務改革に対する補助金の交付等を実施しているところであります。
 また、デジタル技術を積極的に活用して先進的な取組を行っている地方自治体の取組を積極的に横展開し、全国的に広げていくことも、我が国全体の、地方自治全体のデジタル化を効率かつ効果的に進めるためには、有効な手段の一つというふうに考えています。
 このような事例も参考にしながら、今後、政府として積極的に取り組む地方自治体を厚く支援することにより、地方のデジタル化を進めてまいりたいと考えております。

○塩川委員 私が聞いているのは、国の情報システム整備計画に準じて、自治体にも計画の作成というのをつくってくださいよと求めるんでしょうかということなんです。

○向井政府参考人 法律上、努力義務はございますので、私どもとしては、そういう法律上、努力義務があることを示した上で、自治体に、つくっていく、そういう努力をしていただけるようにお願いしていくということだと思います。

○塩川委員 総務省でもいいんですけれども、では、どういう計画をつくってくださいというふうになるんでしょうかね。

○向井政府参考人 国に準じてということでございますので、まず、国の計画をつくった上で、何らかのひな形を示すような形で、こういうふうなものというのは一応お示しした上でつくっていただくというふうな、そういうふうな手続になるのではないかと想定されます。

○塩川委員 先ほど大臣の答弁の中にも自治体クラウドの話がありました。いろいろな共同利用についての補助金というのがあるんですが、複数の自治体でシステムを統合して使用するといった事例なんかが既に進んでいるわけです。
 この自治体クラウドの導入についてお聞きしますが、国は、自治体のデジタル化を進めるために、複数の自治体で情報システムを共有し、標準化する自治体クラウドの導入を推進しています。
 骨太方針二〇一八には、「自治体クラウドの一層の推進に向け、各団体はクラウド導入等の計画を策定し、国は進捗を管理する。」とあります。ですから、国の情報システム整備計画に準じて各自治体はクラウド導入計画の策定ということを、国として促していくということになるんですか。

○佐々木政府参考人 地方自治体において情報化、デジタル化を進めるためには、クラウドは極めて有効な手法だと考えております。また、クラウドをすることによって共同化も非常に容易に取り組むことができるということで、これまでも自治体においてクラウド化、特に共同の自治体クラウド化をお願いする、そういうことを財政的な支援も含めて行ってきたところでございます。

○塩川委員 ですから、骨太方針に、クラウド導入計画の策定を自治体に求め、国が進捗を管理するとあるものだから、今回の法案に言う国の計画に準じて自治体によろしくというのは、このクラウドの導入計画も含むんですか。

○佐々木政府参考人 法案自体の中身についてはIT室に確認していただきたいとは思うんですが、今回の計画というのは、これまでのクラウド計画とは違うものでございます。今回、国が制定するやり方、国が取り組むやり方に準じてということですので、その準じるという側面において違ってくるということだろうと考えております。

○塩川委員 内閣官房にお聞きしますが、要するに、クラウドが自治体にお願いするという計画の中に入らないということですか。

○向井政府参考人 現状、それは未定でございます。

○塩川委員 未定ということですから、骨太方針では、そういう形で計画をつくってくださいよ、国が進捗状況をきちっと管理するというふうになっているわけです。そういった点でも、自治体に自治体クラウドの導入計画をどんどん進めようという姿勢がここにあらわれています。
 それで、政府のIT戦略では、クラウド導入市区町村が平成二十九年度末で一千団体を達成したので、平成三十五年度末までにクラウド導入団体数について約千六百団体となるよう取り組むとしています。国が音頭をとって自治体のクラウド導入を促進してきました。
 そこでお尋ねしますが、自治体クラウドについてはさまざまな批判があります。例えば、富山県上市町の場合ですけれども、我が党の町会議員さんが三人目の子供の国保税の均等割の免除、また六十五歳以上の重度障害者の医療費窓口負担の償還払いを現物給付にと具体的な提案を議会で行ったところ、町長が、自治体クラウドを採用しており町独自のシステムのカスタマイズはできないということで、できませんという答弁を行ったということなんです。
 ですから、自治体クラウドによって、行政の仕事内容をシステムに合わせることとなり、自治体独自の行政サービスの提供が阻害されているんじゃないでしょうか。

○佐々木政府参考人 御指摘された富山県上市町における議会でのやりとりということは、同町のホームページにおいて確認したところでございます。
 同町長の議会答弁そのものについての個別のコメントは差し控えさせていただきたいのですが、総務省としては、クラウドについても、パッケージソフトに対するカスタマイズは行わないことを原則とすべきという基本方針を、助言という形で示しております。
 ただ、その方針の中では、住民サービスの維持向上等の観点からパッケージ機能による対応では不十分である場合であって、カスタマイズ以外の代替措置で対応することが困難であるなどの事由がある場合には、カスタマイズを行うこともやむを得ないという助言をさせていただいているところでございます。
 カスタマイズそのものにつきましては、むしろ、効率化の原則とか共同処理のメリットを出す意味でできるだけ控えた方がいいというのは当然ですが、個々の具体的なケースにおいて、どうしてもカスタマイズしないとそういう住民サービスの向上ができない、いけないという場合には当然許容されているというふうに総務省としては助言しているところでございます。

○塩川委員 ですから、今言ったのも、カスタマイズ以外の代替措置がない場合にはカスタマイズ、これを変更するということがあるという話なんですけれども、でも、それは、今言ったような、三人目の子供さんが生まれたときに、均等割がかかるわけですよ、人頭税みたいなものですから、あれは。家族がふえたら、均等割、一人何万円を払うというのは、家族が生まれて、お祝いじゃなくて、ペナルティーをかけるような制度ですから、これはおかしいという話になるわけで、そういった措置がとれないんですかというものについて、いや、カスタマイズを抑制していますからという話というのはおかしい。
 かわりの措置をとるというんだけれども、そもそもそういう減免の措置をとればいいわけで、それが妨げられるということ自身が、自治体のまさに住民自治を発揮をする、住民の福祉の増進を図るという自治体の本来の業務に大きな障害をもたらすものと言わざるを得ません。
 今の答弁にもありましたけれども、総務省は、自治体に対して、地方公共団体の自治体クラウド導入における情報システムのカスタマイズ抑制等に関する基本方針という通知を発出しています。ですから、そこの中で、地方公共団体の情報システムについては、現在、複数団体で共同利用する自治体クラウドの取組を推進しているが、情報システムにカスタマイズを加えようとすれば、団体間の調整が必要となり、その結果、自治体クラウドの導入を阻害する要因となるほか、追加的な情報システム経費の発生や情報システムの稼働の不安定化というリスクにもつながるとして、パッケージソフトに対するカスタマイズは行わないことを原則とすべきと求めているわけです。
 地方クラウドを推進する国がカスタマイズを抑制することを求めていることは、私は地方自治の侵害だと言わざるを得ません。この自治体クラウドによって、業務の効率化を優先して、システムに業務を合わせるようになっているわけです。ですから、住民の多様なニーズに応えることを棚上げをして、住民サービス拡充の障害になっている。そういった点でも、本来、多様な地域に多様な自治体が存在しているわけで、この自治体クラウドはその自治体の多様性を損なうものとなっているという点は極めて重大だと言わざるを得ません。
 この点について、総務省、どうですか。

○佐々木政府参考人 委員御指摘の論点については、カスタマイズの中身の定義の問題だと思います。
 我々として、地方自治体が、議会、首長が同意して、住民サービスの向上をしたいという判断をした場合に、そのカスタマイズ、それに伴うシステムの改修を行ってはいけないという助言はしていないところでございます。

○塩川委員 複数の自治体で自治体クラウドをつくってくださいと促して、地方財政措置も行っているわけです。その結果として、多様な自治体の多様性が損なわれるような事態になっていること自身が大問題だと言わざるを得ません。
 市区町村における情報システム経費というのは、今どのぐらいになるんでしょうか。

○佐々木政府参考人 総務省において実施した調査では、平成二十九年度当初予算における全市区町村の情報システムの経費は四千七百八十六億円となっております。
 今後、こうした調査を継続し、その推移を把握してまいりたいと考えております。

○塩川委員 平成二十九年度当初予算における市区町村の情報システム経費は四千七百八十六億円と。これは、把握したのはこれが初めてということで、今後把握していくと。
 今後ふえる見込みということでしょうかね。

○佐々木政府参考人 現時点で、ふえるか減るかということは、私は答えることができませんが、IT化を進めるということについては、ITの設備投資を行うということでもございますので、その経費の中身を分析してみて、維持管理に要するコストを効率化する。ただし、IT化の推進に要する経費はどんどん進めていくということもあろうかと思っております。
 ただ、今後どうなるかは、この時点で私がどうだということは、今、言える状況にはございません。

○塩川委員 国の場合、この四年間は、整備も運用もどんどんどんどん、ずっとふえているわけですよね。ですから、そういった点で、この先どうなるのかといったときに、自治体においても、国が自治体クラウド導入の計画を各団体に策定することを求め、その進捗を管理するということが骨太方針に出ているわけですから、こういった方針を徹底する上で、こういった自治体クラウドを促進する、結果とすると情報システム経費が膨らんでいくという点でも、IT室の批判も行いましたが、新たなIT公共事業といったことも問われてくるのではないのかということを指摘しておくものです。
 それで、続いて、AIに係る諸課題についてお尋ねをいたします。
 大臣にお聞きしますが、IT戦略の文書の中に、AI技術の研究開発と社会実装の項があります。そこでは、AIが生み出す成果の品質基準を設けるか否か、AIが現在の労働産業構造にどのような影響を与えるか、AIの下す判断の倫理上の扱い、そして、AIの判断結果に対する責任の所在など、今後、AIの社会実装が進むに伴い生じると思われるさまざまな課題についても、今後、検討していくことが必要であるとしています。
 このようなAIに係るさまざまな課題について、大臣、どのように認識しておられるかもぜひお聞きしたいし、どこでどのような検討を行っているのかについて教えていただけますか。

○平井国務大臣 今、まさにAIは、世界各国が投資をして、競争状態、開発イノベーションで競争状態にあるんですが、我々日本の立ち位置は、やはり倫理とか基本原則をちゃんと踏まえた上で、今回のAIというのは社会実装を伴うものなので、そこは日本流にきっちりやりたいというのが基本スタンスです。
 その上で、AIの社会実装の重要性に鑑みて、昨年策定されたIT戦略において、AI活用の重要性と今後必要となる検討課題を提示しています。
 具体的には、AIがもたらす倫理上の課題については、人間中心のAI社会原則会議において、AIの品質基準や高付加価値サービスへの構造転換などに関する社会実装に向けたさまざまな課題については、AI戦略に関する有識者会議において、AI判断結果に対する責任の所在については、例えば自動運転における事故時の責任に関しては、IT総合戦略本部のもとの道路交通ワーキンググループなど、各分野において検討が進められています。
 引き続きこれらの会議等で議論を進めまして、高齢化社会が進む我が国において、国民が安心して生活できるよう、AIの社会実装をしていきたい、そのように考えています。

○塩川委員 それぞれの分野で検討が進んでいるというお話です。自動運転の話ですとか倫理上の扱いなど、人間中心のAI原則のその場での議論の話にもありました。
 やはりAIをめぐっては、この間、報道も随分ふえていますし、最近の日経を見ると、その記事がずっと続いているものですから、おもしろく読んでいるところです。
 アリペイの話なんかもありましたが、アリペイAIによる信用力スコアというのが、融資ですとか与信ですとか、住居の賃貸とか、裁判などにも、さまざまな場面で使われているなんということも言われているところです。日本でも、ソフトバンクが新卒採用のエントリーシートの評価にAIのプロファイリングを用いるということなんかもされておりました。
 そこでお尋ねしたいんですが、大臣も紹介されました統合イノベーション戦略推進会議決定の人間中心のAI原則では、
 AIは、社会を良くするために使うことも可能であれば、望ましくない目的達成のために使われたり、無自覚に不適切に使われたりすることもありうる。
と指摘をしています。
 人間に期待される能力、役割について記述をしているわけですが、
 AIの長所・短所をよく理解しており、とりわけAIの情報リソースとなるデータ、アルゴリズム、又はその双方にはバイアスが含まれること及びそれらを望ましくない目的のために利用する者がいることを認識する能力を人々が持つことが重要である。なお、データのバイアスには、主として統計的バイアス、社会の様態によって生じるバイアス及びAI利用者の悪意によるバイアスの三種類があることを認識していることが望まれる。
 こういった、AIに係る、人間にそれをどう理解をするのかといったことが問われているという課題があるんですが、このことについて大臣はどのようにお考えかというのと、こういったバイアスが問題となるような事例というのは、どんなものが具体的に挙げればあるのか、その点を御紹介いただけますか。

○平井国務大臣 データのバイアスによって人々の差別につながる事例については、人間中心のAI社会原則の検討会議においても、人種や肌の色によって、年齢等の認識率、精度に大きな開き、誤差があったという事例が紹介されていると承知しています。
 また、ある企業の人材採用システムの学習データが、男性中心の応募者や合格者のデータにより学習されたものであったことから、男性の方が採用に適した人材であると判断したという例が報道されていると承知しています。
 まず、人々の差別や不利益をこうむらないようにするための最も基本的かつ重要な打ち手は教育ではないかと我々考えておりまして、人間中心のAI社会原則において、教育、リテラシーの法則、データにバイアスが含まれることや使い方によってはバイアスを生じさせる可能性があるということなどを理解することの必要性があるというふうに思います。
 それを受けて、現在検討中のAI戦略では、全ての国民が、デジタル社会の読み書きそろばんとして、数理、データサイエンス、AIに関するリテラシーを身につけるための教育改革について検討しています。
 加えて、技術的な対策として、AI戦略では、収集するビッグデータの偏りや誤りなどを検知して品質保証に資する基盤技術の確立や、データ品質を担保するための指標や測定方法等に関する国際基準の提案について取り組む方向で検討しています。
 日本は、AI倫理原則というものを今まで主導してきたし、これからも、その価値観を共有する国々と一緒になって進めていきたいというふうに考えます。
 AIをこれから実装するときに、今後、AIに振り回されたり、こんなはずじゃなかったというような社会にならないように、そこは原則をきっちりつくってから社会実装を進めるべきだと考えています。

○塩川委員 今大臣が紹介されたのはきょうの日経新聞でちょうど出ていましたけれども、みずほ銀行がソフトバンクと共同出資をしたジェイスコアの記事が出ていたわけですけれども、個人向けの融資の判断にAIを用いる業務を開始したところ、年収や職業など他の条件が同じでも、性別を男性から女性にするだけでスコアが下がるという指摘があった。結果として、いろいろ悩んだんだけれども、性別の影響を弱める修正に踏み切ったと。
 要するに、AIの側には、では本当に因果関係があるのかというのはわからないわけですよね。そこのところが今言ったバイアスの問題として出てくるというのは、これは、そういったバイアスがあるよという認識を我々がしっかり身につけるということはもちろん重要だと思います、教育の話、リテラシーの話なんですけれども、いや、そもそもそれだけでいいのかという問題も問われてくるんだと思うんですよね。
 そういった影響についてどうしていくのか。この点は、もう既にアメリカの問題なんかも紹介されていましたけれども、どうするんですか。

○平井国務大臣 AIが社会の大きな話題になるというのは、これで三回目なんですね。第三次AIブームと言っていいのかと思います。ただ、前回の二回と違うのは、相当いろいろなものが進んだ、AIに関して。ディープラーニングであったり、テキストでもそうです。
 そういう状況の中で、一方で、社会実装しているところはもうしているんですね。AIというものの定義の範囲が、例えば、出店するときの最適化とか売上予測とか、要するに、今言っているAIという言葉の範囲が物すごく広くなっているんです。そういうことを考えると、社会実装というのは、もうとめられる状態では全くありません。
 ですから、日本は、人間生活に大きく影響する使い方のものに関して誤らないように、社会原則そして倫理の問題を、リーダーシップをとりながら取りまとめていきたい。これは、世界的に、日本が問題提起して取りまとめていきたいと考えています。

○塩川委員 やはりディープラーニングは転機だと思いますけれども、ビッグデータそしてAIという形で、それが、日本の場合にはIoTも含めてこれを活用しようということを戦略としているわけですけれども、やはり問われているのは、AIによって、さまざまな差別、不利益が生じ得るといった問題が出てくるわけです。
 これも、だから、つい最近の日経の報道で、アメリカのロサンゼルス市警は、二〇一一年から使用している犯罪予測システムについて、データの使い方を見直すということを明らかにしたということでした。AIが過去の捜査情報を分析し、犯罪を起こしやすい人物や地域を示した。犯罪は一部で減ったけれども、黒人などへの過剰な取締りにつながったと指摘をされた。過去の捜査に人種差別の影響があり、差別を再生産したと批判を呼んだわけです。ですから、アメリカでは、ビッグデータに基づくAIプロファイリングが、マイノリティーに対する差別や排除を助長するという認識も広がっているところです。
 ですから、その点で、今大臣がお話しになったのが、人間中心のAI原則の話をされました。企業や民間などについても、そういった見地でしっかり取り組んでくださいよという働きかけをする、G20もありますから、これも国際的にも示していきたいということなんですけれども、要は、そういうレベルでいいのかというところが問われているんじゃないでしょうか。
 実際、そういったバイアスによって、不当な差別や不利益をこうむることがないような取組をどうしていくのか、これは真剣に考える必要があると思うんですが、どうでしょうか。

○平井国務大臣 その問題には、十分に我々は問題意識を持っておりまして、有識者の皆さんと議論しながら、また各国の方々も、こちらに来られると私も面談しますけれども、やはり、AIの社会実装とその影の部分、データのバイアスの話というのは共通の問題意識です。
 ですから、これはやはり、話し合いながらルールを決めていくというのが望ましい方向だと私は思っております。

○塩川委員 その点では、やはり、プライバシー確保をどう図るかというところでのルールづくりが問われているんだと思うんです。
 統合イノベーション戦略推進会議決定の人間中心のAI原則でも、原則を幾つか並べて、そのうちの一つの「プライバシー確保の原則」では、「AIを前提とした社会においては、個人の行動などに関するデータから、政治的立場、経済状況、趣味・嗜好等が高精度で推定できることがある。これは、重要性・要配慮性に応じて、単なる個人情報を扱う以上の慎重さが求められる場合があることを意味する。パーソナルデータが本人の望まない形で流通したり、利用されたりすることによって、個人が不利益を受けることのないよう、」「パーソナルデータを扱わなければならない。」とあります。
 その方策の一つとして、「本人が実質的な関与ができる仕組みを持つべきである。」という指摘をしているんですが、これはやはり、個人情報保護法の改正を含めてしっかりとした対応をとる必要があるんじゃないかと思うんですが、大臣、もしお考えあれば。

○平井国務大臣 個人情報保護法の改正は私の所管ではありませんが、人間中心のAI社会原則においては、プライバシーの確保のために必要な関係者間の基本的な共通認識として、「パーソナルデータを利用するAIは、当該データのプライバシーにかかわる部分については、正確性・正当性の確保及び本人が実質的な関与ができる仕組みを持つべきである。」とされています。「実質的な関与」とは、例えば、パーソナルデータを保有する者が、個人からの請求に応じてその利用を停止したり、媒体から消去することなどが考えられます。
 パーソナルデータは、その重要性、要配慮性に応じて適切な保護をされる必要がありますが、具体的な関与の方法については、今後、企業実務の観点も考慮しつつ、利活用と保護のバランスを図りながら、政府と産業界が一体となって、各利用分野の個別事情に応じてきめ細やかに検討される必要があると考えているところでございます。

○塩川委員 個人情報保護法所管の個人情報保護委員会にお尋ねしますが、今、三年ごとの見直しの検討を行って、つい先日、昨日ですか、中間整理を出したところです。その議論の中でも、こういった個人情報保護をめぐる国内外の動向でEUのGDPRの例を紹介して、忘れられる権利、また、プロファイリングに関する規定などを紹介していたところです。
 ぜひ、こういった忘れられる権利などをしっかりと規定することが必要だと思うんですが、この点でGDPRはどう対応しているのか、日本の個人情報保護法、今、この中間整理ではどうしようと思っているのか、それを教えてもらえますか。

○其田政府参考人 お答え申し上げます。
 お尋ねのありましたEUのGDPRにおきましては、消去権について第十七条で規定しているというふうに承知をしております。具体的には、個人データが収集された目的等との関係で必要がなくなった場合、データ主体が同意を撤回し、かつ、その取扱いのための法的根拠がほかに存在しない場合など一定の場合には、データ主体が自己に関する個人データを消去させる権利を持ち、また、データの管理者が個人データを消去すべき義務を負うものと承知をしております。
 一方で、我が国の個人情報保護法でも、個人データの取扱いに係る本人の関与等について一定の規定が設けられております。
 具体的には、第二十九条において、保有個人データの内容が事実でないときは、本人は、個人情報取扱事業者に対し、内容の訂正、追加又は削除を求めることができる。
 また、三十条一項におきまして、第十六条の利用目的に関する規定に違反しているとき、又は、十七条の規定に違反して不正に取得されている場合には、本人は、個人情報取扱事業者に対し、利用停止等を求めることができるとされております。
 さらに、第十九条において、個人情報取扱事業者は、個人データを利用する必要がなくなったときは、当該個人データを遅滞なく消去するよう努めなければならないとされております。
 先ほど御指摘をいただきました、昨日公表いたしました個人情報保護法のいわゆる三年ごと見直しに係る検討の中間整理におきまして、利用停止等を含む個人情報に関する個人の権利のあり方についても個別検討項目として取り上げております。
 忘れられる権利や利用停止権につきましては、現行の個人情報保護法上、利用停止や消去の請求ができる場合が、不正取得等、一定の場合に限定されておりますけれども、消費者の声として対象の拡大について要望が強いということも踏まえまして、今後、実務の観点も考慮しながら検討してまいりたいと思います。

○塩川委員 時間が参りましたので終わりますが、委員会の議論でも、今回の見直しの中で個人の権利のあり方についての重要課題は削除、利用停止だと思う、消費者側からは自分の個人情報を事業者が削除、利用停止しないことへの強い不満があると。今も紹介がありましたけれども、そういった点で、忘れられる権利の拡大を図るべきだと指摘をしているわけです。しかし、四月二十五日付の日経報道では、企業にデータの完全削除を強いる忘れられる権利などは導入を先送りした、これは、背景にあるのは、経団連が一連の規制強化には慎重な検討が必要だとする声明を発表した、こういうことも例示をしています。
 プライバシーの権利保障などの個人情報保護よりも企業利益を優先する、こういうことがあってはならないということを申し上げて、質問を終わります。


「議事録」(反対討論)

<第198通常国会 2019年04月26日 内閣委員会 15号>

○塩川委員 私は、日本共産党を代表して、デジタル手続法案に反対の討論を行います。
 本案は、行政の手続や業務に用いる情報を紙からデジタルデータへと転換し、オンライン化を原則として、利便性の向上、行政の効率化を図るというものです。
 しかし、利便性向上というものの、障害者や高齢者などデジタルを使いこなすことが困難な条件や環境にある人、経済的事情でIT機器が利用できない人などへの具体的な対策は、デジタルに習熟せよと求めるものです。従来の書面、窓口での対面による手続がなくなっていくことによる利便性後退の懸念は拭えません。
 実際、マイナンバーカードの利用拡大を理由に窓口を廃止する自治体の事例もあります。住民にとって行政サービスが後退する事態が生じており、デジタル転換による行政の効率化を口実に、同じようなことが更に広がることになりかねません。
 今回の法案は、地方自治体に対して努力義務を課しています。この間、政府は、一番身近な行政サービスの窓口である自治体に対して、マイナンバーカード導入に伴うデジタル化や複数の自治体でシステムを共有し標準化する自治体クラウドの導入を推進してきました。
 自治体クラウドによって、システムに行政の仕事内容を合わせることが目的となり、自治体独自のサービスが抑制されている事態があることも明らかとなりました。地方自治体の多様性をなくし、自治体の自立性を失わせることは、住民の福祉の増進を図ることを基本とした地方自治体の住民自治、団体自治を侵害するものと言わなければなりません。
 さらに、行政手続オンライン化に必要となるマイナンバーカードについて、政府は、マイナンバーカードのICチップを使うときは暗証番号が必要になるから、ほかの人には使えないと宣伝しておきながら、暗証番号入力を要しない方式で利用できる方法を入れ込み、更に通知カードを廃止して、マイナンバーカードへの移行を促進しています。
 政府が幾ら宣伝しても、国民の不安は拭えず、利便性もないことから、普及率がいまだ一割という状況で、マイナンバーカード制度は失敗しているのは明らかです。
 マイナンバーそのものの問題点もさることながら、このようにして、国民にマイナンバーカードを押しつけるやり方はやめるべきです。
 以上、申し述べ、反対討論を終わります。