【内閣委員会】国家公務員給与、最賃未満/是正へ実態調査を

 国家公務員の高卒初任給や非常勤職員の給与が最低賃金未満になってはならないと主張し、公務員の賃金の実態を調査することを求めました。

 国交労連の調査で、高卒初任給の時間単価は897円で、最低賃金の全国加重平均901円に届かず、東京・神奈川・大阪・埼玉などで地域別最低賃金を下回っています。

 一宮なほみ人事院総裁が「人事院勧告に基づく給与改定を通して最低賃金法の趣旨にのっとった適正な給与が確保される」「手当等を含めた全体として確保されている」と答えた。

 私は、最賃法が当てはまる形で給与と手当を区別すべきだ。全体としてあいまいにしてよい話ではないと批判。

 また、非常勤の国家公務員の給与について各都道府県の地域別最賃が改定される中で、人事院が最賃を下回らないように促す通知を出している。非常勤の給与実態を把握しているか、と質問。

 一宮氏は「把握していない」と答弁。

 是正することがやるべき仕事だ。そのためにも、実態を把握すべきだ。

 一宮氏は実態把握には触れず、「各府省に必要な指導を行っていく」と述べました。

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「議事録」(質疑)

<第200通常国会 2019年11月6日 内閣委員会 4号>

○松本委員長 次に、塩川鉄也君。

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 給与法の質疑にかかわって、最低賃金の問題について、きょうは質問をいたします。
 今回の法案は、人事院勧告どおり、月例給と特別給を引き上げて、住居手当を改定するものであります。若年層の月例給の引上げにつながります。高卒では二千円引上げとするものですが、ただし、高卒初任給が引き上げられたとしても地域別最低賃金に及ばないのではないかと労働組合から指摘があります。
 資料をお配りいたしました。一枚目をごらんいただくと、国公労連、日本国家公務員労働組合連合会が作成をしました、高卒初任給(時給)最賃との関係という表がございます。
 国公労連は、今回の俸給表改定で二千円引き上げられた高卒初任給の時間単価は八百九十七円となり、最低賃金の全国加重平均の九百一円にも届かず、東京、神奈川、大阪、埼玉、愛知、千葉、京都、兵庫で地域別最低賃金を下回ることになると指摘をしております。
 こういった指摘というのをどう受けとめておられるのかを、人事院総裁に伺います。最低賃金以下のような実態は放置することになりはしないのか、この点についてお答えください。

○一宮政府特別補佐人 国家公務員には最低賃金法の適用はなく、その給与については、給与法等の法令において、給与の種類や支給基準、給与額等が具体的に定められております。
 その中で、国家公務員の初任給につきましては、近年、民間企業における初任給水準の上昇を踏まえ、俸給表全体の平均改定額を上回る改定を行ってきております。
 本年の勧告においても、行政職俸給表(一)の平均改定額が三百四十四円であるところ、大卒者の初任給を千五百円、高卒者の初任給を二千円引き上げるなど、若年層の給与を重点的に引き上げることとしております。
 いずれにしましても、労働条件の改善を図り労働者の生活の安定等に資するという最低賃金法の趣旨は、国家公務員においても重要であると考えておりますので、最低賃金に関する議論、動向には今後とも注視してまいりたいと考えております。

○塩川委員 暮らしを支える最低限の賃金というのは、誰であっても保障されなければならないわけです。適用除外云々ということで糊塗できるような話ではない。
 総裁もおっしゃるように、最賃法の趣旨は必要だと述べておられるわけです。ですから、最低賃金の対象となるのは毎月支払われる基本的な賃金で、ボーナスや残業代などの多くの手当類は入らないわけですよね。ですから、民間準拠というのであれば、民間の最低賃金を下回るようなことがあってはならない、こういうことがそもそも原則であるべきだと思うんですが、いかがですか。

○松尾政府参考人 お答え申し上げます。
 繰り返しになりますけれども、国家公務員には最低賃金法は適用されませんけれども、その給与につきましては、毎年の人事院の給与勧告に基づきまして、民間企業従業員の給与水準と全体として均衡を図りつつ、全国一律に適用される俸給表とこれを補完する諸手当から成る給与体系が法令により設けられて、それについても随時に見直しを行ってきております。
 こうした枠組みを通じまして、国家公務員については、最低賃金法の趣旨にのっとった適正な給与処遇が確保されることになるものと考えておりますけれども、総裁も申し上げましたように、最低賃金に関する議論、動向は今後とも注視をしてまいりたいというふうに考えております。

○塩川委員 そう言うのであれば、実際に計算してみたらいいんですよ。主要な諸手当は入らないわけですから、俸給の基本給のところに該当するところで実際に数字を出してみたらいいんじゃないですか。

○松尾政府参考人 お答え申し上げます。
 俸給月額なり地域手当を足して時給ということではなくて、先ほど申し上げましたように、人事院が毎年、民間の賃金と水準を比較して較差を出して、それを原資として俸給表構造をつくり手当制度をつくりということでやっておりますので、そういったもの全体として国家公務員の適正な給与処遇は確保されているというふうに考えておるところでございます。

○塩川委員 最賃法の趣旨にのっとってと言うのであれば、最賃法に当てはまるような格好ではじいてみて、それでも下回りませんというのであれば私も。その辺も曖昧にしたままで、全体として均衡云々という格好で曖昧にできる話ではないということは申し上げておきます。
 常勤の方も問題ですけれども、非常勤の方もこの点では最賃の問題が重要であります。
 人事院は、国家公務員の非常勤職員の給与について、最低賃金を下回らないように促す通知を出しています。どういう通知なのか、きっかけは何か、この辺、御説明いただけますか。

○一宮政府特別補佐人 委員、顧問、参与等以外の非常勤職員の給与については、給与法第二十二条第二項の規定により、「各庁の長は、常勤の職員の給与との権衡を考慮し、予算の範囲内で、給与を支給する。」こととされております。
 これを受けて、人事院は平成二十年に、非常勤職員の給与に関する指針を発出し、各府省はこの指針に基づいて適正な給与の支給を行うこととされております。
 こうした枠組みのもとで、平成二十四年四月から国家公務員給与の特例減額支給措置が行われたということを契機に、非常勤職員の給与の決定に当たっての留意事項として、各府省宛てに、地域別最低賃金を下回らないよう適切に対処すべき旨の通知を発出しております。

○塩川委員 今お話しのように、各都道府県の地域別最低賃金が改定されることに留意し、当該最低賃金を下回らないよう適切に対処してください、こういう通知を出しているわけです。
 これは実際に、じゃ、最賃を下回るような実態があるということも言えるんじゃないですか。

○松尾政府参考人 人事院としては、通知を発出いたしまして、各府省に運用上の留意を促しているところでございますけれども、最低賃金を下回る給与を支給される非常勤の実態というものは把握はしておりません。

○塩川委員 ですから、そういった通知を今出しているわけだから、実態把握をしていない、是正するということがやるべき仕事じゃないですか。実態を把握すべきじゃないですか。総裁、いかがですか。

○松尾政府参考人 国家公務員には、非常勤職員を含めて最低賃金法の適用はございませんけれども、非常勤給与につきましては、先ほど申し上げたように、通知を発出して、各府省において適切な給与がなされるよう指導はしてきているところでございます。
 人事院といたしましては、引き続き、各府省に対して必要な指導を行ってまいりたいというふうに考えております。

○塩川委員 ですから、この間、最低賃金の改定が行われているわけですから、実態が本当にどうなっているのかということをきちんと確認するという、そういうタイミングにもあるんじゃないですか。
 各府省における非常勤の最低賃金がどういう実態なのか、これをしっかりと調べるということが、今全体として最低賃金を引き上げようという取組が行われている中では極めて重要だと思うんですが、そういう実態調査を行う、人事院総裁、いかがですか。

○一宮政府特別補佐人 非常勤職員につきましては、各府省によって実情が異なっておるということではございますが、人事院としては、引き続き、各府省に対して必要な指導を行ってまいりたいと考えております。

○塩川委員 いや、だから実態をつかまないで、お願いしますということでは説得力がないわけで、これはしっかり実態調査をやってほしいということは重ねて申し上げるものです。
 それで、この機会に、地方公務員の非常勤職員がどうなっているのかということについても総務省にお尋ねをいたします。
 資料の二枚目に、埼玉県労働組合連合会がことし集計しました埼玉県内市町村における非正規職員の賃金の一覧表であります。
 埼玉県の最低賃金は、昨年十月以降は時給八百九十八円になっています。各市町村の一番賃金が低い職種を見ると、右側の方に3とありますけれども、時給の一番低い職種で見ると、時給額というのが九百円というのが多いんですよね。六十三市町村のうち二十が九百円なんです。八百九十八円の最賃に張りつくような金額になっているわけです。
 ことし十月からの埼玉の最低賃金は、時給が九百二十六円になりました。ですから、このままでは最賃を割り込む市町村が多数生じるようなことになる。余りにも低い水準であります。
 総務省は、最賃を下回りかねない地方公務員の非正規職員の賃金実態について把握をしていますか。

○大村政府参考人 お答えをいたします。
 地方公務員の給与につきましては、地方公務員法に定める情勢適応の原則、そして均衡の原則等の給与決定原則に従いまして、妥当な水準が確保される仕組みとなっております。こうした、民間労働者と地方公務員では給与決定の仕組みや手続が異なることから、地方公務員については、国家公務員と同様ですが、最低賃金法の適用が制度としては除外されております。したがって、これまで、地方公務員の給与と最低賃金を比較する、そのための調査は行っておりません。
 なお、臨時、非常勤職員の実態について、直近の調査である平成二十八年の調査の範囲で見た場合には、事務補助職員についての報酬額の一時間当たり換算額と平成二十八年四月時点における地域別最低賃金を比較しますと、全ての地方公共団体で最低賃金を上回る報酬額となっていたところでございます。
 以上です。

○塩川委員 それは、どの時点でとっているかという話もあると思うんですよね。ですから、ここで今示したように、昨年十月の最賃では九百円を一応クリアしているかもしれないけれども、ことし十月になると下回るわけですよ。
 多くの自治体で改定の努力はしているとは思うんですけれども、いずれにせよ、最賃に張りつくような非正規職員の最低賃金の実態といったときに、全国的にもやはり、こういったことについてしっかりと是正せよということを求めていくというのは当然じゃないかと思います。
 この実態を改めてつかむということと同時に、少なくとも人事院がやっているような、最賃は下回らないでくださいねという技術的助言を自治体に対して発出するというのも大事なことだと思いますが、その二点について、改めていかがですか。

○大村政府参考人 お答えいたします。
 地方公務員につきましては、平成二十九年の地方公務員法、地方自治法等の改正におきまして、新しく臨時、非常勤について会計年度任用職員制度というものを来年度の四月から導入するというふうにいたしております。
 そういった観点で、新しい制度のもとで臨時、非常勤職員制度がどのように機能しているか、こういったことについては何らかの形で調査をしてまいりたいと考えております。
 また、先ほど申し上げたとおりでございますが、地方公務員については最低賃金法の適用が除外されておりますけれども、地方公務員の給与につきましては、地方公務員法に定める情勢適応の原則、均衡の原則等の給与決定原則に従って、国の職員や民間事業の従事者の給与等を考慮して条例で定めることにより妥当な水準が確保される、そういった仕組みでございます。
 今後とも、最低賃金に関する議論、動向についても注視をいたしながら、各地方公共団体において適切な給与決定が行われるように、引き続きしっかりと対応してまいりたいと思います。

○塩川委員 最低賃金法は重要だ、そういう認識にはあるということではいいですか。

○大村政府参考人 お答えします。
 最低賃金法の趣旨につきましても、先ほど来国の方でも、私どもの方でも御説明いたしましたとおり、今の給与決定の仕組みの中で、全体として反映されてくるものというふうに考えております。

○塩川委員 改めて、最低賃金を下回らないという賃金実態かどうかというのはしっかり調べてほしいということと、最後に大臣に伺います。
 今やりとりしましたように、公務で働く労働者の賃金が最低賃金を下回るようなことはそもそもあってはならないと率直に思っておりますけれども、その点についての大臣の認識と、そういうことを起こさないという点での取組方について質問をいたします。

○武田国務大臣 国家公務員に最低賃金法が適用されないからといって、適切な処遇が確保されないなんということがあってはならない、このように思っております。しっかりと確保するべく努力をしてまいりたいと思います。

○塩川委員 処遇改善のために取り組むということで、そのことを改めて求めて、質問を終わります。


「議事録」(反対討論)

<第200通常国会 2019年11月6日 内閣委員会 4号>

○塩川委員 私は、日本共産党を代表して、国家公務員の一般職の給与法改正案に賛成、特別職の給与法改正案に反対の討論を行います。
 一般職給与法改正案は、八月に出された人事院勧告どおり、月例給と特別給を引き上げ、住居手当を改定するものです。
 一般職の中高年層への俸給の引上げがなく、また、住居手当の改定は引上げとなる職員がいる一方で引下げとなる職員がいるなど不十分な内容ではありますが、若年層の俸給など、実際に給与を引き上げるものであり、賛成です。
 次に、特別職給与法改正案については、内閣総理大臣、国務大臣、副大臣、政務官などの特別給引上げとなっており、反対です。
 この間、給与制度の総合的見直しの実施により、高齢層を中心に一般職職員の給与が引き下げられている中で、総理大臣などの特別給を引き上げるべきではありません。
 また、大臣の給与一部返納との整合性もとれません。
 なお、特別職のうち秘書官の月例給、特別給を、一般職職員に準じ引き上げることには賛成であります。
 最後に、勧告どおりに引上げがなされたとしても、公務員給与が依然として低い水準にあることを指摘します。
 例えば、改定後であっても、一般職高卒初任給の俸給月額は、時間給に換算すると、一部地域で最低賃金を下回ります。
 質疑の中で明らかになったように、人事院や内閣人事局は、最賃を下回る場合があるのか実態を把握していません。公務員が最賃法の適用除外であるとしても、最低賃金を下回ってよいわけではないのは当然であり、実態把握は政府の責任で行うべきです。
 公務員給与を低く抑えつけている大もとである総人件費抑制政策をやめて公務員給与を抜本的に改善することを求めて、討論を終わります。