学術会議推薦者外し問題/野党合同ヒアリング

 「学術会議推薦者外し問題 野党合同ヒアリング」に出席。

 菅首相が任命を拒んだ6人の学者のうち、小沢隆一・岡田正則・松宮孝明の3氏が出席し、学術会議への人事介入を厳しく批判。

 学術会議法では、学問の自由を保障するため、政府からの独立が規定されている。首相がメンバーを左右するようなことがあってはならない。

 学術の発展に歪みをもたらす。法の趣旨に基づき運用すべき。このような人事介入は、学者が政権にそん度するインパクトを与えかねない。


学問の自由侵害/首相に拒否権ない/説明責任果たせ/任命拒否の3氏/野党ヒアリング

「しんぶん赤旗」10月3日付・1面より

 日本学術会議が推薦した6人の会員候補の任命を菅義偉首相が拒否した問題で、野党は2日、国会内で野党合同ヒアリングを開き、任命を拒否された会員候補の3氏が「学問の自由の侵害」「首相に任命拒否権は事実上ない」と証言しました。

 小澤隆一東京慈恵会医科大学教授(憲法学)は、日本学術会議は独立して運営されるべきであり、新型コロナ危機の対応で明らかになったように、専門家の意見は国民の生命、安全にかかわると指摘。任命拒否は、学問の自由への侵害だと述べました。

 岡田正則早稲田大学教授(行政法学)は「理由のない行政処分はない」として、首相の説明責任を果たしてほしいと語りました。

 松宮孝明立命館大学教授(刑事法学)は、「首相に任命権はあるが、任命拒否権は事実上ない」と強調し、憲法6条で、天皇による総理大臣への任命権はあるものの任命拒否権はないのと同じと考えていいと語りました。

 一方、内閣府と内閣法制局へのヒアリングで、野党は、1983年の日本学術会議法改定の際の審議で、政府が「学会の方から推薦をしていただいた者は拒否はしない」と答弁したことを示し、法解釈の変更の有無をただしました。

 内閣法制局の担当者は「法解釈を変えたわけではない」と回答。任命拒否の法的根拠は答えませんでしたが、2018年に同法7条の「推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」の解釈をめぐる合議を内閣府と内閣法制局で行ったことを明らかにしました。

 また、任命拒否の判断はいつ、だれがしたかについて、内閣府の担当者は今年8月31日に日本学術会議から105人の推薦名簿を受理し、菅政権発足後の9月24日に任命の起案をし、同月28日に99人の任命を決裁したと説明。任命を拒否した経緯については、「人事に関する事柄」だとして答えませんでした。


野党ヒアリング3氏の発言(要旨)

「しんぶん赤旗」10月3日付・3面より

 日本学術会議の会員の任命を拒否された学者3氏が2日、「学術会議推薦者外し問題」の野党合同ヒアリングで行った発言(要旨)は次の通りです。

政府からの独立が重要/東京慈恵会医科大学教授(憲法学)小澤隆一さん

 日本学術会議は「わが国の科学者の内外に対する代表機関」(日本学術会議法第2条)であって「科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること」(同法3条)などを職務として、独立して運営されるものです。学術の専門家の立場から政府に対してさまざまな意見を述べます。これがこの間のコロナ危機に対する対応でも明らかになっています。きわめて国民の生命や自由、安全に直結する重要な役割を果たしています。(学術会議人事への介入によって)本来の政策がゆがめられます。

 今回6人の任命を拒否されたということは、学術会議の全体の問題として極めて重要だと考えるべきです。問題について、要請書を携えて学術会議の総会を傍聴しました。梶田隆章新会長に要請書を渡し、会長は重要な問題として受け止めて取り組んでいくと言っていただきました。

 政府からの独立性を確保する取り組みとして、今後とも取り組んでいきたい。

被害者は日本国民全体/立命館大学教授(刑事法学)松宮孝明さん

 政権が日本学術会議の会員の推薦を拒否した問題の当事者は学術会議そのものです。同時に、この問題の被害者は、日本の学術によって恩恵を受ける人々全体です。任命されなかったわれわれ自身は被害者だとは考えていません。日本の学術がきちんとこれから伸びていけるのか、日本と世界の人々にその恩恵を与え、成果を還元することができるのかということに関する影響が一番大きいと考えています。

 推薦名簿に基づいて内閣総理大臣は(会員を)任命するとなっています。法の精神からすれば、内閣総理大臣には任命権はありますが、任命拒否権は事実上ないと考えざるをえません。

 加藤勝信官房長官は任命権があるから拒否権もあると思っているようですが、憲法6条1項は、内閣総理大臣は国会の指名に基づいて、天皇が任命するとしています。任命権はありますが、任命拒否権はないと当然考えられています。学術会議の会員の任命もほとんどこれと同じ仕組みだと考えられます。

学術にゆがみもたらす/早稲田大学教授(行政法学)岡田正則さん

 日本学術会議は日本の科学者を内外に代表するという性格を、日本学術会議法で与えられています。

 「内外で代表する」ということですから、国内においては行政に対して、学術界を代表していろいろな提言をするという役割を担っています。ここから、「学者の国会」と言われています。その「国会議員」にあたる会員を、提言される側の行政が左右するということはあってはいけないことです。学術会議法の中で、独立性が定められているのはそういうわけです。他の行政機関とは全く違うということです。

 内閣総理大臣は、そういうことをきちんと理解して対応しないといけません。

 さらに、学術会議法には、1983年と2004年に大きな改正がありました。その際の国会審議で、内閣総理大臣が学術会議からの推薦を左右することはあってはならないし、やらないと繰り返し言いました。それは、学術会議の会員が日本の社会で果たすべき役割から当然出てくる内閣総理大臣の対応です。今回の任命拒否はそれを踏みにじりました。今後の日本の学術にとって大変大きなゆがみをもたらすと思います。

 今後の日本の学術の発展のために、きちんと法の趣旨に沿って手続きを進める必要があります。