【内閣委員会】給与引き下げ根拠なし/総人件費抑制方針見直せ

 国家公務員の定年年齢を60歳から65歳に引き上げることなどを盛り込んだ国家公務員法等改正案の採決を行い、共産はじめ賛成多数で可決しました。

 現行では、60歳を超える国家公務員は身分が不安定で、各種手当も出ないなど低待遇な再任用職員として勤務していますが、法案は定年を延長することで職員の処遇を改善するものです。

 私は、法案で60歳を超えた職員の給与を60歳時の7割に引き下げるとしている問題を追及。

 人事院は2018年時点の厚生労働省の賃金構造基本統計調査と人事院の民間給与実態調査を基にしていると答えました。

 私は、厚労省調査はいったん雇用が切れる「再雇用」を含めた調査であり、また、人事院調査は定年延長をしている企業のうち賃金を引き下げているところだけ抜き出した調査だと指摘。定年延長後の給与の根拠として適当ではないと強調しました。

 そのうえで、直近の厚労省調査では、61歳時の給与は、60歳時との比較で76.2%(企業規模100人以上)となっている。人事院が根拠とする調査を見ても7割はおかしいと批判しました。

 人事院が「見直すほどの大きな変化ではない」と強弁。

 私は、人事院として責任ある提案を行うのであれば、直近の数字を踏まえたあり方が必要だと強調し、このような給与引き下げありきの大本にある政府の総人件費抑制方針を見直せと主張しました。

 また、定年延長に伴う新規採用抑制について質問。

 河野太郎公務員制度担当大臣は「一時的に定員を増員することも含めて採用を進める」と答えました。


衆議院TV・ビデオライブラリから見る


「議事録」

<第204通常国会 2021年4月23日 内閣委員会 21号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 国家公務員法の改正案について質問をいたします。
 河野大臣にお尋ねしますが、政府は国家公務員の定年を六十歳から六十五歳に引き上げる法改正案を出しております。その理由として、豊富な知識、技術、経験等を持つ高齢期の職員に最大限活躍してもらうためとしております。しかしながら、六十歳を超えた職員の給与については六十歳時の給与の七割としております。豊富な知識、技術、経験等を持つ職員が六十歳を超えて引き続き同じ仕事を行うのであれば、給与水準を維持することが適当ではないでしょうか。
○河野国務大臣 六十歳以降の職員の給与水準につきましては、労働基本権制約の代償措置の根幹を成す給与勧告制度を所管する人事院の意見の申出に基づき、六十歳時点の七割水準としたものでございます。
○塩川委員 人事院にお尋ねをいたします。
 六十歳を超えた職員の給与については六十歳時の給与の七割としている根拠は何でしょうか。
○佐々木政府参考人 お答えいたします。
 国家公務員の給与につきましては、社会一般の情勢に適応するように変更することとされております。
 定年引上げ後の六十歳を超えます職員の給与水準につきましては、平成三十年の人事院の意見の申出におきまして、多くの民間企業は再雇用制度により対応していること等の高齢期雇用の実情を考慮いたしまして、厚生労働省の賃金構造基本統計調査及び人事院の職種別民間給与実態調査の結果を踏まえまして、六十歳前の七割の水準となるよう、給与制度を設計することといたしました。
 具体的には、再雇用者が含まれます賃金構造基本統計調査、当時、平成二十七年から二十九年の三年平均を取っておりますけれども、これにおきましては、公務の行政職俸給表(一)の適用を受ける常勤職員と類似します管理・事務・技術労働者のフルタイム、正社員の六十歳代前半層の年間給与を見ますと、五十歳代後半層の七割程度となっていたところでございます。
 また、定年を引き上げた企業につきまして集計しました平成三十年の職種別民間給与実態調査におきましては、定年を六十歳から引き上げ、かつ六十歳時点で従業員の給与の減額を行っている事業所におきます六十歳を超える従業員の年間給与が六十歳前の七割の水準となっていたこと、これらを踏まえまして、定年引上げ後の六十歳を超える職員の給与は、当面、六十歳前の七割の水準に設定することが適当と考えたところでございます。
○塩川委員 一宮総裁にお尋ねします。
 今、説明がありましたけれども、定年延長の場合の給与水準の話なのに、賃金構造基本統計調査では再雇用が八割というデータを基に議論をしているのは適切ではないのではないか。また、人事院の調査でも、定年延長をしている民間事業所のうち給与を減額しているところだけを取り出して議論するというのも、比較の対象として適切ではないのではないかと思いますが、お答えください。
○佐々木政府参考人 七割の水準についての考え方でございますけれども、まず、先ほどの三十年当時の数字は今申し上げたとおりでございます。他方、直近の数字を見ましても、全体の状況としましては、民間の高齢期雇用の状況に大きな変化は生じていないと考えているところでございます。
 また、先ほども申し上げましたけれども、民間におきましては、高齢期の雇用の問題につきましては再雇用が中心となっているというのが民間の状況でございます。
 給与の設定をするに当たりまして民間の状況を踏まえるに際しましては、そういった民間の状況の中において、定年を延長したあるいは定年制度がないところとのみ比較、措置するということはやはり適当ではなく、再雇用者も含めました民間全体の状況を踏まえて給与水準を設定することが適当であるというふうに考えております。
○塩川委員 河野大臣が先ほど言っていましたけれども、公務員の定年引上げが民間の参考になるようにというお話だったわけであります。そういうときに、定年の引上げの数字を、民間を参考に給与の数字を当てはめるのではなくて、再雇用を入れるですとか、定年を引き上げた場合でも給与を減額したところだけを取り出して比較するというのは、これは比較の在り方としておかしいということを重ねて申し上げなければなりません。
 その上で、人事院が平成三十年の意見の申出のときに紹介をしている二つの調査について、直近の数字はどうなっているのかを確認したいと思います。
 直近の賃金構造基本統計調査のデータはどうなっておりますか。
○佐々木政府参考人 お答えいたします。
 直近のデータといたしましては、平成二十九年から令和元年までの三年の平均の数字がございまして、それを申し上げますと、企業規模十人以上で見ますと、六十歳代前半層の給与水準が、六十歳前と比べまして七二・〇%、それから、企業規模百人以上で見ますと、同じく七六・二%という数字でございます。
○塩川委員 二年前の人事院の意見の申出のときの賃金構造基本統計調査の数字を見ると、十人以上は六八・八%でした。それが、今のお答えのように、七二・〇%に上がっています。百人以上については、二年前は七〇・一%でしたが、今のお答えは七六・二%です。この二年間の変化を見ても、いわば、七割ではなくて八割というのが実態だということが言えると思います。
 もう一つ、直近の、人事院が実施をした職種別民間給与実態調査のデータはどうなっていますか。
○佐々木政府参考人 昨年、令和二年の結果で申し上げますと、先ほどの、給与減額がありとしたところの減額の率でございますけれども、課長級で七七・〇%、非管理職で七七・二%でございます。
○塩川委員 二年前の人事院の意見の申出のときは課長級が七五・二%だったのが、今のお答えのように、その二年後、直近では七七・〇%へと上がっております。また、非管理職については、二年前は七二・七%だったものが、今回の直近の数字では七七・二%ということで、上がっているわけです。
 一宮総裁にお尋ねしますけれども、この人事院が使っている数字で見ても、確かに二年前は七割程度と言っていたかもしれないけれども、この直近の数字を見たら、もう八割程度という状況じゃないですか。ですから、七割程度という数字を使うこと自身がおかしくないですか。
○一宮政府特別補佐人 先ほど給与局長の方からお答えした直近の賃金構造基本統計調査及び職種別民間給与実態調査の結果を踏まえますと、現時点ではいまだ、民間の高齢期雇用の状況に、現在の提案について、七〇%を改めて検討し直すほどの大きな変化は生じていないというふうに考えております。
 六十歳を超える職員の給与水準の引下げは当分の間の措置と位置づけておりまして、六十歳前も含めた給与カーブの在り方等については、民間企業の状況等や政府における人事評価制度の改善に向けた取組の状況も含む公務の状況等を踏まえながら、引き続き検討していくこととしたいと考えております。
○塩川委員 人事院が使っている二つの数字を見ても、賃金構造基本統計調査の百人以上でいえば五ポイント上がっているわけですよね。また、人事院の民調の数字を見て、非管理職であれば同様に五ポイント上がっているんです。
 だから、そういう意味で、変化がない話じゃないわけですよね。有意な変化が生まれているときに、二年前に議論しているんだったら人事院としての数字があるのかもしれないんですけれども、今改めてこのときに議論をしているとしたら、少なくとも人事院として責任ある提案をするのであれば、私は直近の数字を踏まえた在り方というのが必要なんだと思うんですけれども、改めて、この七割程度というのはおかしくないですか。
○佐々木政府参考人 お答えいたします。
 直近のデータは今委員から御紹介あったとおりでございます、御説明申し上げたとおりでございますけれども、この民間給与の状況、民間の高齢期雇用の状況というものをどう見るかということでございますけれども、三十年の意見の申出に先立ちまして、二十三年にも私どもとしては意見の申出を行っておりますけれども、その際にも、民間の給与の状況につきましては、六十歳代前半層は七割というふうに判断させていただいたところでございまして、この問題につきましては、一定のスパンにおきます民間の状況というものを踏まえる必要があるというふうに考えております。
 その意味で、民間におきましては再雇用が中心であるという状況は、ここのところずっとトレンドとしては変わってはいないということがございます。今の時点におきましても、七割というのは適切な判断であるというふうに考えております。
○塩川委員 二十三年の意見の申出のときも七割と言っていましたけれども、このときも、数字上は、今と同じやり方、賃金構造基本統計調査においては再雇用を入れての数字ですから、その意味では同じ基準で測っていて、二十三年のときは七割、二年前の平成三十のときも七割。同じ基準でやっているということですけれども、しかし、この二年間で五ポイント上がるような状況になっているじゃないですか。
 だから、平成二十三年の話を持ち出すのなら、なおのこと、この二年間で数字が上がっているということこそ、しっかり人事院として評価する必要があるんじゃないですか。それは何で避けているんでしょうか。
○佐々木政府参考人 お答えいたします。
 この定年の引上げ、高齢期の雇用問題につきましては、定年を単に引き上げるということではなく、民間の高齢期雇用の状況を踏まえました給与水準の設定という要素、それから、組織活力の維持ということで例えばいわゆる役職定年制を導入するといったこと、また、多様な選択肢、働き方を可能とするということで定年前の再任用の短時間制度を導入するといったような、様々なパッケージの枠組みといたしまして意見の申出を行い、今回の法案にもそれが盛り込まれているというところでございます。
 そうした状況の中での今回の取組ということを考えたときに、定年の引上げだから、給与は定年を引き上げた企業とのみ比較するということではなく、再雇用者が多数であるという民間の実情を考慮した上で給与水準を設定するということが適切であるというふうに考えております。
○塩川委員 河野大臣にお尋ねします。
 先ほどの岸本さんとのやり取りでも、公務員の定年引上げが民間の参考にというお話をされました。もちろん、公務員の給与については人事院の仕事ということでありますけれども、しかし、その比較の在り方が、定年の引上げの話なのに再雇用を入れた数字を出すとか、こういった比較の仕方はおかしいんじゃないのか。そういう点でも、率直に、再雇用を入れるような数字の取り方ではなく、実態に合ったやり方を考えて、もう一度この賃金水準について見直しすることが必要じゃないのか、その点についてのお考えをお聞かせください。
○河野国務大臣 いずれにいたしましても、我々としては、この人事院の意見の申出に基づいて設定をすることになりますので、そこは人事院によく御議論いただきたいと思います。
○塩川委員 二〇一八年、平成三十年の人事院の申出が七割程度となっているわけですけれども、その前に、政府、内閣官房が、公務員の定年の引上げに関する検討会を行い、その論点整理をまとめた中では、「「国家公務員の総人件費に関する基本方針」を踏まえ、定年の引上げに起因する総人件費の増加を抑制する」、「六十歳以上の職員の給与水準については六十歳時に比し一定程度引き下げることが適当」とある。
 つまり、政府の方が先に引下げありきを求めていた、こういうことが、人事院のこういった対応にも表れているんじゃないですか。そもそも、総人件費抑制の方針ということを政府が決めていることが影響を与えているというのが実態ではありませんか。
○河野国務大臣 そもそも、職員の給与につきましては、労働基本権制約の代償措置の根幹を成す給与勧告制度を所管する人事院の申出その他によって、我々、決定をするわけでございますので、そこは人事院がしっかり議論をしていただく、そういうことでございます。
○塩川委員 国家公務員の総人件費に関する基本方針で、このような総人件費の抑制を図るということが掲げられていて、その具体化として、この定年引上げの際にも賃金は抑えるということになっているということが大本にあるということを指摘せざるを得ません。引下げありきの措置という点について、この点については納得のいくものではありません。
 もう一つ、定年延長の下で新規採用がどうなっていくのか。計画的な採用が求められるところですけれども、この点についての政府の対応についてお聞かせください。
○河野国務大臣 先ほど既に答弁いたしましたように、新規採用をコンスタントに続けていくというのは、国民に安定的に行政サービスを提供する、あるいは、公務員の、専門家、専門的な知識、知見を次につなげていくという観点からも、これは重要でございますので、必要ならば一時的に定員を増員をするということも行いながらしっかり新規採用は続けてまいりたいと考えております。
○塩川委員 これは、具体的な制度設計とかというのはどうなっているんでしょうか。
 今お話しのように、コンスタントに採用していく、一時的に定員をオーバーするような場合もあり得るというお話ですけれども、新卒採用ができないということでは、組織の継続にとっても、学生の就職活動にとっても望ましくないことですので、そういった定員措置の考え方については、何らかこれまで示しているものはあるんでしょうか。
○山下政府参考人 お答えいたします。
 今、法案を御審議いただいておりますので、今の時点で示しているものがあるわけではございませんが、先ほどもお答えいたしましたように、それぞれの集団ごとに、その採用の規模なり年齢構成なりというのが、職務の能力、専門能力が継承されるように考えていく必要があるわけでございます。
 このため、先ほども申し上げましたけれども、それぞれの専門集団ごとに、各府省において、その年齢構成がどうなるか、その中で採用、退職管理をどうやっていくかということをこの施行までに検討いただく必要がございます。
 そういう中で、あわせまして、定年引上げ期間中は定年退職者が出ない年度がありますので、そこの年度で新卒採用が滞ることがないように、一時的な調整のための定員措置を行うというものでございます。
○塩川委員 最後に、河野大臣にお尋ねします。
 こういった定員管理の問題についても、この総人件費の抑制方針というキャップがかかるわけであります、人数掛ける単価でやるわけですから。そういったときに、この総人件費抑制方針が定年延長の下での計画的な新規採用の障害になりはしないのか、その点についてのお考えをお聞かせください。
○河野国務大臣 こういう財政状況でございますから、野方図に人件費を増やしていくということはできませんけれども、今年度、数十年ぶりに定員を増員したところでございまして、必要なことはしっかりやってまいりたいと思っております。
○塩川委員 元々、日本の公務員が少ないということも多くの方が御承知のことであります。仕事にふさわしく人をつけていくという点で、抑制方針そのものを見直すべきだと申し上げて、質問を終わります。