【内閣委員会】公立保育所の保育士処遇改善事業/実施申請は5分の1以下

 ケア労働者の処遇改善について、しっかりとした賃上げにつながるよう迫りました。

 政府は、今年2月から保育士等・幼稚園教諭、介護・障害福祉職員などの賃金を収入の3%(月額9000円)引き上げる処遇改善事業を進めています。

 私は、賃上げ額が一桁違うとの現場の声を受け止めよと強調。

 山際大志郎担当大臣は「謙虚に受け止めなければならない」と答えました。

 私は、申請手続きが進んでいない自治体があると指摘し、自治体から国への申請期限である2月21日以降も申請を受け付けるかと質問。

 内閣府は「少し遅れて提出があった場合でも柔軟に対応する」と答えました。

 私が、公立保育所の職員の賃上げを行う自治体数について質問したのに対し、内閣府は、1月28日時点での経過的な状況であるとしながらも、申請があった183自治体のうち公立保育所を対象としているのは34自治体のみだったと明らかにしました。

 私は、かなり少ない。コロナ対応の最前線で働く職員の賃上げに、さらに踏み込んだ対応が必要だと指摘。

 野田聖子少子化担当大臣が「公であろうと私であろうと関係なく取り組んでいただきたいと願っている」と答えた。

 私は、賃上げに消極的な背景に、地方行革、自治体リストラの影響がある。国の財政的保証を明確にせよと強調したうえで、全産業平均と比べ、月額9万円の差がある保育士の賃金格差をいつまでに解消するのかと迫りました。

 野田大臣は「公的価格評価検討委員会でしっかりやっていく」と述べるにとどまりました。

 私は、保育士の賃金改善は人事院勧告に準拠した部分が多く、昨年度はマイナス0.3%だったとして、処遇改善どころか保育士に賃下げを強いていると批判。マイナス人勧は公定価格に反映させないよう求めました。


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「議事録」

<第208通常国会 2021年2月9日 内閣委員会 第3号>

○塩川委員 それでは、続いて、岸田政権におきまして、賃上げの取組の一つとして、公的価格に基づく賃上げの話、ケア労働者の処遇改善事業に取り組んでいる、昨年の補正予算で措置されたものですけれども、この点についてお尋ねをしたいと思います。
 昨年十一月十九日のコロナ克服・新時代開拓のための経済対策の公的部門における分配機能の強化等において、「看護、介護、保育、幼児教育など、新型コロナウイルス感染症への対応と少子高齢化への対応が重なる最前線において働く方々の収入の引上げを含め、全ての職員を対象に公的価格の在り方を抜本的に見直す。民間部門における春闘に向けた賃上げの議論に先んじて、保育士等・幼稚園教諭、介護・障害福祉職員を対象に、賃上げ効果が継続される取組を行うことを前提として、収入を三%程度(月額九千円)引き上げるための措置を、来年二月から前倒しで実施する。」とあります。
 山際大臣でよろしいんでしょうか。この収入三%程度引上げという、この三%というのは、どういう意味、なぜ三%なのか、この点について御説明ください。
○山際国務大臣 これは今委員が御発言の中で御説明いただきましたように、新しい経済対策の中において、春闘、まさに今やっているところですけれども、これに先んじて賃上げを、社会全体の雰囲気として、していこう、そういう中において、その賃上げのペースが、どうしてもここのところ民間も含めて下がってきているということに鑑みて、まずは隗より始めよということで、政府ができる部分として、公的部門にいらっしゃる方々の賃金を上げていこうというところで決まってきたものというふうに承知しております。
○塩川委員 賃上げペースが下がってきている、まず隗より始めよということで、公務において、この分野で引上げをしようと。その三%という意味というのは、どうなんですかね。
○山際国務大臣 これは、社会情勢等々もしっかり見ながら、総合的に判断して三%ということになりました。
○塩川委員 いや、分からないんですけれども。もうちょっと言葉を足して説明していただけませんか。
○山際国務大臣 先生の意図しているところは酌み取っているつもりではいるんですけれども、社会情勢を鑑みてということは、先ほども申し上げたように、民間全体も含めて賃上げのペースがここのところで、コロナ感染症ということもあり、下がってきているということを見て、これを賃上げをするという回復基調に乗せていくというようなことを考えていかないといけない、そういうコンセプトに基づいて、その中において、いろいろ総合的に判断をした中で三%ということが決まったということでございます。
○塩川委員 これは、あれですかね、そうすると、まず隗より始めよという言い方であれば、民間でも三%以上やってほしい、そういう趣旨が込められているということでしょうかね。
○山際国務大臣 春闘を、我々の方で、民間の話ですから、私たちの方でいわゆる官製春闘のような形で何か物事をしていただきたいということではなくて、今までの流れを一気に反転させたい、こういう思いで、その中で、現実的にできる部分というのも当然探らなきゃいけませんし、他の業種等々も含めて全体の流れというものを見る中で、我々として、できるところからまずやろうということで決めたことでございますので。
 総理からは、民間の皆様方にも、業績を回復されているそういう企業の皆様方は、三%を超える、三%程度のと言いましたか、賃上げを期待するということでございますので、それを要請するというわけではなくて、全体の雰囲気を一気に反転させるということを、まずは私たちがやれるところからやりたいという趣旨でございます。
○塩川委員 そういった賃上げの好循環につながるような方向での取組ということが極めて重要だと思います。
 その際に、同時に、ケア労働者の方々の賃金というのが全産業平均に比べても低いと言われるような中で、率直に言って、その現場の方からは、三%、九千円というのでは一桁違うという声というのは出るわけですね。そういった声については、どうお答えになりますか。
○山際国務大臣 それは謙虚に受け止めなくてはいけないと思っております。これまでも、公的部門にお勤めの皆様方の賃金というものに関して累次、少しずつですけれども、上げさせていただいてきたという経緯は委員も御案内のとおりでございます。今回でそれが十分かと言われれば、そうではないという現場の意見があるということも我々承知しております。
 その中で、現実的にやれることをしっかりやっていこう、こんなことで、今回はこの三%、まずはやらせていただきたいということで決定したわけでございます。
○塩川委員 まあ、まずは一歩という話で、次の取組につながるようなものにしていくということは当然必要なんですが、今回のスキームで賃上げの対象となる労働者は何人なのか、そのうち公立施設の職員というのは含むのかどうか、その辺の大枠について御説明ください。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 私ども内閣府の方からは、内閣府所管の令和三年度補正予算において、今般の処遇改善に係る保育所や幼稚園等の予算積算上の職員数でございますけれども、常勤換算で約七十一万人分、このうち公立分が約二十万人分となってございます。
 また、放課後児童クラブの職員数でございますけれども、基となる厚労省の調査で公立、私立を分けて集計していないために、全体の人数というふうになりますけれども、常勤換算で約十二万人分というふうになってございます。
○森政府参考人 文部科学省が実施いたします補助事業におきましては、国立大学附属幼稚園について約五百名、それから私立幼稚園のうち私学助成の交付を受ける幼稚園について約五万二千名の教員を対象としているところでございます。
○岸本政府参考人 厚生労働省からお答えいたします。
 賃上げの対象者数でございますが、まず、保育分野のうち、厚生労働省が予算の執行を行う社会的養護関係施設の職員は、予算上、常勤換算で約三万人、このうち公営施設の職員は約二千人となってございます。
 また、その他の分野の対象者数でございますが、予算上、常勤換算の人数としまして、介護職員が約百三十八万人、障害福祉職員が約五十七万人、看護職員が約五十七万人となっております。
 なお、これらの職員につきましては、公務労働者の数を把握してございません。
○塩川委員 ありがとうございます。
 これを積み上げると、単純な積み上げで三百四十三万人程度になると思います。その中には公務の労働者も含まれているということで、当然、常勤換算で計算していますから、実際に支給の対象となる方は、その他の調理に当たっているような方なども含めてもう少し広がるので、実際の賃上げに関わる労働者数は更に大きくなると思います。しっかりと賃上げにつながれば、少なくない影響を及ぼすということは言えると思います。
 そこで、実際に、この申請の手続なんですけれども、動き始めていて、自治体から国への申請期限というのが二月の二十一日となっていますけれども、いろいろ現場の声を聞きますと、民間施設や高齢者施設の申請手続が進んでいないというふうに聞くわけです。
 これは、二月二十一日は一つの節目で、二月二十一日以降も実際には申請の受付が可能、実際に支援の対象をしっかり広げるということがポイントだと思いますから、二月二十一日で、後はもう全部駄目という対応はしないでほしいんですが、その点、どうでしょうか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 令和三年度補正予算で措置をされました処遇改善に係る補助金でございますけれども、今年度中に保育所等に対しまして資金を交付できるように、令和三年度における国への交付申請の期限につきましては、先ほど委員から御紹介ありましたとおり、一月の二十八日も第一回の交付の期限がございますけれども、もう一回、二月の二十一日というふうに設定をしているところでございます。
 今回の処遇改善では、各保育所等におきまして三月までに実際に賃金改善を行っていただくということを補助要件としているわけですが、市町村から国への申請について言いますと、管内の保育所等における処遇改善の実施見込みに基づいて、概算による申請ということを行うことも可能としております。
 このため、市町村が定めた期限までに施設から申請がないということを理由にして、三月までに処遇改善の取組を行うにもかかわらず、一律に補助の対象外とすることは適当ではないというふうに考えております。
 こういったことから、市町村に対して、ただいま申し上げましたような趣旨をきちんと周知をし、柔軟に適切に対応いただくように働きかけを行っていきたいと考えております。
○塩川委員 ですから、施設から市町村へという点で、なかなか作業そのものも大変で間に合いませんと、一週間ぐらい前にそういうのを設定しているような場合も多いでしょうから、そういう場合については概算で市町村から国へということはあると思うんですが、その際でも、二月の二十一日で、全部それ以降は受け付けませんという対応でいいのかという点はどうでしょうか。
○藤原政府参考人 内閣府における、ただいま申し上げました二月二十一日という期限につきましても、もちろん、無制限にというわけにはいきませんけれども、いろいろな自治体の御事情もおありでしょうから、状況を見て、少し遅れて提出があった場合でも対応できるように、国としても柔軟に対応していきたいと思っております。
○塩川委員 とにかく、賃上げにつながるような作業ということで、いろいろな現場の遅れも見越しながら、しかるべき手続を対応いただきたいということです。
 それで、埼玉県にお聞きしますと、市町村に対して、民間施設で事業者が申請しない場合に、その理由を把握をすることを求めています。やはり賃上げにつながるような取組を行ってもらいたいという趣旨でいったときに、手を挙げないような場合について、なぜなんですかといったことを確認するという作業を埼玉県としては行うということにしているんですけれども、こういった点について、国としても、やはり現場の実態を把握する必要があるんじゃないのか。
 申請者が申請しない理由があれば、それも把握をして、それに対しての改善策を取るといったことも国として考える必要があるんじゃないかと思うんですが、その点はどうですか。
○藤原政府参考人 今回の処遇改善の補助金、非常に重要な、大切な補助金であるというふうに考えております。これをできるだけ全国の保育所等において御活用いただけるように、我々、しっかり周知なり手続の弾力化なりしているところでございます。
 委員がおっしゃったような、個々の施設について国が直接意向を把握するというところまではなかなか難しいかと思いますが、先ほど申し上げましたように、そもそも、自治体から国に対しては、まず概算で請求をしていいですよというふうにしておりますので、こういったことをしっかり周知をして、適切に自治体において対処いただくように、周知なり取組、働きかけなりをしていきたいというふうに考えてございます。
○塩川委員 その点、周知方、しっかり求めたいと思います。
 それから、公立の施設の関係なんですが、特に保育園でお尋ねしていますけれども、公立保育園等の職員について賃上げを行う自治体というのはどのぐらいになりそうか、そういう見込みというのは国としてはお持ちですか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 今般の処遇改善に係る交付金でございますけれども、まだ申請が、まず一回目の一月の申請しかございませんので、第一回交付申請の状況ということで、あくまで経過的な状況ではございますけれども、その段階で保育所等について申請がありました自治体が百八十三自治体ありまして、そのうち、公立の保育所も対象にしますよというふうな内容になっておった自治体については三十四自治体でございました。
 まだ第一回目の状況ですので、今後の状況をよく見ていきたいと思います。
○塩川委員 第一回目について、公立保育園の職員の賃上げを行う自治体というのは百八十三分の三十四。これはかなり少ないんじゃないかと思うんですが、その点についての認識はいかがですか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 まずもって、第一回目に、一番最初の段階で出してこられた自治体ですので、またこの先よく周知なりしていきたいと思いますが、今回、公立施設についても補助金の対象にしているという趣旨についてはしっかり御説明をし、各自治体で適切に御判断いただきたいというふうに考えております。
 一方、やはり、地方公務員である公立施設の職員の給与を上げるということになりますと、御承知のとおり、条例ですとか規則の改正、それを地方議会の議決を伴うというふうに、一定の手続に時間を要するというふうな特殊性があるということも事実でございます。
 このため、内閣府では、二月分からの賃金改善を行うという条例改正案などを年度内に議会に提出いただいている場合には、実際の支給が四月以降となる場合であっても、今般の処遇改善の補助対象にすることとしております。
 また、国に対する交付申請に当たっても、公立施設も含めまして、処遇改善の各保育所の実施見込みに基づき、先ほど申し上げました、概算で申請していいですよというふうなことですとか、こういった柔軟な取扱いもしております。
 また、一方、総務省の方からも、公立施設の職員の賃金改善の取組の例を通知をいただきまして、働きかけをしていただいているところでございます。
 このように、内閣府では、総務省の御協力もいただきながら、公立施設の職員についても賃金改善を実施いただけるように取り組んでいるところであり、引き続き、周知についてしっかりと行っていきたいというふうに考えております。
○塩川委員 一応、条例が年度内にということで、ぎりぎりまで対応するということは認めますよと。そういうスキームの話は分かります。ただ、この百八十三分の三十四しか公立保育園の賃上げをしないという、この賃上げしないという自治体がどういう理由なのかというのは、つかんでおられますか。
○藤原政府参考人 私ども、まだあくまでも経過的な状況でございましたので、個別に幾つかの自治体に、どういうふうな意向を持っておられるかとか、どういうふうな条例改正を考えていらっしゃるのかということを個別に自治体からお聞きしているような事例はございますけれども、包括的、網羅的に状況を把握しているということではございません。
○塩川委員 二月の二十一日で、また当然、一つの締切りで来るわけですから、実際それがどの程度なのかというのもあります。ですから、公立保育園での保育士の賃上げについて消極的だという傾向というのが大きくあるようであれば、それを解消するような手だてというのは必要だと思います。
 私がお尋ねしたある政令市においては、公立保育園職員の三%引上げについて、二月からの実施になっているわけですけれども、二月からは考えていない、その後どうするかは検討中だ、病院職員の引上げも考えていないというお話でした。もちろん、非常勤の会計年度任用職員も同様だということですが。
 こういった実態をしっかり把握する必要があるんじゃないかと思うんですが、改めて、いかがですか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 地方公務員である公立施設の職員の賃金につきましては、自治体によって、職種ごとですとか、それから会計年度任用職員の給与体系ですとか、様々だろうというふうに承知をしておりますので、基本的には、内閣府としては、先ほど申し上げましたような、柔軟な対応をしているよということをしっかりお伝えをし、その自治体、自治体で適切に御判断をいただくということをお願いをしたいというふうに考えております。
 第二回目の交付期限を見極めて、どのぐらい出るかということもよく見たいと思いますし、実際にそうやって上がってきた自治体の中で、どのような対応をして処遇改善に取り組まれるのかということは、幾つかの自治体の取組などを把握をするとか、少し工夫はしてみたいと思いますけれども、いずれにしても、自治体においてしっかり適切に御判断いただけるような周知について取り組んでいきたいというふうに考えております。
○塩川委員 ある政令市にお聞きしたときに、何で引上げを検討しないのかという理由として、三つぐらい言っていたんですけれども、一つは、公立保育所職員の年収は民間よりも高いので、直ちに処遇改善は必要ないということとか、二つ目は、ほかの政令市に確認したところ、前向きなところが少なかった、他市との均衡を考えた、こんなことを言っていましたし、三点目は、どうしても人事院の勧告制度がありますので、人事委員会の勧告を受けて、この間、賃金については対応してきたけれども、今のところ人事委員会から意見はないということもあり、こういったことを考慮して、引上げを検討しないというふうにしたという話なんですが。
 しかし、公立保育所の保育士も全産業平均と比べたら賃金が低いことには変わりありませんし、仕事内容に比して報酬が十分でないという、岸田政権でのケア労働者の賃上げのこういう立場に立っても、こういったケア労働者の賃上げに後ろ向きというのは極めて残念なことであります。
 また、今回の三%の引上げは人勧制度そのものと関係ないので、何か人事委員会を持ち出して話をするようなことでもないわけです。
 結局、賃上げをしない理由を探しているような話になっちゃうんじゃないかなと思っていて、ここのところをやはりよく工夫もして、公立保育所における保育士の賃上げを図るといったことを一歩進めるような取組が必要じゃないかと。
 この点で、どうでしょう、野田大臣、山際大臣、どちらが担当なのかよく分からないんですが。
○山際国務大臣 モメンタムは先生のおっしゃるとおりで、賃上げをみんなでしよう、そういう社会の雰囲気をつくらなくてはいけないというのが我々岸田政権における、岸田内閣における方向性ですから、できればそれにそぐう形で、様々部署部署ありますが、いろいろな理由もありましょうけれども、その中で、その方向で、みんなで賃金を上げられる方向で進んでいただければと思っております。
 何ができるかというのは、担当の部署とも相談をしたいと思います。
○塩川委員 野田大臣にも一言いただきたいんですが、保育士の賃金が低いというのは、やはり女性が多い職場という、男女の賃金格差のその側面もあります。
 そういった男女差別の解消の取組の一環としても、こういった女性が従事することの多いケア労働者の賃上げをしっかりと図るということが極めて重要であると思いますので、この点でやはり、特に、今言った公立保育所の保育士の賃上げについて消極的な自治体が多いという現状を踏まえて、もう一歩踏み込んだ対応をしっかり取る必要があるんじゃないのか。
 野田大臣、いかがでしょうか。
○野田国務大臣 私の担当は専ら、保育士等ということなんですけれども、今、山際大臣がおっしゃったように、この取組は何かというと、全ての皆さんの賃金を上げることで、人への投資、どの仕事に就いていても、やはり賃金を上げて、生活又は子供への手当て等を豊かにしていくことで厳しいこの経済情勢を乗り越えていこうという趣旨とするならば、それが公であろうと私であろうと、職種関係なく、とりわけ、今このコロナ禍の中で重要視されているエッセンシャルワーカーも実は大多数が女性なんですね、看護師さんを始めとして。さらに、保育士とか介護士さんもほとんど女性が担っているケースが多いわけで、そこがやはり実はずっと見落とされてきたのかな、この長い歴史の中では。
 でも、ようやく平成二十五年あたりから、やはり子供に関してしっかり取り組まなきゃいけないということで保育士さんたちの処遇改善が始まっていて、少しずつ、この厳しい賃金、低賃金、賃金が伸びない中ですけれども、今般、累次、月額最大八万四千円までは乗せ上げてきましたので、引き続き、保育士さんそのものの生活だけではなくて、保育士さんあってやはり子供たちの健やかな育ちがあるという、今の新しい子供政策の下でも、公的だとか私的だとかそういう話ではなく取り組んでいただければと願っています。
○塩川委員 この点、ですから、本当に現場の実情に即して何ができるのかというのをしっかり対応することが必要だと思っています。
 自治体が消極的な気持ちになるのも分かるというか、背景としてあるのが、やはり三位一体も含めて、地方行革あるいは自治体リストラ、こういった動きの中で、地方財政措置がしっかり対応してくれるのかといったのがやはり大きくあると思います。
 二月から九月は少なくとも十分の十の補助でやりますけれども、十月以降については地方交付税措置ですねといった場合に、しかるべき措置は総務省として取っているという話ではあるんだけれども、本当かみたいな話というのが自治体側にあるわけで、この点も含めて、公立の保育所の保育士の賃上げにつながるような地方財政措置をしっかり行うということを、自治体にも納得いくような形で示すということは必要なんじゃないのか。この点、野田大臣、どうですか。
○野田国務大臣 繰り返しになりますけれども、国の方では、新しい資本主義を起動するために、まずは保育などの現場で働く方々の給与の引上げを行うわけで、これは国ができる範囲の中で先駆けて取り組むと。それで、引き続きいろいろな、公定価格の問題点が、これまで、人事院勧告があると下がるとか、そういういろいろなことがあったけれども、そもそもやはりこういう介護、障害、保育、幼稚園というのは低かったので、それをやはりきちっと、増加するであろうということで処遇改善をしていこうということが、公的価格評価検討委員会、この中間整理において、特に二〇二〇年代にこうした取組に注力すべきとされていることを踏まえて、国はもとより、全てのそういう関係の人たちが適正な水準まで賃金が引き上がるよう、関係の大臣たちと連携して取り組んでいくべきだと私は思います。
○塩川委員 その点で、公的価格評価検討委員会を設置をして、具体化をしたアウトプットも行われてきているわけですけれども、岸田総理が自民党の総裁選の施策として、看護師、介護士、幼稚園教諭、保育士など、賃金が公的に決まるにもかかわらず、仕事内容に比して報酬が十分でない皆様の収入を思い切って増やすために、公的価格評価検討委員会を設置をし、公的価格を抜本的に見直すと訴えていたわけであります。
 仕事内容に比して報酬が十分でない皆様の収入を思い切って増やす、エッセンシャルワーカーの方。そうであれば、保育士の方、保育労働者の方でいえば、全産業労働者平均が年収四百八十七万円、一方、保育の労働者は年収が三百七十四万円です。厚労省の二〇二〇年の賃金構造基本統計調査に基づくと、月額九万円の格差になります。この九万円の格差を解消することこそ目指すべき目標であって、この格差をいつまでに解消するのか。この点、野田大臣、どうでしょうか。
○野田国務大臣 繰り返しになりますけれども、今委員がおっしゃっているとおり、保育士始めこういう職種の方たちが他の職種に比べて非常に賃金が低い状況にある、そしてまた、人材確保に向けて処遇改善をしていくということはもう明らかで、これは、先ほど申し上げたように、平成二十五年ぐらいから累次の処遇改善というのをしっかり行ってきて、現在のところ、今日までで月額最大八万四千円までは二十五年から上げることができてきたわけですね。
 しかし、まだまだ足りないということで、これから、岸田政権の新しい資本主義を起動するための分配戦略として、更にまた保育などの現場で働く方々の給与の引上げを行います。そして、引き上げるけれども、これが継続的なものになるように、補正予算ではまず前倒しを実施していますし、本年十月以降については、公定価格の見直し等によりきちっと措置をすることにしています。
 先ほどの話のとおり、公的価格評価検討委員会においては、やはりきちっと注力していくということが明らかになっていますので、しっかりやっていくということを決めているところであります。
○塩川委員 資料をお配りいたしました。先ほど野田大臣も御説明いただきました保育士の処遇改善のことが分かるグラフですけれども、これを見ていただいて、一番右側のグラフが令和二年度と令和三年度に当たります。これは、下側のオレンジ部分のところが人事院勧告に準拠した改善部分なんですよね。全体に占める人勧に準拠した改善部分が非常に大きいというのもこれで見て取れるんですが。
 人勧に準拠した、改善になっていればプラスなんだけれども、マイナスの場合があるわけですよ。令和二年度はマイナス〇・三%なんですよね。そうすると、保育士については、処遇改善しましょうと言っているんだけれども、実際には、人勧に準拠したマイナスが反映されて、逆に減っているという状況になっているわけです。処遇改善どころか、保育士に賃下げを強いることになっています。
 このマイナス人勧による賃下げを押しつけるということは、そもそも岸田政権が言っている、こういった保育士を始めとしたエッセンシャルワーカーの方の収入を思い切って増やす取組に逆行するんじゃないでしょうか。
○山際国務大臣 これは、ほかの分野で、特に公的な分野で働いていらっしゃる方々にも人勧は利いてくるわけですから、全てに言えることです。しかも、それはタイムラグがあるわけですね、先生御案内のように。ですから、悩ましい部分であるというのは、そうかもしれません。
 一方で、それだけで物事を見ていくわけではないので、先ほどから何度も申し上げているように、政権としてどういう意識でいるのかということをきちんとお示しし続けることが大事だと思っているんです。
 我々としては、まずは三%というので賃上げを実施させていただいて、それはマイナス要因として人勧というのがあるというのは承知しておりますけれども、ですから、先ほども、まずは三%からやらせていただいてという言葉を使ったのであって、これからも持続してこの賃上げのモメンタムが維持できるようなそういう状況をつくっていきたい、それが岸田政権としての方向性なんだということを先ほどから申し上げているわけでございます。
○塩川委員 いや、ですから、格差解消しましょう、保育士の賃上げを図りましょうと言っているときに、人勧のマイナスを反映して引き下げることはないでしょうということなんですよね。
 でも、今回、このケア労働者の処遇改善事業におきましては、保育士等、新制度に基づく労働者の方については、人勧に基づく給与法に従うマイナス分については、これは補助制度で穴埋めをするわけです。マイナスをゼロにして、その上に九千円乗せるという仕組みになっているんですよ。
 ある意味、やればできるんじゃないかという話だと思うんですけれども、こういった穴埋め措置を継続的に行えばいいんじゃないですか。
○野田国務大臣 先ほど来お話があるように、人事院勧告に依拠した改善部分というのが多いわけで、御承知のように、公定価格というのは積み上げ方式、人件費、事業費、管理費についてそれぞれ対象となる費目を積み上げて算定する積み上げ方式を採用していて、人件費については国家公務員の給与に準じて算定しています。
 ですから、おっしゃるとおり、従来から人事院勧告に伴う国家公務員の給与の改定内容について、プラス改定の場合もマイナス改定の場合も保育士等の人件費に反映してきている。今回は、令和三年人事院勧告では、ボーナスを〇・一五月分引き下げる内容ということで、国家公務員の対応を踏まえて、令和四年度から公定価格の人件費については〇・九%の減額改定を行う予定です。
 一方で、今お話があったように、今般、三%程度、月額九千円の処遇改善を実施するに当たり、令和四年四月以降も三%の処遇改善となるよう、令和三年度補正予算において、令和四年四月から九月までの間の公定価格の人事院勧告影響分の減額相当分、今お話があったマイナス九%相当を含めて補助を行うことにしています。
 いずれにしても、処遇改善の取組が保育等の現場に行き渡るように取り組んでまいりますし、今後、十月以降の対応についても、本年の夏の人事院勧告の状況を見つつ、三%程度の引上げがきちっと維持されるよう対応を検討していくつもりです。
○塩川委員 ですから、人勧に伴うマイナス分を今回は補助して埋めているわけですよ。
 ですから、今後、公定価格で人勧の反映を入れるというんだけれども、プラスは反映するのは分かりますよ。格差を広げるようなマイナスの部分は、もうやめたらどうですか。そういう仕組みにこそしておく方がいいんじゃないですか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 保育所に支払われる公定価格、これは御承知のとおり、子ども・子育て支援制度において告示で示している公定価格でございますが、この単価につきましては、保育、幼稚園等の子ども・子育て支援法による公定価格については積み上げ方式を採用しているわけでございます。
 このうちの人件費を国家公務員の給与に準じて算定をしているということですので、人勧がプラスのときはそのとおりプラスにしますし、マイナス改定のときはマイナス改定というふうにさせていただいていると。
 トータルで見れば、この十年間で、プラス改定六回、マイナス改定二回、改定なし二回となっておりまして、単純に合計しますとプラス七・八%の改善が実現できている。そういった積み上げ方式による効果ということもあることも事実でございます。
 今後、先々のことをお答えすることは非常に難しいことでございますし、年度年度の予算編成での予算確保という点もあるので、先々のことをお答えすることは難しいですが、今申し上げましたような積み上げ方式によって効果がある、改善に対して効果が今あるということも事実でございますし、私ども、子ども・子育て会議の報告書、対応方針においても、公定価格の設定方法について積み上げ方式を維持すべきであるというふうな方針も示されておりますので、まずはこの三%の引上げ、今回の三%の引上げを、しっかり率を上げていくということで取り組みたいと思います。
 その後のことについては、ちょっと今私どもの方からお答えすることは困難ではありますが、処遇改善、非常に重要な政策課題だということは重々承知をしておりますので、適切に対応していきたいというふうに考えております。
○塩川委員 人勧を値切るということは、過去、政権が何度もやってきているんですよ。それを我々は反対してきたけれども、プラスはちゃんと反映するけれどもマイナスは反映しないということだって、やる気になればできる話なので、こういったマイナス人勧部分については公定価格に反映するなといった原則を作って、それに基づいて対応するということを求めて、質問を終わります。