【本会議】科学技術の軍事化推進/経済安保法案が衆院通過/反対討論

 経済安全保障推進法案の採決を行いました。日本共産党とれいわ新選組が反対しましたが、他の会派の賛成多数で可決。採決に先立ち反対討論を行いました。

 討論の要旨は以下の通りです。


 反対理由の第1は、科学技術の軍事研究化を推進し、学問の自由などを侵害するということです。

 政府が指定する「特定重要技術」の研究開発のために設けられる「指定基金」に想定されているのは、2500億円もの「育成プログラム」です。その研究成果は、軍事技術として「将来的に防衛省の判断で活用されることはあり得る」と答えました。

 「指定基金」において必置とされている「協議会」は、政府から機微情報の共有など「伴走支援」が行われ、参加者に、罰則付きでの守秘義務を課しています。これまで研究開発において、このような罰則付きのやり方が設けられたことはありません。研究活動に大きな制約を持ち込むものです。

 東北大名誉教授の井原聰参考人は、競争的研究費を乱発すれば基礎研究がおろそかになると指摘し、「裾野の広い、自発的な研究土壌」でこそ人類の発展に寄与する学問が育つと訴えました。

 本案の官民技術協力は、これに反し、巨額の研究費で軍事転用可能なデュアルユース技術の強化を狙うものです。

 憲法9条に矛盾する特許出願非公開制度は、民生技術を軍事技術に吸収し戦争遂行に動員した、戦前の「秘密特許」制度の復活に他なりません。

 外国出願を禁じた「特定技術分野」の発明は、米国に対してのみ、防衛特許協定を理由に除外されます。軍事特許を日米の軍事力強化に役立てる新たな仕組みとなりかねません。

 さらに、本案の先に「セキュリティー・クリアランス(適性評価制度)」が検討されていることは重大です。政府の「秘密」保全だけでなく研究者・民間企業も対象とした秘密保護法制の拡大につながり、プライバシー・学問の自由の侵害、労働者の不利益取り扱いを含め深刻な人権侵害が生じかねない問題であり、認められません。

 第2に、政府による企業への介入を強化する問題です。

 基幹インフラの事業者に対し、設備導入などの際、納品業者・委託業者などを事前に届け出させ、政府が審査し勧告・命令まで行うとしています。また、「特定重要物資」の供給事業者に対しても、取引先などを記載した安定供給のための計画を提出させます。

 このようなやり方に、経済界からも懸念の声が上がっています。

 この間、「経済安保」の名の下、警視庁が大川原化工機社長ら3人を不当逮捕・長期拘留した冤罪事件を起こしています。「経済安保」を大義名分として、企業活動に対する恣意的な規制が拡大する懸念がぬぐえません。

 第3に、政官業の癒着の問題です。

 民間企業に対して、様々な規制とともに「安定供給確保支援法人基金」助成などの支援策を行うとしています。現時点で5000億円ともされる半導体大手TSMCのように特定企業への巨額支援が横行しかねません。

 また、本案は、重要な事項が138箇所も政省令にゆだねられており、国会の関与はわずか2箇所しかありません。「政府への白紙委任」と言えるものです。

 このことが、企業が政府とのパイプを得ようと、特別な働きかけをする契機となり、藤井敏彦・前経済安保法制準備室長の事件にもつながっています。「天下り」が横行することになります。政官業の癒着が避けられません。

 本案は、国家安全保障局(NSS)が、外交・防衛政策と並びで経済政策を国家安全保障の一つの柱としてつかさどるものとなります。その経済政策には住民監視・私権制限の土地利用規制法も位置付けられていることは看過できません。

 岸田総理は、年内策定予定の国家安全保障戦略に「経済安全保障を位置づける」と認めました。軍事・経済の両面で日本がアメリカの安保戦略に組み込まれるものとなることは明らかです。


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