洋上風力発電の設置を認める海域を排他的経済水域(EEZ)まで拡大する再エネ海域利用法改正案の採決を行い、全会一致で可決しました。
私は、企業の利益優先ではなく環境保全が重要だと強調しました。
私は、法案に盛り込まれた、事業者の代わりに環境省が環境アセスに相当する調査を担う内容について質問。洋上風力発電アセスの技術ガイドに関するパブコメで、コウモリ・鳥類・魚類・その他遊泳動物への影響など懸念が示されていると指摘し、「環境省には洋上風力による環境への影響に関する知見があるのか。環境を保全する役割が果たせるのか」と質問。
環境省は、「科学的知見が乏しい」と認め、環境省が行う事前調査や運転開始後のモニタリングを通じて知見の充実を図っていくと答えました。
私は、24年度予算事業は、航空機を用いた海域調査などに限られ、予算額も約7億円の内数であり、「あまりに少ない」と追及。
環境省は「鳥類や他の種も含めて幅広い調査を実施するために、必要な予算・体制を確保していきたい」と答えました。
私は、政府の生物多様性国家戦略で「知見が十分でないことを理由に先送りせず予防的な対策を講じる」「モニタリング等を通じて得た科学的知見に基づいて事業を継続的に見直す」取組を基本的な考えと示していることを確認し、環境保全に万全を期すよう求めました。
「議事録」
第213回通常国会 令和6年5月24日(金曜日) 内閣委員会 第16号
○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
再エネ海域利用法について質問をいたします。
海の憲法とも呼ばれる国連海洋法条約は、海洋生物資源の保存並びに海洋環境の研究、保護及び保全の促進を目標に掲げ、いずれの国も、海洋環境を保護し及び保全する義務を有すると宣言をしております。領海か排他的経済水域かを問わず、海洋環境を保護することが国家の義務であることを確認したものであります。
そこでお尋ねしますが、従来の事業者の環境アセスと、今回の法改正に伴う環境省によるアセスの一部の肩代わりとの違いは何なのか。環境省が調査方法書を作成し現地調査を行うということですが、環境保全の観点から、これまでと比べてどのような改善が図られるのか、この点についてお答えください。
○堀上政府参考人 お答えいたします。
本法案におきまして、洋上風力発電事業に係る区域の指定に当たって、海洋環境の保全の観点から、環境大臣が調査等を行うとともに、事業者が行う環境影響評価法に基づく手続のうち、これに相当するものを適用除外とすることとしております。
洋上風力発電による環境影響は風車の立地場所によるところが大きいということで、国が区域を指定する際に適切に環境に配慮した場所を選定することが重要である、このことから、事前の環境調査規定を設けることによりましてこれが可能となるということでございます。
○塩川委員 洋上風力発電の導入が進んでいるオランダ、デンマークでは、海域選定プロセスや環境アセスにおいて国が主体的な役割を果たす仕組みとなっていると聞いておりますが、どのような仕組みなのかについて説明をしてください。
○堀上政府参考人 お答えいたします。
洋上風力発電の実績が多いデンマークそれからオランダでは、初期段階から政府が主導的に関与する、いわゆるセントラル方式が導入されております。政府によって、事業実施区域の選定や、区域選定に当たっての主な環境影響の評価が行われていると承知をしております。
本法案においては、こうした諸外国の状況も参考に、区域指定前に国が海洋環境調査を実施するということとしております。
○塩川委員 欧州諸国も、国が調査を行う仕組みをつくり、知見を蓄積してきたということですので、日本においても、そういった知見の蓄積を国が行うということで、蓄積をしていく、そのことが可能となるということでよろしいですか。
○堀上政府参考人 お答えいたします。
環境省自らが調査を行っていくということで、国外の例を倣いながらということで、事業での環境影響に係る知見を集積していくということによって、その知見を活用し、事業全体における環境負荷の低減、あるいは今後の事業に係る地域の理解の促進を図っていく、そういうことに活用できるというふうに考えてございます。
〔委員長退席、中山委員長代理着席〕
○塩川委員 洋上風力発電環境アセス技術ガイドに対するパブコメへの回答を見ますと、環境への影響について、海底の送電ケーブルにより生じる電磁界の影響ですとか、コウモリ、鳥類、魚類その他遊泳動物への影響、個体群に対する累積的影響及び広域的影響について、科学的知見が少ないことから、引き続き知見の収集に取り組むとしております。
これまでの科学的知見がない中で、環境省は、洋上風力発電による環境への影響を調査、把握をし、環境を保全する役割というのを果たしていけるのか、この点についてお答えください。
○堀上政府参考人 委員御指摘のとおり、洋上風力発電につきまして、科学的知見が乏しいというところはございます。これは、陸上風力発電事業に比べて稼働実績が少ないということなどで、現時点では、実際の環境影響に係る科学的知見が十分には蓄積されていないという状況にございます。区域の指定に際して環境省が行う調査等を通じて、この知見の集積を図ることが重要と考えてございます。
その上で、国と事業者の適切な役割分担の下に行う運転開始後のモニタリングにおきまして、実際の環境影響に関する情報を収集し、後続のその他の事業における環境影響の適切な予測、評価、あるいは効果的な環境配慮の確保につなげてまいりたいと考えてございます。
なお、モニタリングの結果、仮に重大な環境影響が確認された場合には、事業者において追加的な環境保全措置を検討することが必要ということで考えております。
このような取組を通じて、洋上風力発電事業に係る環境配慮を確保してまいりたいと考えてございます。
○塩川委員 モニタリングの話も出ました。モニタリングの結果において問題があれば、追加的な措置を求めていくということであります。
生物多様性国家戦略では、施策の実施に当たっては、長期的な視点に立ち、生物多様性が持つ複雑性、不確実性等を踏まえ、科学的な知識と予防的、順応的な取組が重要としております。この内容がどのような内容なのかについて御説明ください。
○堀上政府参考人 お答えいたします。
生物多様性国家戦略におきまして、どのような内容で書かれているかということでございます。
これにつきましては、科学的な認識と予防的、順応的な取組というのを、戦略の実施に向けた基本的な考え方の一つとして国家戦略の中で位置づけてございます。
この国家戦略の中において、予防的な取組につきましては、不確実性を伴うことをもって対策等を先送りするのではなく、科学的知見の充実に努めつつ、予防的な対策を講じるという考え方を記載をしております。
また、順応的な取組につきましては、新たに集積した科学的知見や、施策の実施状況のモニタリング結果に基づいて、必要な施策の追加、変更や施策の中止等の見直しを継続して行っていくという考え方、これを記載しているというところでございます。
○塩川委員 予防的な取組方法また順応的な取組方法、この点についてが指摘をされているということであります。
パブコメへの政府の回答では、モニタリング等を通じて知見を収集していくと述べているわけですが、先ほど述べたような考え方、取組方法に基づいて、パブコメで指摘があった多様な生物への影響について、モニタリングを実施していくことになるんでしょうか。
○堀上政府参考人 お答えいたします。
一般的に、環境影響評価におきましては、モニタリングにつきましては、環境影響評価の結果、その事業がどのようになっていくのか、そこをモニタリングするということですので、予測、評価の中で実際に評価している内容についてモニタリングをする、その中には生物のことについても含まれていくというふうに考えてございます。
○塩川委員 具体的なモニタリングの対象ですとか、そういったことについての考え方などはあるんでしょうか。
○堀上政府参考人 お答えいたします。
洋上風力は、知見がこれまで余りないということを申し上げました。そういう意味で、今後、モニタリングの内容については、環境省が、海外の先行事例を含めた最新の科学的知見を収集しながら、関係省庁と共同してガイドラインを作成することとしております。これに沿った形でモニタリングを実施していくということにしております。
○塩川委員 その際に、どのような生物種を対象、念頭としているのかについて示してもらえますか。
○堀上政府参考人 お答えいたします。
一般的なことになりますけれども、特に領海については、渡り鳥あるいは海鳥について、洋上では特に重要な種類となると思います。また、海生生物の中にも貴重な種類というものもございます。そういったものを調査、評価する中で、モニタリングが必要なものが出てくるということでございます。
また、EEZにおきましても、特に鳥、渡り鳥あるいは海鳥というものが重要な種類になっていきますので、そこについては、調査、予測、評価の中で出てきたことについてまたモニタリングをしていくということになろうかと思います。
○塩川委員 EEZなどにおいても、渡り鳥、海鳥、鳥類だけではなくて、海洋生物もやはり視野に入れてということが求められると思うんですが、その点はどうでしょうか。
〔中山委員長代理退席、委員長着席〕
○堀上政府参考人 先ほど来お話をしておりますけれども、EEZにおきましては、まだ知見が十分でないということでございます。この辺り、海外の知見も収集しながらになりますけれども、特に今懸念されておりますのは海鳥、渡り鳥ということでありまして、海生生物の中で特に重要な種類がいるかどうか、今後の情報収集の中で整理をしていくことになるかと思います。
○塩川委員 知見がないというEEZにおける募集区域においては環境省が文献調査を行うということですけれども、こういった知見がないものについては、文献調査にとどまらず、新たな調査も行うということでよろしいんでしょうか。
○堀上政府参考人 特に海鳥について懸念をしているところでございますが、知見がない中でどうしていくかということでございます。
これにつきましては、今年度、予算事業において、レーダーによる鳥類調査の技術的手法の実証等を行っていくということにしております。そういった中で知見を収集して、今後に活用していきたいというふうに考えてございます。
○塩川委員 レーダーによる鳥類調査の話がありましたが、環境省の予算事業は、環境調査の実施として挙げられているのは、航空機を用いた海域調査やレーダーによる鳥類調査などに限られており、予算額も約七億円の内数ということでは余りにも少な過ぎるのではないのかと思いますが、そうは思いませんか。
○堀上政府参考人 今年度の予算ということで、今委員御指摘のとおりでございます。
本法案が成立し施行された際には、環境省が、海洋環境保全の観点から、さらに、鳥類のほかも含めて幅広い項目について調査を実施することになりますけれども、実際に調査を行う対象海域の特性に応じて適切な調査手法を検討の上、それに必要な体制、予算をしっかり確保できるように努めていきたいと考えてございます。
○塩川委員 必要な体制、予算の確保に努めていただきたいということです。
EEZの募集区域の検討に当たっては、経産省が区域候補の検討を行う段階から環境省が関与する仕組みとすべきではないかと考えますが、その点はどうでしょうか。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
本法案に基づきまして、募集区域を指定しようとするとき、候補海域におきまして、経産大臣は風況や海底地盤等に関する調査を行いますが、環境大臣が海洋環境に関する調査を行うこととしておりまして、環境省が当初から関与する仕組みを法定化しております。
この中で、洋上風力の案件形成を迅速に進めていくためには、両省の連携の下で、それぞれの調査を円滑に行うことが重要となります。
このため、募集区域の候補について検討する段階から密に情報交換を行うなど、引き続き、環境省を始めとする関係省庁と密接に連携してまいりたいと考えてございます。
○塩川委員 そうしますと、環境省の環境保全の調査を踏まえて、経産省の事業可能性調査に基づく区域指定を変更するというのはあり得るということでよろしいですか。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
そうした可能性も排除されないと考えております。
○塩川委員 大臣にお尋ねいたします。
自民党の秋本真利衆議院議員の贈収賄事件もあったように、洋上風力発電は投資の規模も大きい、企業の利益追求が前面に出て、開発が優先をされ、環境保全が軽視される懸念もあります。環境や生物多様性への影響がある場合には、科学的な認識と予防的、順応的な取組の考え方に基づき、事業を見直すということでよろしいでしょうか。
○松村国務大臣 お答え申し上げます。
本法案におきましては、環境省が事前に海洋環境調査を実施することによりまして、あらかじめ適切な環境配慮をした上で促進区域等を指定することといたしております。
また、事業者におきましても、環境影響評価法に基づきまして、具体的な事業計画について環境影響評価を行い、それに対して環境大臣も必要な意見を述べることで、最大限予防的な対策を講じていくこととしておるところでございます。
その上で、洋上風力発電事業におきましては、環境影響に関する知見が御指摘のように十分集積されているとは言えないため、実際の環境影響をモニタリングをいたしまして、重大な環境影響が判明した場合においては、事業者が、順応的な取組の考え方に基づきまして、追加的な環境保全措置を検討することが重要であると思っております。
これらの取組を通じまして、洋上風力発電事業の環境影響に関する知見を集積するとともに、事業における適正な環境配慮を確保してまいりたいと考えております。
○塩川委員 是非、順応的な取組ということで、追加的な措置を行っていく、環境保全のために万全を期すという取組につながるような対応を求めるものであります。
募集区域に係る、協議会に参加をする漁業関係者の範囲はどのように決めるんでしょうか。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
法定協議会の構成員となる具体的な漁業関係団体等につきましては、当該協議会の設置前までに、水産庁への確認を踏まえて、しっかりと特定していきたいというふうに考えてございます。
○塩川委員 水産庁と相談しながらということです。
全国組織の漁業関係団体にお話をお聞きしたところ、区域指定や事業計画について、関係する都道府県に対する情報提供を徹底してほしい、EEZ内では幅広い都道府県から漁師が来て漁を行っている、例えば千葉沖の海であっても青森から漁に来るなどということがある、沖合での漁は大臣許可となっているので、関係する県の範囲については水産庁が把握しているはずということでした。
このような関係する都道府県に対する情報提供はどのように行っていくんでしょうか。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
漁業との共生は大前提だと考えておりまして、経産大臣が募集区域の指定に向けてあらかじめ区域の状況を調査する、その調査に際しては、水産庁を通じまして、関係する都道府県の水産部局でありますとか漁業関係の全国団体にもアプローチし相談しつつ進めていくということとしておりまして、こうしたプロセスなどを通じて必要な情報を的確に提供していきたいというふうに考えております。
○塩川委員 最後に、大臣にお尋ねいたします。
現行法に基づく促進区域での洋上風力は、海岸のすぐ近くに計画される事例が多いわけであります。こうした計画に対して、北海道や東北地方を始め各地で、地域住民の方から、健康被害や景観問題などを引き起こすとして反対運動も起きております。
現行法では、促進区域の指定に関する合意形成の場である法定協議会に住民の参加が保障されておらず、地域住民の合意がないままに計画が進められている実態があります。例えば、署名運動を行う団体の代表の方から意見を聞くとか、署名の内容について協議会で議論をするといった、住民の声を反映をする、そういった改善策を図るべきではないのかと考えますが、大臣、お答えください。
○松村国務大臣 現行法におきましては、法定協議会の構成員といたしまして都道府県知事及び市町村長が規定をされておりまして、それぞれ、地域を代表して協議会において御発言いただいているものと承知をいたしております。また、その際、地域の中でどのように意見集約を行うかは、地方自治体の観点から、自治体の運営に委ねられていると考えております。
その上で、地域代表である知事及び市町村長の意見も含めまして、協議会で協議が調った事項につきましては、協議会意見取りまとめという文書を作成をいたしまして、公募に参加する事業者はこの内容を踏まえた事業計画を作成することが求められているところでございます。
また、地域によりましては、法定協議会のみならず、自治体が任意の検討会等を開催をしていただきまして、地域住民の方々の御意見をしっかりとお聞きし、拾い上げ、その御意見を踏まえまして協議会において発言することで、地域住民の意見を取りまとめに反映させている例もございます。例えば、秋田市におきましては秋田市の方が主催をしていただいておりますし、山形県においては山形県が主催をなさいまして、研究・検討会議、こうしたものが開かれております。
こうした例も参考にいたしまして、各自治体と緊密に連携しつつ、協議会の進め方について改善を図ってまいりたいと考えております。
○塩川委員 制度的に地域住民の声がきちっと反映される仕組みが担保されていない、自治体独自でやっていますけれども、それの様々な問題点も指摘をされているところでありますので、地域住民の声をしっかりと反映をする、そういった計画、運営の在り方を整えていく、このことを強く求めて、質問を終わります。