【「しんぶん赤旗」掲載】追いつめられる自民/ 規正法改定で公明・維新「助け舟」

「しんぶん赤旗」6月5日・3面より

 自民党の裏金事件を受けた政治資金規正法の改定をめぐって、自民党が厳しい批判を受け追い込まれています。自民党は同法改定案を出したものの、公明・維新との合意を受けた修正案をめぐって二転三転。4日に予定していた衆院政治改革特別委員会の採決も、直前に見送らざるを得なくなるなど迷走しています。

企業献金「公開」にすり替え

 裏金事件の真相解明に背を向けてきた自民党が最初に提示した改定案は「政治改革の名に値しないもの」(5月10日、日本共産党の山添拓政策委員長)でした。金権腐敗政治の温床である企業・団体献金の全面禁止にも、「ブラックボックス」と批判されている政策活動費の廃止にも触れておらず、世論調査でも約7割が「評価しない」と回答。今国会での自民案の成立は完全に暗礁に乗り上げていました。

 この事態を受けて、自民党に「助け舟」をだしたのが公明党です。公明党はパーティー券の購入金額の公開基準の引き下げを言いますが、詳細は先送りすることで自民案に大筋合意を表明(5月9日)。「同じ穴のむじな」だとの批判が殺到すると、突然、「そのまま賛同できない」(同30日、山口那津男代表)と主張し始めました。

 しかし、公明党が問題視したのは政治資金パーティー券購入者の公開基準を自民案の「10万円超」から「5万円超」に下げろというだけでした。事実上の企業・団体献金である企業のパー券購入の存続をはかるもの。企業・団体献金の“抜け穴”を放置したまま「公開基準」に論点をすり替えることで自民党を支えた格好です。

 さらに、自民党の「助け舟」になったのが日本維新の会です。

 維新は自民案について「絶望的にお粗末な案」(5月23日、青柳仁士議員)と酷評し、「サイドメニューばかり」「メインディッシュは企業・団体献金だ」と主張。ところが、修正案では企業・団体献金の禁止にまったく触れておらず、腰砕けです。

 また、維新は日本共産党や立憲民主党、国民民主党とともに(1)企業・団体献金を禁止する(2)政策活動費を廃止する(3)会計責任者と同等の責任を政治家に負わせる―3点を求めることで一致していました。ところが、修正では企業・団体献金の禁止はおろか、政策活動費の廃止も、政治家の責任への言及もありません。

 維新は「100%わが党の考え方が通った」(5月31日、馬場伸幸代表)「自信をもって賛成したい」(6月4日、遠藤敬国対委員長)と述べますが、結局、苦境の自民党を助けるだけです。

 肝心の企業・団体献金の禁止にはまったく触れず、政策活動費の存続を前提にした修正では、国民の求める根本的な解決にはなりません。悪法をゴリ押しする自民、公明、維新の一体ぶりは明らかです。

政策活動費 抜け穴だらけ

 自民案は、政党の「機密費」ともいうべき政策活動費を廃止どころか合法化するものです。自民と維新が合意した修正案に盛り込まれた「政策活動費の10年後の公開」も具体的な内容が何も定まっていないことが発覚。「ブラックボックス」を温存する抜け穴だらけの改悪案です。

 政策活動費とは規正法に規定されたものではなく、政党が党幹部などに渡す“つかみ金”です。自民案では政策活動費を「政党から個人への支出」と規定。これまで法令上の定めがなかった政策活動費を初めて法定化し、事実上“合法化”しています。

 政策活動費が党幹部など議員個人に渡った後、どう使われるかは「ブラックボックス」となっていますが、政党からの支出は政治家を経由せずに行い、政治資金収支報告書に支出の項目や金額を記載すれば透明化は図れます。自民案はこれに逆行し、政治家経由の「迂回(うかい)支出」を容認するものになっています。

 自民案は維新の要求を反映させ、政策活動費は、収支報告書の公表から10年後に領収書など「支出の状況」を公開するとしています。一方で、制度の具体的な内容は「早期に検討し、結論を得る」と曖昧で、領収書の公開方法や年間支出の上限金額も未定のままです。

 そもそも、政治資金の流れを公開する意味は直ちにチェックを受けるためにあるはずです。また、収支報告書の保存期間は3年、虚偽記載や不記載の罪に問われる公訴時効は5年であり、10年後の公開にどれほどの意味があるのかも不明です。

 3日の衆院政治改革特別委員会では、私が「(10年後の公開時に)領収書、明細書を付けないこともあり得るのか」とただすと、自民案提出者の鈴木馨祐議員は「運用については各党間の協議による」と否定せず。立憲民主党の山岸一生議員は「領収書の黒塗りを認めることはあり得るのか」と質問しましたが、鈴木氏は「プライバシーや営業秘密とのバランスは考慮されないといけない」と含みを持たせました。

 上限金額については、私が、維新の提示した「政党交付金の1%または5千万円の少ない額」などが自民案には入っていないと指摘。鈴木氏は「政党によって活動規模がまちまち」などと政党によって上限金額が異なる可能性も示しました。

透明性の向上どころか後退

 しかも、自民案は「透明性の向上」どころか、収支の公開をさらに後退させる重大な改悪を含んでいます。

 自民案は、官報や都道府県公報への政治資金収支報告書の要旨の作成・公表義務を削除しています。要旨には、寄付者の氏名や寄付額、項目ごとの収入額や支出額など収支報告書の根幹部分が記載されています。

 インターネットなどで公開される収支報告書そのものは3年で見られなくなるため、要旨を削除すれば過去にさかのぼっての確認ができなくなってしまいます。

 私は、3日の委員会で「透明性の向上どころか後退だ」と迫りましたが、自民党の本田太郎衆院議員は「(行政の)業務負担の増加につながる」などと強弁するだけ。「業務量」を理由に、「政治資金を国民の不断の監視と批判の下に置く」という規正法の趣旨に反する改悪を行うことは許されません。

 また、政治資金に関する独立性が確保された機関の設置についても、政治資金の「透明性の向上」からかけ離れたものになっています。第三者機関の設置について自民案は付則で「必要な措置が講ぜられる」と規定。しかし、その具体的内容は全て検討課題です。

 3日の委員会でも自民党の鈴木氏は「第三者機関の組織あるいは権限の内容はこれから議論される」と述べるだけ。検討の結果、実際に設置されるのかもわかりません。

 裏金づくりを反省するどころか、暴露されないよう、透明性を後退させる法改悪を行う―。私は自民案について「国民による政治資金の監視を妨げる法案だ」と厳しく批判しました。


「議事録」