関東地方の主な米軍・自衛隊施設に関する2025年度概算要求について(2024年10月2日)

 関東地方の主な米軍・自衛隊施設に関する2025年度概算要求の内容が明らかになりました。

いくつかのポイントを記すと

1)以前と比べて概算要求段階での情報開示が後退している。8月末の次年度概算要求額について、これまでは9月初めには要求項目や金額を明らかにしていたのに、今年は1か月以上経ってやっと開示する状況で、それすら従来と比べて不十分な開示となっている。

2)朝霞駐屯地の施設整備費が約182億円。今年度の約30億円に比べて、6倍に増加している。過去10年間の施設整備費の合計額とほぼ同額となっている。防衛省は「施設強靭化の一環」と説明。ただし「隊舎1棟老朽更新、庁隊舎1棟建替」というだけで「概算要求段階では、これ以上の回答は差し控えたい」とのこと。
なお、朝霞駐屯地の主な部隊改編は以下の通り。①情報作戦隊の新編。来年度、認知領域を含む情報戦に確実に対処するため、情報作戦隊を新編(約80人増)(防衛力整備計画P11参照)。②後方支援学校の新編。陸自の後方支援に係る教育及び研究体制を強化するため、武器学校(土浦)・需品学校(松戸)・輸送学校(朝霞)を統合し、後方支援学校を新編(約30人増)。これらの部隊改編に伴い、朝霞駐屯地の定員は約3720人から約3820人に増加。

(防衛省資料)

陸上自衛隊朝霞駐屯地における部隊編成について(クリックでPDFファイルが開きます)

陸上自衛隊木更津駐屯地における部隊編成について(クリックでPDFファイルが開きます)

3)百里基地の施設整備費が約109億円。今年度60億円の1.8倍に。アラート格納庫のえん体化42億円、航空機隠ぺい用施設の整備29億円、分散パッドの整備1億円など。「その他は概算要求段階での回答は差し控えたい」。

4)入間基地の施設整備費が約110億円(今年度約79億円)。災害対処拠点地区(地下連絡道)の整備、局舎建替(地下化含む)の基本設計約4億円、庁舎整備の基本設計等。

 なお、入間基地に所在する電子作戦群は廃止。同群隷下のレーダー評価隊の業務は府中基地の開発評価隊に移管。電子飛行測定隊及び電子作戦隊は入間基地に置き、警戒航空団(浜松)隷下の第二飛行群とする。

 電波情報収集機RC-2の3号機目の取得経費約496億円を計上(1号機は2020年配備、2号機は2028年配備予定)。

詳細は以下の通りです。

1.米軍施設(横田飛行場、所沢通信施設、大和田通信所、厚木海軍飛行場)
横田飛行場提供施設整備 歳出ベース40億5000万円 契約ベース41億4500万円
消防署、倉庫(給油機器)、整備用格納庫(C130)、ユーティリティ(給水・給電・給汽)の老朽更新
厚木海軍飛行場提供施設整備 歳出ベース29億4200万円 契約ベース22億3400万円
汚水排水施設、雨水排水施設、車両工場改築、ユーティリティ(給水)
所沢通信施設及び大和田通信所に関係する経費は要求していない。

 

2.陸自駐屯地(朝霞・大宮・相馬原・新町・吉井・宇都宮・北宇都宮・勝田・土浦・霞ヶ浦・古河・朝日・習志野・木更津)及び空自基地(百里・熊谷・立川・横田・府中・入間)における「施設整備費」
朝霞駐屯地 約182億円
庁舎等建替等。隊舎1棟老朽更新、庁隊舎1棟建替
大宮駐屯地 約6億円
分析施設の整備等。大宮化学学校における特定物質(毒ガス)分析施設の新設工事
相馬原駐屯地 (*)
通信網の整備。光ケーブル埋設
新町駐屯地 (*)
通信網の整備。光ケーブル埋設
吉井分屯地 約1億円
通信網の整備等。光ケーブル埋設
宇都宮駐屯地 (*)
通信網の整備。光ケーブル埋設
北宇都宮駐屯地 約25億円
格納庫の整備等。ヘリ格納庫の建替工事
勝田駐屯地 約1億円
通信網の整備等。光ケーブル埋設
土浦駐屯地 約12億円
習場の整備等。演習で使用する工具等の整備実習のための施設
霞ヶ浦駐屯地 (*)
通信網の整備。光ケーブル埋設
古河駐屯地 (*)
土質調査。基地内の倉庫建替に伴うボーリング調査
朝日分屯地 (*)
通信網の整備。光ケーブル埋設
習志野駐屯地 約18億円
庁舎の整備等。司令部庁舎の老朽更新(継続)
木更津駐屯地 約2億円
格納庫の整備等。CH47ヘリの格納庫整備の調査
百里基地 約109億円
アラート格納庫のえん体化42億円。航空機隠ぺい用施設の整備29億円。分散パッドの整備1億円。「その他は概算要求段階での回答は差し控えたい」。

(防衛省資料)

航空自衛隊百里基地に関する令和7年度概算要求の主要事業について(クリックでPDFファイルが開きます)

熊谷基地 約9億円
ボイラー施設の整備等。老朽更新
横田基地 約1億円
局舎等の改修等。既存施設改修の調査工事
府中基地 約53億円
宇宙航空団の編成に伴う庁舎の新設。隊舎の改修等

(防衛省資料)

航空自衛隊府中基地に関する令和7年度概算要求の主要事業について(クリックでPDFファイルが開きます)

入間基地 約110億円
災害対処拠点地区(地下連絡道)の整備、局舎建替(地下化含む)の基本設計、庁舎整備の基本設計等

(防衛省資料)

航空自衛隊入間基地に関する令和7年度概算要求の主要事業について(クリックでPDFファイルが開きます)

なお、金額欄の(*)は、防衛省が「予定価格が類推されることから提示不可」としたものを指す。

3.陸上総隊隷下の部隊(司令部および司令部付隊、第一空挺団、第一ヘリ団、中央即応連隊、特殊作戦群、中央特殊武器防護隊、対特殊武器衛生隊、国際活動教育隊、中央情報隊、システム通信団、水陸機動団、電子作戦隊)及びその他の主な部隊に係る予算(装備品等)
陸上総隊司令部及び司令部付隊(朝霞)
計上なし
第一空挺団(習志野) 約25億円
13式空挺傘300式、特殊降下傘30式、小銃1千丁、防護服等
第一ヘリ団(木更津) 約8.4億円
航空機用整備装置、工具等
中央即応連隊(宇都宮) 約4.4億円
トラック等車両更新15両
特殊作戦群(習志野) 約7.7億円
「内容は公表できない」
中央特殊武器防護隊(大宮) 約0.0億円
化学剤検知用備品
対特殊武器衛生隊(三宿) 約0.4億円
生物剤対処用機材
国際活動教育隊(駒門) 約0.7億円
トラック5両更新
中央情報隊(朝霞)
計上事業なし
システム通信団(市ヶ谷) 約0.0億円
燃料缶
水陸機動団(相浦) 約50億円
水際地雷原対処装置2式、小銃等
電子作戦隊(朝霞) 約121億円
ネットワーク電子戦システム(NEWS)
大井通信所(ふじみ野市) 約5億4500万円
保全警備システム(監視カメラ)の保守整備1億500万円、施設の整備(電気室)5億4000万円円
防衛医科大学校(所沢) 約339億円
医薬備品の整備等訳34億円、患者に要する医療費約51億円、インフラ等整備費(施設整備)約61億円、学校の機能を維持する経費(維持管理費)約194億円(内、大学内システム更新約100億円)。防衛医学研究センター備品費5500万円。外傷・熱傷・事態対処医療センター備品費約1.8億円(ICUベッド2式等)
航空医学実験隊(入間) 約2億円
今年度末に、航空医学実験隊及び航空安全管理隊を廃止し、これらの機能を統合した航空医学安全研究隊を新編。予算は航空医学安全研究隊の事業を計上。機材、消耗品費、移動費等
航空機動衛生隊(小牧) 約6億円
小牧基地から入間基地に移転するための庁舎建設5.9億円(令和9年度末までに移転の予定)、訓練機材1230万円
警戒航空団第二飛行群(電子飛行測定隊及び電子作戦隊)(入間) 約496億円
電波情報収集機(RC-2)の取得
陸自化学学校(大宮) 340万円
訓練用化学剤207万円、消耗品・図書類16万円、旅費・宿泊費117万円