関東地方の主な米軍・自衛隊施設に関する2025年度概算要求の内容が明らかになりました。
いくつかのポイントを記すと
1)以前と比べて概算要求段階での情報開示が後退している。8月末の次年度概算要求額について、これまでは9月初めには要求項目や金額を明らかにしていたのに、今年は1か月以上経ってやっと開示する状況で、それすら従来と比べて不十分な開示となっている。
2)朝霞駐屯地の施設整備費が約182億円。今年度の約30億円に比べて、6倍に増加している。過去10年間の施設整備費の合計額とほぼ同額となっている。防衛省は「施設強靭化の一環」と説明。ただし「隊舎1棟老朽更新、庁隊舎1棟建替」というだけで「概算要求段階では、これ以上の回答は差し控えたい」とのこと。
なお、朝霞駐屯地の主な部隊改編は以下の通り。①情報作戦隊の新編。来年度、認知領域を含む情報戦に確実に対処するため、情報作戦隊を新編(約80人増)(防衛力整備計画P11参照)。②後方支援学校の新編。陸自の後方支援に係る教育及び研究体制を強化するため、武器学校(土浦)・需品学校(松戸)・輸送学校(朝霞)を統合し、後方支援学校を新編(約30人増)。これらの部隊改編に伴い、朝霞駐屯地の定員は約3720人から約3820人に増加。
(防衛省資料)
3)百里基地の施設整備費が約109億円。今年度60億円の1.8倍に。アラート格納庫のえん体化42億円、航空機隠ぺい用施設の整備29億円、分散パッドの整備1億円など。「その他は概算要求段階での回答は差し控えたい」。
4)入間基地の施設整備費が約110億円(今年度約79億円)。災害対処拠点地区(地下連絡道)の整備、局舎建替(地下化含む)の基本設計約4億円、庁舎整備の基本設計等。
なお、入間基地に所在する電子作戦群は廃止。同群隷下のレーダー評価隊の業務は府中基地の開発評価隊に移管。電子飛行測定隊及び電子作戦隊は入間基地に置き、警戒航空団(浜松)隷下の第二飛行群とする。
電波情報収集機RC-2の3号機目の取得経費約496億円を計上(1号機は2020年配備、2号機は2028年配備予定)。
詳細は以下の通りです。
1.米軍施設(横田飛行場、所沢通信施設、大和田通信所、厚木海軍飛行場) | ||
横田飛行場提供施設整備 | 歳出ベース40億5000万円 | 契約ベース41億4500万円 |
消防署、倉庫(給油機器)、整備用格納庫(C130)、ユーティリティ(給水・給電・給汽)の老朽更新 | ||
厚木海軍飛行場提供施設整備 | 歳出ベース29億4200万円 | 契約ベース22億3400万円 |
汚水排水施設、雨水排水施設、車両工場改築、ユーティリティ(給水) | ||
所沢通信施設及び大和田通信所に関係する経費は要求していない。 |
2.陸自駐屯地(朝霞・大宮・相馬原・新町・吉井・宇都宮・北宇都宮・勝田・土浦・霞ヶ浦・古河・朝日・習志野・木更津)及び空自基地(百里・熊谷・立川・横田・府中・入間)における「施設整備費」 | |
朝霞駐屯地 | 約182億円 |
庁舎等建替等。隊舎1棟老朽更新、庁隊舎1棟建替 | |
大宮駐屯地 | 約6億円 |
分析施設の整備等。大宮化学学校における特定物質(毒ガス)分析施設の新設工事 | |
相馬原駐屯地 | (*) |
通信網の整備。光ケーブル埋設 | |
新町駐屯地 | (*) |
通信網の整備。光ケーブル埋設 | |
吉井分屯地 | 約1億円 |
通信網の整備等。光ケーブル埋設 | |
宇都宮駐屯地 | (*) |
通信網の整備。光ケーブル埋設 | |
北宇都宮駐屯地 | 約25億円 |
格納庫の整備等。ヘリ格納庫の建替工事 | |
勝田駐屯地 | 約1億円 |
通信網の整備等。光ケーブル埋設 | |
土浦駐屯地 | 約12億円 |
習場の整備等。演習で使用する工具等の整備実習のための施設 | |
霞ヶ浦駐屯地 | (*) |
通信網の整備。光ケーブル埋設 | |
古河駐屯地 | (*) |
土質調査。基地内の倉庫建替に伴うボーリング調査 | |
朝日分屯地 | (*) |
通信網の整備。光ケーブル埋設 | |
習志野駐屯地 | 約18億円 |
庁舎の整備等。司令部庁舎の老朽更新(継続) | |
木更津駐屯地 | 約2億円 |
格納庫の整備等。CH47ヘリの格納庫整備の調査 | |
百里基地 | 約109億円 |
アラート格納庫のえん体化42億円。航空機隠ぺい用施設の整備29億円。分散パッドの整備1億円。「その他は概算要求段階での回答は差し控えたい」。 | |
(防衛省資料) |
|
熊谷基地 | 約9億円 |
ボイラー施設の整備等。老朽更新 | |
横田基地 | 約1億円 |
局舎等の改修等。既存施設改修の調査工事 | |
府中基地 | 約53億円 |
宇宙航空団の編成に伴う庁舎の新設。隊舎の改修等 | |
(防衛省資料) |
|
入間基地 | 約110億円 |
災害対処拠点地区(地下連絡道)の整備、局舎建替(地下化含む)の基本設計、庁舎整備の基本設計等 | |
(防衛省資料) |
なお、金額欄の(*)は、防衛省が「予定価格が類推されることから提示不可」としたものを指す。
3.陸上総隊隷下の部隊(司令部および司令部付隊、第一空挺団、第一ヘリ団、中央即応連隊、特殊作戦群、中央特殊武器防護隊、対特殊武器衛生隊、国際活動教育隊、中央情報隊、システム通信団、水陸機動団、電子作戦隊)及びその他の主な部隊に係る予算(装備品等) | |
陸上総隊司令部及び司令部付隊(朝霞) | - |
計上なし | |
第一空挺団(習志野) | 約25億円 |
13式空挺傘300式、特殊降下傘30式、小銃1千丁、防護服等 | |
第一ヘリ団(木更津) | 約8.4億円 |
航空機用整備装置、工具等 | |
中央即応連隊(宇都宮) | 約4.4億円 |
トラック等車両更新15両 | |
特殊作戦群(習志野) | 約7.7億円 |
「内容は公表できない」 | |
中央特殊武器防護隊(大宮) | 約0.0億円 |
化学剤検知用備品 | |
対特殊武器衛生隊(三宿) | 約0.4億円 |
生物剤対処用機材 | |
国際活動教育隊(駒門) | 約0.7億円 |
トラック5両更新 | |
中央情報隊(朝霞) | - |
計上事業なし | |
システム通信団(市ヶ谷) | 約0.0億円 |
燃料缶 | |
水陸機動団(相浦) | 約50億円 |
水際地雷原対処装置2式、小銃等 | |
電子作戦隊(朝霞) | 約121億円 |
ネットワーク電子戦システム(NEWS) | |
大井通信所(ふじみ野市) | 約5億4500万円 |
保全警備システム(監視カメラ)の保守整備1億500万円、施設の整備(電気室)5億4000万円円 | |
防衛医科大学校(所沢) | 約339億円 |
医薬備品の整備等訳34億円、患者に要する医療費約51億円、インフラ等整備費(施設整備)約61億円、学校の機能を維持する経費(維持管理費)約194億円(内、大学内システム更新約100億円)。防衛医学研究センター備品費5500万円。外傷・熱傷・事態対処医療センター備品費約1.8億円(ICUベッド2式等) | |
航空医学実験隊(入間) | 約2億円 |
今年度末に、航空医学実験隊及び航空安全管理隊を廃止し、これらの機能を統合した航空医学安全研究隊を新編。予算は航空医学安全研究隊の事業を計上。機材、消耗品費、移動費等 | |
航空機動衛生隊(小牧) | 約6億円 |
小牧基地から入間基地に移転するための庁舎建設5.9億円(令和9年度末までに移転の予定)、訓練機材1230万円 | |
警戒航空団第二飛行群(電子飛行測定隊及び電子作戦隊)(入間) | 約496億円 |
電波情報収集機(RC-2)の取得 | |
陸自化学学校(大宮) | 340万円 |
訓練用化学剤207万円、消耗品・図書類16万円、旅費・宿泊費117万円 |