【本会議】学術会議”解体”法案、審議入り

 日本学術会議を別組織に作り替え学術会議“解体”法案が、衆議院本会議で審議入りしました。

 私は、この法案が憲法に基づく学術会議の理念を否定し、「学術会議から、独立性・自主性・自律性を奪い、政府の意向に従う組織に変質させる憲法違反の立法」だと批判し、「断固廃案」を主張しました。

 私は、この法案のきっかけとなった菅首相の学術会議会員の任命拒否を、首相による「形式的任命」という「確定した法解釈を覆す」もので「到底許されない」と批判。任命拒否の理由と経緯などを明らかにし、任命拒否の撤回を要求。

 任命拒否問題を学術会議の在り方の問題にすり替える政府に「法案提出の資格はない」と主張しました。

 戦前の学術を政治に従属させ学術側も戦争加担したことの反省の上に、「学問の自由」を保障する憲法を具体化した現行法は、「科学が文化国家の基礎」であり「平和的復興、人類社会の福祉に貢献」を前文で掲げています。

 今回の法案では、この前文を削除しており、私は「憲法に立脚する学術会議の理念を真っ向から否定するもの」だと批判しました。

 私は、この法案が現行法の「独立して職務を行う」という規定を削除し、学術会議の組織・運営を内閣府の所掌事務と位置付けていると指摘。「独立性の担保はどこにあるのか」とただしました。

 坂井学内閣府特命担当大臣は「組織としての説明責任の担保を内容とするもの」などと答弁。

 私は、この法案が、学術会議の運営・財務に政府や外部者が介入できる仕組みや、会員選考に外部の意向を反映可能な仕組みを設けている点を指摘。

 さらに、これまでの会員による選考方法を投げ捨て、会員をリセットしようとしていると批判し、「学術会議の運営・活動における政府からの独立性・自主性・自律性をはく奪するもの」だと主張しました。

 今日の本会議での質疑の中で、日本維新の会の三木圭恵議員が、「日本学術会議が設立された当時、…、日本共産党は、民主主義科学者協会をはじめとする社会主義に同調的な科学者を組織し、学術会議の中心メンバーとして送り込んでいる。『日本共産党の七十年』の本には、同党が日本学術会議の設立に一定の役割を果たしたと誇らしげに書かれている」「学術会議の設立当初には選挙で会員を選定していたが、日本共産党が会員選挙に介入し、大勢の党員学者を立候補させたことで混乱が生じたことから、選挙をやめ、現行の推薦方式に変わった」などと述べました。

 これに対し、私は、「学術会議に対する全く事実無根の誹謗中傷の中で、わが党に対する言及もあった。しかし、わが党は、学術会議に対し、不当な介入・干渉を行った事実は一切ない。わが党の党史には指摘のような記述はない。断固抗議し、撤回を求める」と厳しく批判しました。

以下、私の質問要旨です。

*****
 日本共産党を代表して、日本学術会議法案に対し質問します。

 先程、学術会議に対する全く事実無根の誹謗中傷の中で、わが党に対する言及もありました。しかし、わが党は、学術会議に対し、不当な介入・干渉を行った事実は一切ありません。わが党の党史には指摘のような記述はありません。断固抗議し、撤回を求めるものです。

 まず、任命拒否問題です。2020年10月、学術会議会員の改選にあたり、菅総理が、6名の任命を拒否したことは、学術会議の推薦に基づき内閣総理大臣が形式的に任命するという確定した法解釈を覆すもので、到底許されるものではありません。

 しかも、20年6月、学術会議が候補選考中の段階で、官邸側が学術会議事務局に6人を選考対象から外すよう求めていた文書が明らかになりました。きわめて重大です。

 政府は、任命拒否の理由、事前介入の経緯を、すべて明らかにし、任命拒否を撤回すべきです。

 任命拒否問題を棚上げにしたまま、学術会議の在り方の問題にすり替えた政府に、法案を提出する資格はありません。

 本法案は、現行の日本学術会議を廃止し、別組織に変えようというものです。

 現行法は、戦前の日本が学術を政治に従属させ、学術の側も戦争遂行に加担する役割を果たしたとの痛苦の反省のうえに、「学問の自由」を保障する日本国憲法を具体化したものです。

 現行法の前文は、「科学が文化国家の基礎」であり「平和的復興、人類社会の福祉に貢献」すると学術会議の使命を謳っています。しかし本法案は、この前文を削除して、学術を「経済社会の健全な発展の基礎」「社会課題の解決に寄与」するものと置き換えています。

 本法案は、憲法に立脚する学術会議の理念を真っ向から否定するものではありませんか。

 日本学術会議はナショナルアカデミーです。その組織が満たすべき5つの要件は、①学術的に国を代表する機関としての地位、②そのための公的資格の付与、③国家財政支出による安定した財政基盤、④活動面での政府からの独立、⑤会員選考における自主性・独立性です。

 現行の学術会議は、政府からの独立を保障するルールを厳格に定め、学術の立場から政府の政策に反する提言や勧告も行ってきました。

 法案は、現行法の「独立して職務を行う」を削除し「法人とする」と定め、学術会議の組織・運営に関する事務を内閣府の所掌事務に位置づけています。

 学術会議を、政府の監督の下に置かれる組織へと変えるものではありませんか。独立性の担保はどこにあるのですか。

 さらに、学術会議の運営・財務に、政府や学術会議以外の者が介入できる仕組みを設けています。

 本法案は、外部者で構成される「監事」、「日本学術会議評価委員会」、「運営助言委員会」を新設し、学術会議の「中期的な活動計画」は評価委員会が意見を述べることとしています。

 これらの規定は、学術会議の運営・活動における政府からの独立性・自主性・自律性を剥奪するものではありませんか。

 政府からの独立が確保されなければ、学術会議の勧告権は失われるのではありませんか。

 会員選考においても、法案は、会員以外の者で構成される「選定助言委員会」を設置し、外部の意向が反映可能な仕組みを設けています。

 さらに、新たな組織の設立時、新会員候補者は内閣総理大臣が関与する「候補者選考委員会」が推薦するとし、3年の任期が残っている会員は3年後の再任を認めないとしています。

 これまでの会員自身による選考方法を投げ捨て、会員をリセットしようというものではありませんか。会員選考における自主性・独立性を著しく毀損すると言わざるを得ません。

 今週開かれた日本学術会議の総会は、本法案がナショナルアカデミーの要件を充足しておらず、懸念を払拭していないと厳しく批判しています。このことを重く受け止めるべきです。「カネを出すから従え」という政府などの言い分は、国際的にみても、全く道理がありません。

 本法案は、科学の成果を軍事に利用し、目先の経済的利益追求に貢献させるため、現行法の理念を全面的に否定し、学術会議から、独立性・自主性・自律性を奪い、政府の意向に従う組織へと変質させる憲法違反の立法です。断固廃案を求め質問を終わります。

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学術会議解体法案/衆院で審議入り/組織変質狙う違憲立法/塩川氏 廃案訴え

「しんぶん赤旗」4月19日・1面より

 日本学術会議を別組織につくり変える「学術会議解体法案」が18日、衆院本会議で審議入りしました。日本共産党の塩川鉄也議員は、同法案が憲法に基づく学術会議の理念を否定し、「学術会議から、独立性・自主性・自律性を奪い、政府の意向に従う組織に変質させる憲法違反の立法」だと批判し、「断固廃案」をと主張しました。(関連2・質問要旨4面)

 塩川氏は、同法案策定のきっかけとなった菅義偉首相の学術会議会員の任命拒否は、首相による「形式的任命」という確定した法解釈を覆したもので「到底許されない」と批判。任命拒否の理由と経緯などを明らかにし、撤回するよう要求。任命拒否問題を学術会議のあり方の問題にすり替える政府に「法案提出の資格はない」と主張しました。

 戦前の戦争加担への反省の上に「学問の自由」を保障する憲法を具体化した現行法は前文で「科学は文化の基礎であり」「平和的復興、人類社会の福祉に貢献」を掲げています。塩川氏は、この前文を削除する同法案は「憲法に立脚する学術会議の理念を真っ向から否定するものだ」と批判しました。

 塩川氏は、同法案が現行法の「独立して職務を行う」との規定を削除し、学術会議の組織・運営を内閣府の所掌事務と位置づけるが、「独立性の担保はどこにあるのか」と質問。坂井学内閣府特命担当相は「組織としての説明責任の担保を内容とするもの」だなどと答弁しました。

 塩川氏は、同法案が学術会議の運営・財務に政府や外部者が介入できる仕組みや、会員選考に外部の意向を反映することが可能な仕組みを設け、これまでの会員をリセットしようとしており、「学術会議の運営・活動における政府からの独立性・自主性・自律性を剥奪するものだ」と批判しました。


維新が学術会議攻撃/衆院本会議/解体法案質疑で/反共・軍拡の突撃隊の恥ずべき本性、自ら明らかに/抗議・撤回を

「しんぶん赤旗」4月19日・2面より

 維新の会の三木圭恵議員が18日の衆院本会議での日本学術会議解体法案についての質疑で、「日本学術会議が設立された当時、日本共産党が社会主義に同調的な科学者を組織し、学術会議の中心メンバーとして送り込んでいた。『日本共産党の70年』の本には同党が『日本学術会議の設立に一定の役割をはたした』と書かれている」「日本共産党が会員選挙に介入し大勢の党員学者を立候補させた。混乱が生じたことから選挙をやめ、現行の推薦方式に変わった」などとのべました。

 その直後に質疑に立った日本共産党の塩川鉄也議員は、三木氏の発言について、「日本学術会議への事実無根の誹謗(ひぼう)中傷のなかで、(三木議員は)日本共産党に言及したが、わが党が学術会議に不当に介入、干渉したという事実は全くない。わが党の党史には指摘のような記述はない。強く抗議し、撤回を求める」と厳しく批判しました。全く当然です。維新の会の質疑は、この党が反共・軍拡の突撃隊であることを自ら明らかにするものとなりました。

悪質な歪曲

 塩川議員が批判したように、『日本共産党の70年』は、「民科(民主主義科学者協会)は…学術会議の設立に一定の役割をはたした」との記述がありますが、三木氏の発言は、この部分の「民科」を「日本共産党」と読み替えた、悪質な歪曲(わいきょく)です。

 設立当時の学術会議は会員公選制をとり、科学者による直接選挙で会員を選んでいました。それぞれの候補者の思想・信条も公表したうえで、有権者である科学者の投票に委ねられていました。立候補した学者が社会主義にどういう態度をとるかは、その学者の学識に関わるものです。日本共産党が学術会議に不当に介入、干渉していたかのように描くことは、まったく事実の歪曲です。

 会員の公選制から推薦にもとづく首相の任命制に変更した1983年の法改正も、「学術研究の細分化・専門化などの進歩発展に対応し、日本学術会議の目的をはたすため」(法案の趣旨説明)に行われたのです。共産党員学者が立候補していたことで混乱が起きたという事実はどこにもなく、それが法改正の理由でもありません。

ネタ元は統一協会

 こうした学術会議攻撃は、もともと国際勝共連合=統一協会の常とう句です。「世界日報」の2022年7月29日付「社説」でも「日本学術会議 共産党の影響力を排除せよ」とし、「日本学術会議には当初から日本共産党が浸透していた」「現在も210人の会員のうち党員や支持者が7割を占める」などと中傷しています。三木氏の攻撃は、いわば勝共連合の主張をおうむ返しに唱えているだけです。

 こうした反共デマ攻撃の一方で三木氏は、日本学術会議は1950年に戦争を目的とする科学の研究には絶対に従わない決意の表明を、67年に軍事目的の科学研究を行わない声明を、そして2017年には軍事的安全保障に関する声明を発表したとして、「わが国の防衛に関する研究を拒否し続けている」と非難。「戦争を防止し、平和を維持するためにも、他国からの侵略を抑止するための防衛技術の研究開発を進めていく必要がある」として「かたくなな軍学共同反対のスローガンを改め、科学者がわが国の防衛や平和の維持に寄与できるようにしていただきたい」と述べました。

 反共を声高に、学問の軍事利用のために学術会議を解体する狙いをあけすけに語るもので、「戦争する国」づくりの突撃隊の恥ずべき本性を示すものとなりました。


衆院本会議・学術会議解体法案/塩川議員の質問(要旨)

「しんぶん赤旗」4月19日・4面より

 日本共産党の塩川鉄也議員が18日の衆院本会議で行った学術会議解体法案についての質問の要旨は次の通りです。

 2020年10月、菅首相が6名の学術会議会員任命を拒否したのは、学術会議の推薦に基づき首相が形式的に任命するという確定した法解釈を覆すもので、到底許されません。しかも、同年6月、学術会議が候補選考中の段階で、官邸側が学術会議事務局に6人を選考対象から外すよう求めていた文書が明らかになりました。政府は任命拒否の理由、事前介入の経緯をすべて明らかにし、任命拒否を撤回すべきです。

 任命拒否問題を棚上げにしたまま、学術会議の在り方の問題にすり替えた政府に、法案を提出の資格はありません。

 現行法は戦前の日本が学術を政治に従属させ、学術の側も戦争遂行に加担する役割を果たした痛苦の反省の上に、「学問の自由」を保障する日本国憲法を具体化したものです。

 現行法の前文は「科学が文化国家の基礎」であり「平和的復興、人類社会の福祉に貢献」すると学術会議の使命をうたっていますが、本法案はこの前文を削除し、学術を「経済社会の健全な発展の基礎」「社会課題の解決に寄与」するものと置き換えています。

 本法案は憲法に立脚する学術会議の理念を真っ向から否定するものではありませんか。

 学術会議は政府からの独立を保障するルールを厳格に定め、学術の立場から政府の政策に反する提言や勧告も行ってきました。

 法案は、現行法の「独立して職務を行う」を削除し「法人とする」と定め、学術会議の組織・運営に関する事務を内閣府の所掌事務に位置づけています。学術会議を政府の監督の下に置かれる組織へと変えるものではありませんか。

 さらに、学術会議の運営・財務に、政府や学術会議以外の者が介入できる仕組みを設けています。

 本法案は外部者で構成される「監事」、「日本学術会議評価委員会」、「運営助言委員会」を新設し、学術会議の「中期的な活動計画」に評価委員会が意見を述べることとしています。これらの規定は、学術会議の運営・活動における政府からの独立性・自主性・自律性を剥奪するものではありませんか。政府からの独立が確保されなければ、学術会議の勧告権は失われるのではありませんか。

 会員選考でも、法案は会員以外の者で構成される「選定助言委員会」を設置し、外部の意向が反映可能な仕組みを設けています。さらに、新たな組織の設立時の特別な仕組みを設けており、これまでの会員による選考方法を投げ捨て、会員をリセットするもの。会員選考での自主性・独立性を著しく毀損(きそん)すると言わざるを得ません。

 科学の成果を軍事に利用し、目先の経済的利益追求に貢献させるため、現行法の理念を全面的に否定し、学術会議から独立性・自主性・自律性を奪い、政府の意向に従う組織へと変質させる憲法違反の立法です。断固廃案を求めます。


「議事録」

第217回通常国会 令和7年4月18日(金曜日)本会議 第22号

○塩川鉄也君 私は、日本共産党を代表して、日本学術会議法案について質問します。(拍手)

 先ほど、学術会議に対する全く事実無根の誹謗中傷の中で、我が党に対する言及がありました。しかし、我が党は、学術会議に対し、不当な介入、干渉を行った事実は一切ありません。我が党の党史には指摘のような記述はありません。断固抗議し、撤回を求めるものであります。

 その上で、まず、任命拒否問題です。

 二〇二〇年十月、学術会議会員の改選に当たり、菅総理が六名の任命を拒否したことは、学術会議の推薦に基づき内閣総理大臣が形式的に任命するという確定した法解釈を覆すもので、到底許されるものではありません。

 しかも、二〇年六月、学術会議が候補選考中の段階で、官邸側が学術会議事務局に六人を選考対象から外すよう求めていた文書が明らかになりました。極めて重大です。

 政府は、任命拒否の理由、事前介入の経緯を全て明らかにし、任命拒否を撤回すべきであります。任命拒否問題を棚上げにしたまま、学術会議の在り方の問題にすり替えた政府に、法案を提出する資格はありません。

 本法案は、現行の日本学術会議を廃止し、別組織に変えようというものです。

 現行法は、戦前の日本が学術を政治に従属させ、学術の側も戦争遂行に加担する役割を果たしたとの痛苦の反省の上に、学問の自由を保障する日本国憲法を具体化したものです。現行法の前文は、科学が文化国家の基礎であり、平和的復興、人類社会の福祉に貢献すると学術会議の使命をうたっています。しかし、本法案は、この前文を削除して、学術を経済社会の健全な発展の基礎、社会課題の解決に寄与するものと置き換えています。

 本法案は、憲法に立脚する学術会議の理念を真っ向から否定するものではありませんか。

 日本学術会議はナショナルアカデミーです。その組織が満たすべき五つの要件は、学術的に国を代表する機関としての地位、そのための公的資格の付与、国家財政支出による安定した財政基盤、活動面での政府からの独立、会員選考における自主性、独立性です。

 現行の学術会議は、政府からの独立を保障するルールを厳格に定め、学術の立場から政府の政策に反する提言や勧告も行ってきました。法案は、現行法の独立して職務を行うを削除し、法人とすると定め、学術会議の組織、運営に関する事務を内閣府の所掌事務に位置づけています。

 学術会議を政府の監督の下に置かれる組織へと変えるものではありませんか。独立性の担保はどこにあるのですか。

 さらに、学術会議の運営、財務に、政府や学術会議以外の者が介入できる仕組みを設けています。本法案は、外部者で構成される監事、日本学術会議評価委員会、運営助言委員会を新設し、学術会議の中期的な活動計画は評価委員会が意見を述べることとしています。

 これらの規定は、学術会議の運営、活動における政府からの独立性、自主性、自律性を剥奪するものではありませんか。政府からの独立が確保されなければ、学術会議の勧告権は失われるのではありませんか。

 会員選考においても、法案は、会員以外の者で構成される選定助言委員会を設置し、外部の意向が反映可能な仕組みを設けています。さらに、新たな組織の設立時、新会員候補者は、内閣総理大臣が関与する候補者選考委員会が推薦するとし、三年の任期が残っている会員は三年後の再任を認めないとしています。

 これまでの会員自身による選考方法を投げ捨て、会員をリセットしようというものではありませんか。会員選考における自主性、独立性を著しく毀損すると言わざるを得ません。

 今週開かれた日本学術会議の総会は、本法案がナショナルアカデミーの要件を充足しておらず、懸念を払拭していないと厳しく批判しています。このことを重く受け止めるべきです。金を出すから従えという政府などの言い分は、国際的に見ても、全く道理がありません。

 本法案は、科学の成果を軍事に利用し、目先の経済的利益追求に貢献させるため、現行法の理念を全面的に否定し、学術会議から独立性、自主性、自律性を奪い、政府の意向に従う組織へと変質させる憲法違反の立法です。

 断固廃案を求め、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣林芳正君登壇〕

○国務大臣(林芳正君) 塩川鉄也議員にお答えをいたします。

 二〇二〇年の日本学術会議の会員任命についてお尋ねがありました。

 二〇二〇年の日本学術会議の会員任命については、日本学術会議法に沿って、任命権者である当時の内閣総理大臣が総合的、俯瞰的な活動を確保する観点から判断を行ったものと承知をしております。

 その上で、当時の内閣総理大臣や官房長官が国会で答弁しているとおり、日本学術会議から推薦名簿を提出する前に、事務局を介して学術会議の会長と任命権者との間で意見交換が行われていましたが、二〇二〇年の任命に当たっても、これまでと同様に、推薦名簿が提出される前に意見交換が日本学術会議の会長との間で行われたものの、その中で任命の考え方のすり合わせまで至らなかったものと承知をしております。

 なお、二〇二〇年の会員任命については、一連の手続は終了しているものと承知をしております。

 次に、法案提出についてお尋ねがありました。

 この法案は、我が国の研究力の向上や国際競争力の強化などの観点から、学術会議の機能強化が先延ばしできない喫緊の課題となっている中、学術会議の機能強化に向けて独立性、自律性を抜本的に高めるため、よりよい役割、機能の発揮にふさわしい組織形態として学術会議を法人化するため提出したものです。(拍手)

    〔国務大臣坂井学君登壇〕

○国務大臣(坂井学君) 学術会議の理念についてお尋ねがありました。

 戦後間もなくの立法例を除けば、いわゆる基本法のほかは特に補償等を行う場合を除き前文は置かれていません。組織法である日本学術会議法案においても、基本理念は条文の形で規定をしております。

 法案における日本学術会議の目的及び基本理念は、日本学術会議の拡大、深化する使命、目的を現代の視点から捉え直し、法制的な観点も踏まえつつ、より恒久的、普遍的な用語を用いるという考えの下、科学が文化国家の基礎、我が国の平和的復興を包含する、学術に関する知見が人類共有の知的資源、経済社会の健全な発展という表現を用いています。

 その上で、有識者懇談会の報告書では、学術会議には拡大、深化する役割に実効的に対応していくことが求められており、国の機関のままの改革では限界があることから、機能強化に向けて独立性、自律性を抜本的に高めるため、よりよい役割、機能の発揮にふさわしい組織形態として学術会議を法人化することが提言されています。

 学術会議が拡大、深化するアカデミーの役割にふさわしい組織にステップアップし、海外アカデミーのような活動しやすい体制を整えていくことが法人化の目的であり、学術会議の継続性が失われるということにはなりません。

 独立性の担保についてお尋ねがありました。

 この法案は、有識者懇談会の最終報告書を踏まえ、学術会議の独立性、自律性を抜本的に高めることによる機能強化と、国が設立し国の財政的支援を受けて運営される組織としての説明責任の担保を内容とするものであり、学術会議の独立性、自主的、自律的な活動を阻害するようなものではありません。

 現行法では、行政機関である学術会議が、関係省庁との調整等により自由な意思表出等ができなくなることを避けるため、独立して職務を行うと規定されておりますが、法人化により、学術会議の独立性は組織面でも明確になり、海外アカデミーと同様に、政府とは完全に別な立場で活動できるようになります。

 なお、国の責務として、日本学術会議の自主性、自律性に常に配慮しなければならない旨も条文に明記しているところです。

 法案で置かれる組織が学術会議の運営、活動に与える影響についてお尋ねがありました。

 この法案は、有識者懇談会の報告書を踏まえ、学術会議の機能強化に向けて独立性、自律性を抜本的に高めるため、よりよい役割、機能の発揮にふさわしい組織形態として特殊法人に移行するものです。

 一方、国が設立し国の財政的支援を受けて運営される法人である学術会議について、活動、運営を国民に説明する仕組み、活動、運営が適正、適法に行われるための仕組みなどを法定して制度的に担保することは、国が設立する他の法人でも同様に設けられている仕組みであり、活動の学術的な価値や独立性の尊重とは別な、財政民主主義からの要請によるものでございます。

 この法案については、懇談会からも、国民からの負託に実効的に応えるための体制整備と国の財政的負担により運営される法人としての説明責任の担保が、学術会議の独立性、自律性を尊重しつつ実現されたものであり、最終報告書に沿って適切に法案化されたものだと評価していただいたところです。

 勧告権についてお尋ねがありました。

 この法案は、有識者懇談会の最終報告書を踏まえ、学術会議の独立性、自律性を抜本的に高めることによる機能強化と、国が設立し国の財政的支援を受けて運営される組織としての説明責任の担保を内容とするものであり、学術会議の独立性、自主的、自律的な活動を阻害するようなものではありません。

 また、法人化することにより、学術会議の独立性が組織面でも明確になり、海外アカデミーと同様に、政府とは完全に別な立場で活動できるようになります。

 この改革を通じて、学術会議が、サイエンス・フォー・サイエンスのみならず、サイエンス・フォー・ソサエティーやサイエンス・フォー・ポリシーなどの役割に主体的にチャレンジし、国民の期待に応えていくことを期待しています。

 会員選考の仕組みについてお尋ねがありました。

 選定助言委員会については、有識者懇談会からも、アカデミア全体や産業界等から会長が任命する会員等以外の科学者を委員とする選定助言委員会を法定し、会員選考の方針の案等を作成するに当たって意見を聞くことは、学術の独立性や日本学術会議の自律性、コオプテーションの理念と外部の知見を取り入れる必要性、分野や選考の固定化、既得権益化の抑止、議論や決定過程の透明化、国民への説明責任などを調和させる工夫として、極めて優れた仕組みであると評価されているところです。

 選定助言委員会の委員は総会が選任し、意見に法的な拘束力はありません。個別の会員の選考について意見を言わないことも、条文上明らかです。

 新法人発足時の会員の選定方法については、有識者懇談会最終報告書において、新分野、融合分野への対応などの観点から、現会員だけによる精査では必要十分な選考を行うことは難しく、大幅な見直しを行った平成十七年制度改正時を参考にして、現会員だけによるコオプテーションではなく、多様な視点からよりオープンに慎重かつ幅広く選考する方法により行うことが適当であるとされています。

 このため、この法案では、平成十七年制度改正時と同様に、新たに会員となる二百五十人の選考、選任は、オープンに慎重かつ幅広い方法で行うこととしました。

 その上で、学術会議の意見にも十分に配慮して、コオプテーションの要請を尊重し、平成十七年制度改正時とは異なり、現会員が候補者選定委員会の委員になることが可能であり、総会による承認、推薦の手続も追加していることから、新会員の選定に現会員の意向が反映されることになっています。

 新法人発足時に任期が残っている会員にも、引き続き会員として活躍していただくことになっており、組織としての継続性にも十分に配慮しているところです。(拍手)