【内閣委員会】学術会議法案採決強行/政府の意向に沿う組織に変質/廃案要求

 日本学術会議を解体する法案の採決が9日の衆院内閣委員会で強行され、自民党、公明党、日本維新の会の賛成で可決されました。日本共産党、立憲民主党、国民民主党、れいわ新選組、有志の会は反対しました。私は「学術会議を政府の意向に沿う組織へと変質させるもので、断じて容認できない」と述べ、廃案を要求。国会前では、学者や市民らが「人間の鎖」行動で廃案を訴えました。

 法案は、現行の日本学術会議法を廃止し、国の特別の機関である学術会議を特殊法人化。首相が任命する監事や評価委員会、外部者でつくる会員選定助言委員会などを新設します。内閣委で反対討論に立った塩川議員は、採決の強行に「断固抗議する」と表明し現行法に記されている学術会議の設立趣旨や基本理念の意義を強調しました。

 現行法の前文は、戦前、学術が政治に従属し、戦争遂行に加担した痛苦の反省にたち「科学者の総意の下にわが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献」と明記しています。

 私は、前文には同会議の歴史的出発点が記され「その下で独立性や自律性を確保する理念や制度が作られた」と指摘。法案は「学術会議の合意もないまま現行法を廃止し、政府が理念や会員選考方法、組織のあり方を一方的に定めて別組織を設立する」ものだと批判しました。

 学術会議は政府の監督下に置かれ、活動や会員選考における独立性などナショナル・アカデミーが備えるべき要件は充足されないと強調。法案の目的は「科学の成果を軍事に利用し、目先の経済的利益追求に貢献させるため、学術会議から独立性・自主性・自律性を奪う」ことだと指摘しました。

 国会前の「人間の鎖」行動では、菅義偉首相(2020年当時)に任命拒否された会員候補者の一人である岡田正則早稲田大学教授がスピーチに立ち「学術会議を解体して日本の学術を破壊し、さらに軍事研究に役立つよう変える非常に危険な法案だ」と指摘し、廃案を求めました。

【反対討論要旨】

 私は、日本共産党を代表して、日本学術会議法案に対し、反対の討論を行います。

 政府は4回も答弁を誤り、まともな資料も出してきません。ただすべき点が多々あるにもかかわらず、審議を打ち切り、採決することに断固反対するものです。

 現行の日本学術会議法は、その前文で「科学が文化国家の基礎であるという確信に立つて、科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与することを使命」とするという設立趣旨をうたっています。これは、戦前の日本が学術を政治に従属させ、また学術の側も戦争遂行に加担する役割を果たしたとの痛苦の反省のうえに、「学問の自由」を保障する日本国憲法を具体化するという日本学術会議法の歴史的な出発点を記したものです。そのもとで、独立性や自律性を確保するものとして基本理念や制度が作られました。

 また、各国のナショナルアカデミーは、「①学術的に国を代表する機関としての地位、②そのための公的資格の付与、③国家財政⽀出による安定した財政基盤、④活動⾯での政府からの独⽴、⑤会員選考における⾃主性・独⽴性」の5つの要件を確保しています。

 ところが本案は、日本学術会議の合意もないまま現行法を廃止するものです。前文はまるごと削除され、政府が基本理念や会員選考方法、組織のあり方などを一方的に定めたうえで、新たに法人としての別組織を設立します。さらに学術会議の運営・財務、会員選考にまで政府が介入できる仕組みをさまざま設け、現行法における「独立して職務を行う」との規定も削除します。日本学術会議の組織及び運営に関する事務が内閣府の所掌事務に位置づけられるなど、政府の監督の下に置かれる組織へと変質させるもので、5つの要件を充足しているとは到底言えません。

 本案は、科学の成果を軍事に利用し、目先の経済的利益追求に貢献させるため、学術会議から独立性・自主性・自律性を奪い、政府の意向に従う組織へと変質させるもので、断じて容認できません。

 先の参考人質疑において、梶田隆章前会長が「学術会議との真摯な協議を欠き、同意を得ないまま、組織・選考などの変更を法定化すること自体、ナショナルアカデミーの独立性・自律性を脅かす懸念がある」と述べている通りです。

 本案提出の契機となった6名の任命拒否の撤回、そして現行の日本学術会議を解体する本案の廃案を求め、討論を終わります。

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学術会議法案 採決強行/政府の意向沿う組織に変質/衆院内閣委/塩川議員が廃案要求

「しんぶん赤旗」5月10日・1面より

 日本学術会議を解体する法案の採決が9日の衆院内閣委員会で強行され、自民党、公明党、日本維新の会の賛成で可決されました。日本共産党、立憲民主党、国民民主党、れいわ新選組、有志の会は反対しました。日本共産党の塩川鉄也議員は「学術会議を政府の意向に沿う組織へと変質させるもので断じて容認できない」と述べ、廃案を要求。国会前では、学者や市民らが「人間の鎖」行動で廃案を訴えました。(関連2面)

 法案は、現行の日本学術会議法を廃止し、国の特別の機関である学術会議を特殊法人化。首相が任命する監事や評価委員会、外部者でつくる会員選定助言委員会などを新設します。

 内閣委で反対討論に立った塩川氏は、採決の強行に「断固抗議する」と表明し、現行法に記されている学術会議の設立趣旨や基本理念の意義を強調しました。

 現行法の前文は、戦前、学術が政治に従属し戦争遂行に加担した痛苦の反省にたち「科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し」と明記しています。

 塩川氏は、前文には同会議の歴史的出発点が記され、「その下で独立性や自律性を確保する理念や制度がつくられた」と指摘。法案は「学術会議の合意もないまま現行法を廃止し、政府が理念や会員選考方法、組織のあり方を一方的に定めて別組織を設立する」ものだと批判しました。

 塩川氏は、学術会議は政府の監督下に置かれ、活動や会員選考における独立性などナショナル・アカデミーが備えるべき要件は充足されないと強調。法案の目的は「科学の成果を軍事に利用し、目先の経済的利益追求に貢献させるため、学術会議から独立性・自主性・自律性を奪う」ことだと指摘しました。

 国会前の「人間の鎖」行動では、菅義偉首相(2020年当時)に任命拒否された会員候補者の一人である岡田正則早稲田大学教授がスピーチに立ち「学術会議を解体して日本の学術を破壊し、さらに軍事研究に役立つよう変える、非常に危険な法案だ」と指摘し、廃案を求めました。


採決強行された学術会議解体法案/本質は軍事動員批判の排除

「しんぶん赤旗」5月10日・2面より

 9日の衆院内閣委員会で、自民、公明、日本維新の各党は学術会議解体法案の採決を強行しました。実質審議入りからわずか3日、20時間にみたない審議での採決強行です。少数与党に維新が協力する中で、数を頼みにしての専制採決です。

「障害」として敵視

 法案の最大の狙いは、学術の軍事動員を強める動きに対し、一貫してこれを拒否し慎重姿勢を示してきた学術会議を「障害」として敵視し解体することです。

 衆院本会議で法案が審議入りした4月15日、維新の三木圭恵議員は「(学術会議は)防衛に関する研究を拒否し続けている」「かたくなな軍学共同反対のスローガンは改めろ」と壇上から叫んだのです。法案の本質を代弁したものです。

 三木氏は採決に先立つ9日の質疑で、2017年に学術会議が発出した「軍事的安全保障研究に関する声明」の影響で「多くの大学が軍事的安全保障研究にしり込みするようになった」などとして学術会議の姿勢を改めて敵視。一方、「声明」から5、6年後に北海道大学で「防衛装備庁への応募が解禁された。喜ばしい」などと述べました。

 17年の学術会議の声明とは、1950年の「戦争を目的とする研究は絶対にこれを行わない」声明、67年の「軍事目的のための研究を行わない」声明を引用し、防衛装備庁からの有償委託研究に応じることに慎重姿勢を呼びかけたものです。

党派所属の会員も

 一方で三木氏は、軍事研究に反対する学者・研究者に対し驚くべき「反共レッテル」攻撃を展開。「反共は戦争の前夜」の言葉を想起させる異様な主張を繰り広げました。

 広渡清吾元学術会議会長が「赤旗」に見解を示したことがあることや市民連合の活動をしたことがあるとして、同氏が元会長として名前を連ねている「日本学術会議法案(仮称)の撤回を求める声明」が「政治的に中立と言えるのか」などと“追及”。これに対し坂井学内閣府特命担当相は「特定の勢力に沿った活動は望まれない。特定のイデオロギーや主張を繰り返す会員は今度の法案では解任できる」と答弁したのです。

 恐るべき発言です。社会科学的研究に基づく見解は、本来、研究者の立場によってさまざまであることは当然です。特に時の政治権力に対し、批判的見解を持つことも当然あり得ます。広渡氏の行動は、学者個人としての学識に基づくもので、思想信条の自由、政治活動の自由で保障されるものです。三木氏と坂井担当相のやりとりによれば、「中立」の名のもとに、体制批判・軍事動員批判をする人は、学術会議から締め出されることになりかねません。法案の極めて危険な本質を露呈した瞬間です。

 一方で、学術会議の運営そのものが政治的中立を欠いてはならないのは当然です。運営の中立性と個人の思想的「中立」とは全く別の事柄です。

 他方、明確に党派に所属していても学術会議会員になる例はこれまでもありました。自民党の猪口邦子参院議員は、政治学者の立場で2005年から学術会議会員を歴任していました。三木氏の発言は支離滅裂でもあります。(中祖寅一)