独立行政法人国立女性教育会館を廃止し、新たに独立行政法人男女共同参画機構を創設する男女共同参画機構2法案の質疑と採決を行い、与党などの賛成多数で可決しました。日本共産党、れいわ新選組などは反対しました。
法案は、埼玉県嵐山町に設置されている国立女性教育会館の研修棟や宿泊棟を廃止する政府方針を具体化するために、現行の会館に課している研修棟を設置する法的義務を、機構においては廃止するものとなっています。私は、「法案には、機構を男女共同参画を推進する『ナショナルセンター』として規定し、自治体が設置する『男女共同参画センター』を初めて法定化するなどの積極面があるが、市民運動によって作られ、守られてきた研修棟・宿泊棟を廃止するのは容認できない」と強調しました。
私は、1977年に会館が設置されたのは、国連が提唱した「国際婦人年」である75年に第1回世界女性会議が開催されるなど、女性の権利拡充を求める歴史的な市民運動の盛り上がりに押されてのものだと指摘。会館の研修棟、宿泊棟は、市民運動や行政職員の研修の場として、全国からジェンダー平等に携わる人たちが集い、学び合う交流の場となってきたと強調。「研修棟を設置する法的義務の廃止は、市民運動と行政活動の両面からジェンダー平等を進める会館の機能を後退させる」と主張しました。
三原じゅん子内閣府特命大臣は、「維持管理に予算がかかる」「オンラインで多様な事業を行う」と答弁。私は、国から会館への運営費交付金は、2001年から24年に3割以上も削減されてきたと指摘し、「ジェンダー平等の取組を進める会館の役割を軽視し、予算削減してきた国の責任は重大だ」と批判。「ナショナルセンターとしての機能を果たせるよう、十分な財政措置を行うことこそ国の責任だ」と強調しました。
以下、反対討論です。
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私は日本共産党を代表して、独立行政法人男女共同参画機構2法案に反対の討論を行います。
本法案は、政府が2024年7月、国立女性教育会館の研修棟、宿泊棟、体育施設の撤去を目指すと表明したことを具体化するものです。現行の国立女性教育会館法を廃止し、新たに設置する男女共同参画機構には研修施設の設置を義務付けないこととしています。
法案は、新たな機構を男女共同参画社会の形成を促進する中核的な機関=「ナショナルセンター」と規定し、自治体が設置する「男女共同参画センター」を初めて法律上に位置づけるなどの積極面が盛り込まれていますが、研修施設をなくすことは容認できません。
国立女性教育会館は、1977年、国立としては唯一の女性教育を担う施設として埼玉県嵐山町に設置されました。その契機となったのは、国連が「女性の地位向上」を目指して提唱した「国際婦人年」である75年に、第1回世界女性会議が開催され、各国が取るべきガイドラインとなる「世界行動計画」が採択されたことです。女性の権利拡充を求める歴史的な市民運動の盛り上がりに押され、長年にわたる婦人団体や婦人教育関係者の要望をうけて設置されたのが国立女性教育会館です。
この会館の研修棟、宿泊棟は、会館が主催する対面での研修の会場として、また市民運動の活動の場として、全国からジェンダー平等に携わる者が集い、共に学び合う貴重な交流の場となってきました。2001年に独立行政法人化した後、何度も廃止や統廃合の議論が行われてきましたが、そのたびに運動によって守ってきたものです。
研修棟を設置する法的義務を廃止することは、市民運動と行政活動の両面からジェンダー平等を進めるという機構の機能を後退させるものです。市民団体やジェンダー問題に取り組む有識者から出されている強い批判の声を無視して推し進めるなど許されません。
政府は、施設の維持管理に予算がかかることを廃止の理由にあげていますが、国からの運営費交付金は2001年度の7億2400万円から24年度には4億7900万円まで、3割も削減されています。会館の役割を軽視し予算を削減してきた政府の姿勢こそ改めるべきです。
本日、世界経済フォーラムが発表した2025年版「ジェンダー・ギャップ報告」によれば、日本の男女平等度は148カ国中118位という極めて低い水準です。政府の姿勢の反映ではありませんか。
憲法と女性差別撤廃条約に基づいてジェンダー平等を進める国立女性教育会館は、拡充こそ必要であり、ジェンダー平等を進めるナショナルセンターとしての機能を発揮できるよう、十分な財政措置を行うことこそ国の責任だということを指摘し、反対討論とします。
「議事録」
第217回通常国会 令和7年6月11日(水曜日)内閣委員会 第27号
○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
男女共同参画機構法案、同整備法案について質問いたします。
国立女性教育会館は、一九七七年、国立としては唯一の女性教育を担う施設として、文部省の附属機関として、埼玉県嵐山町に設置をされました。これは、国連が提唱した国際婦人年である七五年に第一回世界女性会議が開催され、各国が取るべきガイドラインとなる世界行動計画が採択されたことや、七九年には国連で男女差別撤廃条約が採択されるなど、女性の権利拡充を求める市民運動の歴史的な動きを受けてのものであります。
広い敷地に研修棟や宿泊棟、女性、家族に関する専門図書館などを備えた国立女性教育会館は、女性教育の振興を目的に、研修や交流、調査研究などの活動を行っています。
ところが、政府は、二〇二四年七月、国立女性教育会館の研修棟や宿泊棟、体育施設等の施設について、令和十二年度までを目途に撤去すべく、新法人設立後速やかに関連工事に着手することを目指すと表明しました。
法案は、その具体化として、研修施設の設置を義務づける現行の国立女性教育会館法を廃止し、新たに設置する男女共同参画機構には研修施設の設置を義務づけないものとなっています。
会館の研修棟や宿泊棟は、会館が主催する対面での研修の会場として、また市民運動の活動の場として、全国からジェンダー平等に携わる者が集い、共に学び合う貴重な交流の場となってきました。
自治体の職員向けに会館が主催する相談員研修、災害対応研修、事業企画研修などに利用され、会館による実施報告でその様子が紹介されています。
例えば、男女共同参画の視点による災害対応研修では、全国から集まった参加者同士で膝を突き合わせて議論を行い、日頃どんな組織とどのように連携、協働しているかについて情報交換したり、更に取組を進めるためのアイデア交換などを行っています。
また、実技訓練として、実際に体育施設を利用して避難所づくりを体験し、総務・情報班、施設管理班など五つのグループに分かれて、試行錯誤をしながら避難所空間をつくり上げています。段ボールベッドやテントなどの防災物品を使って手を動かしながら行うことで、具体的なイメージや、日頃の積み重ねの大切さなど気づきがあり、理解が深まるということであります。
能登半島地震などでも避難所運営におけるジェンダー視点の遅れが大きな課題となっている中で、重要なリアルの研修の場であります。会館がこうした研修を全国規模で受け入れて行うことができるのは、研修棟、宿泊棟、体育施設を一体で保持、整備をしているからであります。
内閣府にお尋ねしますが、今回、このような会館における研修棟、宿泊棟などが機構においてはなくなるということであれば、今後このような全国規模での対面研修はどうしていくんでしょうか。
○岡田政府参考人 お答え申し上げます。
男女共同参画機構におきましては、宿泊及び研修施設を自前で保有することは考えておりませんが、今後とも、オンラインだけではなく、宿泊を伴うものを含め、対面での集合研修は必要であると考えております。
令和八年度以降における全国規模での対面研修については、各地のセンター等を対象とした、地域におけるネットワーク形成の促進やセンターの運営業務に関する好事例の共有等を行う場、また、自治体やセンター長を対象とした、センターの機能強化のための全国規模の研修などを行う場としての機能を創出できるよう、その在り方を検討してまいります。
○塩川委員 ですから、全国規模のリアルの研修は、どこで、どのぐらいの経費で行うということになるんですか。
○岡田政府参考人 お答え申し上げます。
その都度、必要な場所を確保いたしまして開催することを検討しております。
○塩川委員 これは、民間の宿泊研修施設の利用ということが前提ですか。
○岡田政府参考人 民間の施設を含めまして、様々な研修の施設、研修といいますか、施設の候補を考えまして、そこから最適な場所を考えてまいります。
○塩川委員 会館における研修棟あるいは宿泊棟を使うのであれば低廉な価格で行える、宿泊なども一泊四千ぐらいとかという経費ですから。そういう経費というのが大きく膨らむことに実際なりはしませんか。
○岡田政府参考人 宿泊棟、研修棟の維持を行うために、年間、維持費がかかるということも含めて、どのような経費になるかということは考えていく必要があるかと考えております。
○塩川委員 維持費云々ありますけれども、リアルな研修でどれだけ多くの知見、交流ができるのか、その重みはやはりしっかり受け止めて、それは経費の問題で解消するような話じゃないと率直に思います。
同じように、そういったジェンダー平等に係るそういった施設としての研修の取組と同時に、研修棟、宿泊棟は、民間の利用者からも貴重な施設として活用されてきました。
デンマークの国民高等学校の一つで、エグモント・ホイスコーレンという学校が女性教育会館の研修棟、宿泊棟を利用したということで、障害を持つ生徒が四割、そういう学校における日本への修学旅行の宿泊先として、国立女性教育会館の宿泊施設を利用してきたということが挙げられています。
修学旅行参加者の四十名ほどのうち七名から九名ほどが車椅子利用者であるため、通常のホテルではなかなか対応してもらえない中、国立女性教育会館の宿泊棟は、車椅子ユーザーの団体も泊まれるようバリアフリー環境が整備をされ、団体で受け入れてもらえるため大変貴重だということでありました。
さらに、研修棟には調理室もあり、デンマーク料理教室などを通じた地元住民との文化交流も行え、また、川越の散策や秩父の寺院巡りなど、アクセスもよく、海外との文化交流の拠点にもなってきたわけであります。
コロナ禍で実際には行われませんでしたけれども、二〇二〇年東京パラリンピックの際には、同校の全校生徒三百人の宿泊先として国立女性教育会館に予約が入っていた。こういう企画が可能だったのが、国立女性教育会館が持つ宿泊棟また研修棟の役割があったからこそであります。他に代え難い貴重な施設だった。
三原大臣にお尋ねします。
国内のジェンダー格差が深刻な下で、ソフト面の拡大を進めていくことは重要ですけれども、実地での研修や交流を全国規模で、国際規模で行う、そういう取組を更に進めることも重要であります。そのためにも、ソフトだけでなく、研修棟や宿泊棟、体育施設など、ハードも充実させていくことが必要だと考えています。
その際に、全国規模の研修は民間等も利用して進めていくというお話でしたけれども、そもそも現行あるものをなくすわけですよ。そのまま維持すればいいのに、維持する経費が云々という話をしているわけであります。
この点でも、研修棟、宿泊棟などの運営を困難にしているというのは、国から国立女性教育会館に出される運営費交付金の減額であります。交付金は二〇〇一年度の七億二千四百万円から二四年度には四億七千九百万円まで、約三割削減をされています。
政府が行うべきは、会館に対してハードかソフトか二者択一を迫るような話ではなくて、ハードもやりソフトもやると拡充するように、運営費交付金を抜本的に増額することこそ国が行うべきことではありませんか。
○三原国務大臣 国立女性教育会館の施設の撤去について様々な御意見があることは承知をしておりますが、施設の利用率というのがかなり低迷していること、そしてまた老朽化に伴い毎年平均して二、三億円程度の修繕費や、警備そしてまた清掃のために多額の委託費を要していること、オンラインの活用やアウトリーチによって各地で研修を行うことでより多様かつ多くの参加者が見込めることなどを踏まえると、男女共同参画機構においては自前の研修施設を保有する必要性が乏しいというふうに考えております。
このため、国立女性教育会館の機能強化を図るに当たっては、先ほど来お話がありますように、ハードからソフトへの転換、これを進める必要があると考えております。
会館を機能強化した後におきましては、全国各地、民間施設を活用して、先ほど答弁ありましたけれども、宿泊研修、そしてまた幅広い分野の専門家の協力を得まして調査研究の実施など、特定の場所や方法にとらわれない多様な事業を展開してまいりたいと考えております。
そのために機構に必要な機能を本館に集約することといたしまして、老朽化した宿泊棟、研修棟、体育施設等の施設につきましては、令和十二年度までを目途に撤去すべく、そして機構設立後速やかに関連工事に着手することを目指すことといたしております。
○塩川委員 運営費交付金を三割も削れば維持できなくなるのは当然なんですよ。それこそ見直すことによって、広く研修、宿泊の施設を活用した全国的なリアルの研修の場を保障していく、こういうことこそ本来、抜本的なジェンダー平等の取組を前に進めていく上で必要なことだ、そういった財政措置を後退させてきた国の責任こそ転換をすべきだということを強く申し上げておきます。
次に、男女共同参画センターについてお尋ねします。
法案は、現行では法律上明記されていない男女共同参画センターを、関係者相互間の連携、協働を促進するための拠点として法定化をするものですが、一方で、自治体に努力義務が課せられるのは拠点としての機能を担う体制の確保となっています。
法案は、自治体に対して、物理的な拠点としての男女共同参画センターを設置する、こういう努力義務を課すものとなっているんでしょうか。
○岡田政府参考人 お答え申し上げます。
今回、男女共同参画社会基本法に位置づけた連携、協働の拠点としての機能を担う男女共同参画センターは、必ずしも固有の施設を伴わなければならないものではございません。施設があれば事業の幅が広がるなど機能を発揮する上でのメリットはありますが、例えば複合的な公的施設の一室を活用することや、役所の男女共同参画主管課が男女共同参画センターとしての機能を担うこともあり得るものと考えております。
○塩川委員 固有の施設を伴うものではない、複合施設の一室と。複合施設の一部屋だけあって、それがこういう拠点施設と言えるんですか。
例えば、埼玉県の男女共同参画推進条例を見ますと、総合的な拠点施設の設置として、男女共同参画の取組を支援するための総合的な拠点施設を設置するものと定めて、実際にWithYouさいたまという男女共同参画センターをホテルの建物に置いて、複合施設の中に施設として確保しているわけであります。ですから、箱物としての拠点施設として条例では決めているんですよ。
だけれども、今回の法案では物理的な拠点の設置を求めていないんです。こういった規定を国が行うことが、既に物理的な拠点を設置している自治体に対して、物理的な拠点は置かなくてもよいのではないのか、そういうメッセージとなって、こういった物理的な拠点の施設の設置の後退を招くことになりはしないのか、こういう懸念が浮かぶんですが、この点については内閣府はどう考えるのか。
○岡田政府参考人 お答え申し上げます。
現在、地方公共団体が設置、運営しているいわゆる男女共同参画センターは、法律上の根拠がなく、地方公共団体が条例等により設置、運営しており、その名称や目的、人員体制、予算、事業内容等は様々であり、中には十分な機能を果たすことができなかったものもあるため、今般、その目的や機能を法律上明らかにし、機能の強化を図ることとするものでございます。
現在のセンターは、単独の施設のみならず複合的な施設に設置されている例も多く、地域の関係者相互間の連携、協働の拠点としての機能を果たすために、各地方公共団体が地域の実情に応じて柔軟に体制を確保することができる制度を設けるべきと考えております。
一方で、一定の事業を行う場合にはしかるべき設備を整えることが望ましい場合もございます。今後、国として、センターの業務及び運営についてのガイドラインの作成に当たりましては、そうした事例も収集の上、地方公共団体によるセンター設置に当たっての手引となるよう取り組んでまいりたいと考えております。
○塩川委員 やはり、物理的な拠点施設があるということが地域における男女共同参画を推進をする、それがまさに拠点としての役割を果たすことになる、そういう点での法案の不十分点、問題点を指摘をして、時間が参りましたので終わります。
○塩川委員 私は、日本共産党を代表して、男女共同参画機構二法案に対し、反対の討論を行います。
政府は、二〇二四年七月、国立女性教育会館の研修棟、宿泊棟、体育施設の撤去を目指すと表明しました。法案は、その具体化として、研修施設の設置を義務づける現行の国立女性教育会館法を廃止し、新たに設置する男女共同参画機構には研修施設の設置を義務づけないものとなっています。
国立女性教育会館は、一九七七年、国立としては唯一の女性教育を担う施設として埼玉県嵐山町に設置されました。これは、国連が提唱した国際婦人年である七五年に第一回世界女性会議が開催され、各国が取るべきガイドラインとなる世界行動計画が採択されるなど、女性の権利拡充を求める歴史的な市民運動の盛り上がりに押されてのことです。
研修棟、宿泊棟は、会館が主催する対面での研修の会場として、また市民運動の活動の場として、全国からジェンダー平等に携わる者が集い、共に学び合う貴重な交流の場となってきました。二〇〇一年に独立行政法人化した後は、何度も廃止や統廃合の議論が行われてきましたが、そのたびに運動によって守ってきたものです。
会館に課していた研修棟を設置する法的義務を機構において廃止することは、市民運動と行政活動の両面からジェンダー平等を進めるという機構の機能を後退させるものです。廃止に対して市民団体やジェンダー問題に取り組む有識者から強い批判の声が上がっていることを重く受け止めるべきです。
政府は、施設の維持管理に予算がかかることを廃止の理由に挙げていますが、国から国立女性教育会館に対して出される運営費交付金は、二〇〇一年度の七億二千四百万円から、二四年度には四億七千九百万円まで約三割削減されています。ジェンダー平等を進めるナショナルセンターとしての機能を発揮できるよう、十分な財政措置を行うのは国の責任です。会館の役割を軽視し、予算を削減してきた政府の姿勢こそ改めるべきです。
深刻な国内のジェンダー格差を解消していくには、オンラインなどの取組を推進するソフト面とともに、対面での活動を保障するハード面の強化も両輪で進めていくことが必要であり、研修棟、宿泊棟を廃止することは認められません。
そもそも、憲法と女性差別撤廃条約に基づいてジェンダー平等を進める国立女性教育会館は、独立行政法人ではなく国が直接運営すべきです。
法案には、新たな機構を男女共同参画社会の形成を促進する中核的な機関、ナショナルセンターと規定し、自治体や市民団体の連携を促進するセンター・オブ・センターズとして位置づけるほか、自治体が設置する男女共同参画センターを初めて法定化するなどの前進面が盛り込まれていますが、研修棟をなくす本案の問題点は容認できません。
以上、反対討論を終わります。

