【内閣委員会】カジノ法案/規制機関が推進側に/金も人も事業者任せ

 カジノ実施法案の質疑。カジノの規制機関として置かれる「カジノ管理委員会」が「カジノ推進機関」になる危険性を追及しました。石井啓一IR(統合型リゾー卜)担当相は否定できませんでした。

 政府は、カジノ管理委員会は組織として独立性を有すると説明しています。

 わたしは、カジノ管理委員会とIR推進側の官庁の人事交流は規制するのか――とただしました。

 石井担当相は管理委員会事務局の職員について「他省庁との人事交流に制限はない」と答弁。

 原子力規制庁では職員が原子力利用推進側の行政組織に配置転換するのを禁止する「ノーリターンルール」があるのに、カジノ管理委員会に同様の規定がないことをただすと、石井担当相はIR推進省庁と管理委員会の「行政目的は対立するものではない」と答えました。

 信じられない答弁だ。これではカジノを規制・管理するどころか、推進の立場でカジノを拡大することになる。

 さらに、カジノ管理委員会事務局にカジノ事業者を入れることを質問すると、石井日当相は「カジノを管理するためにはカジノの実態を知っている人を任用することもありうる」と述べ、委員会室から驚きの声があがりました。

 カジノ管理委員会の独立性は確保されておらず、経費はカジノ事業者が負担し、規制の仕組みはカジノ事業者の方が精通しており、事業者との人的結合もあり得る。カネも人もノウハウ(必要な知諏)も事業者に依存することになる。規制ではなく推進機関になりかねない。法案の徹底審議を求めました。

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「議事録」
<第196通常国会 2018年06月08日 内閣委員会 26号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、今、質疑もありましたカジノ管理委員会について質問をいたします。
 この第六回のIR推進会議の資料で、カジノ管理委員会というのがあります。これを見ますと、カジノ管理委員会の権限の行使に当たっては、IR推進、振興に関係する他の行政機関や利害を有するカジノ事業者との関係を踏まえ、組織として独立性を有し、公正中立な立場での意思決定及び手続等が求められるとあります。
 つまり、組織としての独立性を担保をするために、IR推進の他の行政機関との独立性、またカジノ事業者との独立性、これが問われているということが指摘をされているわけであります。
 そこで、大臣にお尋ねをいたしますが、このカジノ管理委員会の事務局が組織として独立性を担保するために、カジノ管理委員会事務局とIR推進の行政機関との人事交流を規制するという規定は、法文のどこにありますか。

○石井国務大臣 今回のIR整備法案におきましては、IRの推進を通じた公益の実現を担うIR主務大臣、カジノ施設の設置、運営に関する秩序維持等を担うカジノ管理委員会という、行政目的を異にする二つの組織が新たに設けられることになります。そして、これら二つの行政目的は、互いに相反するものではありません。
 カジノ管理委員会は、世界最高水準のカジノ規制を公正中立な立場から担う存在としまして、内閣府のいわゆる三条委員会として設置することとしておりまして、カジノ管理委員会の事務局の職員につきましても、委員会の指揮命令のもと、公正中立かつ厳格にカジノ規制事務の執行に当たることとなります。
 カジノ管理委員会が担うカジノ規制の内容は多岐にわたり、また専門的な知見を必要とすることから、厳格なカジノ規制を実現するため、幅広い業務の特性に応じた人材を行政各分野から確保していく必要があるところであります。
 カジノ管理委員会の事務局につきましては、他省庁との間で行われる人事交流について制限を設けることは考えておりません。

○塩川委員 それはおかしいですね。だって、カジノ管理委員会の事務局について、IR推進会議の取りまとめにおいても、カジノ管理委員会は、IR推進、振興に関係する他の行政機関とは一線を画し、カジノに関する規制を厳格に執行する行政委員会として位置づけるべきとあるわけです。明確に区分する必要があるんですよ。IRを推進する部局と、まさにカジノを規制する、カジノを管理する部局と、これは人的にも分けるのは当たり前じゃないですか。
 三条委員会の議論でも、一番問題となったのが原子力規制委員会でしょう。まさに原子力を推進する機関と規制する機関の分離が必要だ、その人的な交流は行わない、こういう議論がずっと行われてきたじゃないですか。
 原子力規制委員会の設置法では、原子力規制庁の職員については、原子力利用の推進に係る事務を所掌する行政組織への配置転換を認めないという、いわゆるノーリターンルールが規定をされています。経産省や文科省の原子力担当、原子力委員会の事務局などには配置転換ができません。
 原子力に係る推進機関と規制機関の分離を図る観点で実施をされているわけで、IR推進の行政機関とカジノ管理委員会事務局の間でのこういうノーリターンルール、カジノ法案で規定しないのか。独立性を言うのであれば、そういうことこそ必要じゃないですか。

○中川政府参考人 お答え申し上げます。
 ただいま、推進会議の中でのこの一線を画するという御指摘でございますけれども、これは先ほど石井国務大臣の方から御答弁がございましたように、カジノ管理委員会のマンデートは、カジノ事業の廉潔性を確保するということが明確にある。一方、IR事業を担当する主務大臣は、IR事業を通じて日本を観光先進国に引き上げていく、そういう公益を実現することを監督していくということで、行政目的が異なるということを触れたものでございます。

○石井国務大臣 御指摘の原子力規制庁については、従来、原子力を推進する経済産業省に規制を担う機関が属し、規制機関の独立性が欠如するという中にあって、安全が軽んじられていたこと等の反省に立って、いわゆるノーリターンルールが設けられたものと承知をしております。
 今、先ほどから御説明申し上げておりますように、今般、IR主務大臣とカジノ管理委員会、二つの組織が新たに設けられるわけでありますが、これら二つの行政目的は、互いに相反するものではありません。
 なおかつ、カジノ管理委員会は、いわゆる三条委員会として、公正中立な立場からカジノ規制を担う存在として設けられるものでありまして、事務局職員についても、委員会の指揮命令のもと、公正中立かつ厳格にカジノ規制事務の執行に当たることになります。
 したがいまして、行政各分野からカジノ管理委員会に人事交流等で出向したとしても、それでもってカジノ管理委員会の公正中立な立場が失われるということはないというふうに考えております。

○塩川委員 いや、信じられないですね。IRを推進するためにもうけを上げようと思えば、カジノの収益を上げるというのが一番だと。もうけ、八割がカジノから来ているんですから、IR推進、どんどん広げようと思えば、カジノをどんどん広げるということにならざるを得ないじゃないですか。それはもう、カジノ管理委員会の目的、きちんとした規制をするというところと相反する方向なんですよ。だからこそ、組織としての独立性を担保するということを、事務局の議論でも有識者の議論でも行ってきたんじゃないですか。
 こんなところについても、これでは結局、規制、管理するどころか、IR推進の目的のためにどんどんどんどんカジノを拡大する、こういうことにならざるを得ない。まさにそういう法案の中身だということをみずから認めているという点でも、極めて重大だと言わざるを得ません。
 もう一つ指摘をしたいのが、このカジノ管理委員会が組織として独立性を有するために、カジノ管理委員会事務局にカジノ事業者を入れるということはないですね。

○石井国務大臣 カジノ管理委員会は、世界最高水準のカジノ規制を公正中立な立場から担う存在として、内閣府のいわゆる三条委員会として設置することとしておりまして、カジノ管理委員会の事務局職員については、委員会の指揮命令のもと、公正中立かつ厳格にカジノ規制事務の執行に当たるものであります。
 カジノ管理委員会の職員の外部からの任用に当たっては、監督等の対象となるカジノ事業者等との間の癒着など、カジノ規制事務の公正性、中立性にいささかの疑念を持たれることのないようにすることが前提でございます。

○塩川委員 だから、癒着など中立公正性を損なうようなことがないように、人的な交流を禁じるということが必要じゃないかと聞いているんですよ。
 大体、この法案の中にも、カジノ管理委員会の委員長又は委員は、カジノ事業者はなることができないと規定しているんですよ。委員長や委員についてはカジノ事業者、関連の事業者はなることができないと規定しているんだったら、このカジノ管理委員会の事務局も禁止すればいいじゃないですか。禁止すればいいでしょう。どうですか、大臣。

○石井国務大臣 これは、カジノ事業者から、外部から職員を任用するかどうかというのは、それは明確に定めていないところでありますが、ある意味で、カジノを管理するためには、カジノの実態を知っている人を任用するということも一つあり得るかもしれません。
 ただし、先ほども申し上げたように、カジノ事業者との間の癒着など、カジノ規制事務の公正性、中立性にいささかの疑念を持たれないようにすることが大前提ということであります。(発言する者あり)

○山際委員長 御静粛にお願いします。

○塩川委員 だから、中立公正性に疑念が持たれないように、カジノ事業者は事務局に入れないと規定すればいいじゃないですか。何でそんなこともできないのか。
 そもそも、カジノ管理委員会の経費という、皆さん、カジノ管理委員会の経費は誰が負担するのか。規制対象のカジノ事業者が負担するんですよ、納付金から出るんですから。また、カジノ規制の仕組みについてはカジノ事業者の方が精通しているということは、大臣もお認めになっておりますから。
 カジノ管理委員会は、カジノ規制のノウハウについてもカジノ事業者に劣後をし、カジノ事業者との人的結合、官民癒着の疑念は排除をされず、財政的にもカジノ事業者に依存する。金も人もノウハウもカジノ事業者に依存する。カジノ管理委員会は、カジノ規制機関ではなく、カジノ推進機関になりかねないじゃありませんか。
 規制機関が規制される事業者に取り込まれる、規制のとりこが大問題となった、あの原発事故の過ちを繰り返してはならないのではありませんか。
 さらなる徹底審議を要求する、このことを強く求めて、質問を終わります。