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第193 通常国会 2017/1/20~2017/6/18
日付:2017-07-27
2017年通常国会の取り組み【1】原発問題
(1)汚染者負担原則を投げ捨てる除染への税金投入を批判
(2月21日、環境委)
原発事故に伴う除染と中間貯蔵施設関連費用の負担の在り方について質問。
除染特措法は、除染・中間貯蔵施設費用は、東京電力が負担すると定めています。しかし、政府は昨年12月20日に閣議決定した「福島復興基本指針」で帰還困難区域内の除染費用については国が負担するとしました。
国が費用を負担する理由の説明を求めると、山本環境大臣は「様々な事情を勘案して国として決めた」としか答えられませんでした。合理的な説明なしに国が負担することは、国民の理解が得られません。
続いて中間貯蔵施設費用の回収の仕組みについて確認。経済産業省は「原子力損害賠償支援機構法68条に基づき、電源開発促進税をあてる」と答弁した。毎年470億円の電促税を30年以上に渡って東電に渡すことになります。東電の費用負担を棚上げし、国民に負担転嫁する仕組みです。帰還困難区域の除染費用を国が負担し、中間貯蔵の費用は電促税をあてる。このようなやり方は汚染者負担の原則を投げ捨てるもの。国民に負担を求めるのであれば、国の原発推進政策を反省し、原発再稼働はきっぱりやめるべきです。
省エネ、再エネへの根本的な転換を求めました。
(2)原子炉等規制法改定案質疑
1)原子炉等規制法改定案について、原発の検査に対する国の責任を放棄し、事故・トラブルの隠ぺい、データ改ざんを繰り返してきた電力会社まかせにするものだと批判
(3月14日、環境委)
改定案は、現在国と事業者とがそれぞれ行っている原発の検査を、電力会社が検査したうえで国が事後評価する方式に改めるもの。
私は、東京電力の根深い組織的隠ぺい体質を指摘。2002年の福島第1・第2原発、柏崎刈羽原発での原子炉圧力容器内のシュラウド(隔壁)のひび割れデータ改ざんや、07年の柏崎刈羽周辺での活断層隠ぺいをあげ、福島事故の背景には事業者の隠ぺい体質があったと強調しました。原子力規制委員会の田中俊一委員長は「(隠ぺいは)東電の体質ともいえる」「安全文化の欠如は確かにあった」と認めました。
柏崎刈羽原発の免震重要棟の耐震性不足を3年近く報告していなかったことなど、隠ぺい体質は今も続いています。原子力施設の安全確保を、このような事業者に委ねるのかと追及。田中氏は、隠ぺい体質の改善にはふれず、「発覚すれば原子炉停止などの処罰がある」などと、あくまでも事業者任せの姿勢に固執。
東京電力のデータ改ざんや1999年の東海村JCO臨界事故などを踏まえて制定されてきた国の検査が改定案でなくなります。過去の検査制度の見直し経緯にも逆行するものです。
2)原子炉等規制法改定案について参考人質疑
(3月17日、環境委)
改定案は、現在国と電力会社が行っている原発の検査を電力会社まかせにし、国が事後評価するもの。参考人の特定非営利活動法人(NPO)原子力資料情報室の伴英幸共同代表は「事業者が一義的責任を自覚することは必要だが、不正・トラブル隠しを繰り返してきた事業者に検査を任せるのは危険だ。(事業者)性善説では安全を確保できない」と語りました。
元原発メーカー技術者の小倉志郎氏は「電力事業者にとって、安全の最大限の確保と利益の追求は相反するもの」と指摘し、「原発の重要な部分は国が自ら検査をすると法律に明記することが必要」だと主張。
小倉氏に、現場で実際に隠ぺいを体験したことがあるかと質問。小倉氏が「何例かあった」と述べると、委員会室にはどよめきが起きました。小倉氏は「原発の構造は極めて複雑であり、個々の部分について理解している技術者はいても、1人の人間が全体を把握することは不可能。慎重な判断が必要だ」「国民の求める安全と事業者にとっての安全は違う。政府には、利益優先ではなく、国民に寄った立場をとっていただきたい」と述べました。
(3)東海第二原発の廃炉を要求、東海原発廃棄物の素掘り埋設計画を批判
(3月17日、環境委)
日本原子力発電が再稼働を目指す東海第2原発(茨城県東海村)の避難計画の問題点を追及し、第2原発の廃炉を求めました。
同原発から半径30キロ圏内には14市町村があり、96万人が生活しています。東海原発からわずか3キロの入所福祉施設から「寝たきりの方は、乗用車なら1人しか避難できない。もし原発事故が起きれば全員の避難は不可能だが、逃げる順番を決めることもできない」との切実な声があがっていると紹介。こうした声に対応できる避難計画は実現できるのかと質問。内閣府は「現在詳細な避難計画を取りまとめている最中。国が前面にたって支援していく」と答弁しました。
また、重症心身障害児の入所施設など、即座に避難できない要配慮者のいる施設が多い。原発事故と地震や津波が一体となる複合災害が起きれば、避難はさらに難しくなる。30キロ圏内96万人が安全に避難することは現実的に可能なのかと追及。山本公一原子力防災担当相は「懸念はよくわかる。地元自治体と一緒になって避難計画を策定していきたい」と答弁。
避難計画の策定は非現実的。避難計画が成り立たない東海第2原発は廃炉しかない。
また、東海原発の廃止措置に伴う放射性廃棄物の素掘り埋設計画の撤回を求めました。
(4)茨城・栃木県内の放射性指定廃棄物の保管強化対策求める
1)栃木県塩谷町が、東京電力福島第1原発事故により発生した放射性指定廃棄物の一時保管場所の保管の安全性強化を求めていることを示し、環境省に早急な対応を求めました
(3月24日、環境委)
国土交通省は、一時保管場所のある同町内の土地の災害リスクについて「鬼怒川の『家屋倒壊等氾濫想定区域』に含まれる」と述べ、大雨が降った際には、地面ごと流されてしまう危険があることを認めました。
環境省は一時保管場所の強化策支援について「災害リスクの軽減のために自治体からの要望を受けて、保管の強化を行う」と示しています。茨城県では、すでにこの仕組みに基づいて保管強化策支援が行われています。塩谷町のケースは支援の条件に合致しており、環境省の姿勢をただしました。
環境省は「保管場所の移動等も含めて協議していきたい」と答弁。塩谷町の「町民への影響を考えれば、他の場所に移すことはできない」との声を紹介。災害リスクがあれば強化策を取るのは当然です。山本公一環境相は、「浸水の懸念があることは承知している」と述べるにとどまりました。
2)茨城県における放射性指定廃棄物保管場所の強化策について質問
(6月9日、環境委)
茨城県は指定廃棄物(1キログラムあたり8000ベクレルを超える放射性廃棄物)の現地保管継続の方針を決めていますが、保管・対策状況は市や町によって大きく異なっています。
ひたちなか市の茨城県那珂久慈浄化センターと茨城町の園芸リサイクルセンターでの指定廃棄物の保管状況について確認。環境省は「テント型倉庫に保管している。耐風性、耐震性、耐用年数ともに問題ない」と答弁しました。
5月に行った共産党議員団の現地調査の際に那珂久慈浄化センターのテントに破れて修繕した個所が見つかりました。現地ではテント倉庫の耐風性を超える台風も起きています。長期保管を前提に保管強化策を図るべきです。
山本公一環境大臣は「テント型倉庫は法令基準を満たすなど、一定の強度を持っている」としつつも「保管者や自治体から要望があれば相談したい」と答えました。
さらに、茨城町や北茨城市から保管強化をしてほしいとの要望が出ていると追及。環境省は、どちらの自治体からも要望が出されていることを認め、「対策が必要であれば相談していきたい」との姿勢を示しました。
また、牛久市の指定廃棄物は、民間施設に保管されているとのことだが、情報が明らかにされていません。民間施設とはどこか、適切に保管されているのか、と質問。
環境省は「民間施設なので情報は公開していない」と答弁し、明らかにしませんでした。
情報が公開されず不安だとの意見が地元にあります。保管状況の公開は、保管強化の必要性を検証するためにも必要です。
また、環境省の指定廃棄物保管場所強化策が「地元自治体からの要望」などを条件としています。環境省は、自治体任せでなく自らの責任として保管場所の災害リスクの更なる軽減のため、保管の強化策をとるべきです。
(5)環境省福島環境事務所設置に反対
(5月19日、環境委)
環境省の福島地方環境事務所設置承認案を日本共産党以外の賛成多数で可決しました。
反対討論では――東京電力福島第1原発事故の除染などを行う福島環境再生事務所が、これまでは東電の汚染者負担原則で業務を行ってきた。承認案が、東電の賠償責任を免罪し、国費負担を掲げる政府の「基本指針」にもとづく事務所の格上げを行うものだ。賠償の一端を担う組織としての性格を損なう――と批判しました。
賠償の位置づけが損なわれれば、国費投入の費用対効果から事業の縮小や廃止につながり、住民が求める全エリアの除染が行われないことになりかねません。
また、採決に先立つ質疑で、福島環境再生事務所には時限定員ばかりで、その多くが任期3年となっているとして、是正を求めました。環境省は「仕事の内容の変化や職員のやる気を考えて、3年ごとの定員措置を見直していきたい」と答えました。
定員任期の終期を復興特別会計が廃止される2020年度末としている問題を挙げ、中間貯蔵施設整備など除染特措法に基づく事業は20年度末以降も続くのであり、見直すべきだと主張。山本公一環境相は「業務が長期にわたると見込まれるポストは恒常的な定員措置を検討したい」と答えました。
(6)原子力機構の作業員被ばく問題を追及
(6月9日、環境委)
日本原子力研究開発機構大洗研究開発センター(茨城県大洗町)で作業員5人がプルトニウム内部被ばくをした事故をめぐり、機構と原子力規制委員会の対応をただしました。
事故は6日、燃料研究棟に保管されていた核燃料物質の状況の確認中に、貯蔵容器内のビニールバッグが破裂して粉末状の核燃料物質が大量に飛散したというもの。
核物質は26年間も未開封でした。水素ガスやヘリウムガスが充満し破裂した可能性もあります。プルトニウムを扱う作業としてはきわめてずさんだったのではないか、とただすと、同機構の児玉敏雄理事長は「考えが足りなかった」として、指摘の可能性も含め調査すると答えました。
同機構の「もんじゅ」では、ナトリウム漏れ火災と隠ぺい工作がありました。放射性廃棄物の処理作業でもずさんな管理でトラブル続きです。このような機構による高速実験炉『常陽』の再稼働は絶対に認められません。事故の検証とともに、情報開示、被ばく労働者への長期ケアなどを求めました。
(7)原子力特で参考人質疑
(6月12日、原子力特)
専門的見地から助言を得るための「アドバイザリー・ボード」を初めて開き、東京電力福島第1原発事故の国会事故調査委員長を務めた黒川清政策研究大学院大学名誉教授らが意見を述べました。
アドバイザリー・ボードは、国会事故調の国会に対する提言に基づき、特別委の助言機関として今国会から設置されたもの。会長の黒川氏をはじめ7人の会員から構成されます。
会員の石橋哲政策研究大学院大学客員研究員は、国会事故調が出した他の提言についてもスケジュールを作成して実行に移し、進捗(しんちょく)状況を国民に公表するよう求めました。
黒川清会長(元原発事故調委員長)始め4名が出席。参考人からは
1)国会の行政監視機能を強めることの重要性
2)行政府における原子力推進機関と規制機関の人的分離をはかるノーリターンルールが守られていないこと
3)新規制基準に避難計画が位置付けられていないこと
―――など重要な指摘が行われました。
私は東電など電力会社の隠蔽体質について指摘。藤垣裕子氏は、情報公開、透明性の確保の重要性を強調しました。