【新聞「新埼玉」掲載】土地利用規制法/埼玉でも住民監視本格化の恐れ/県内6市町が指定候補に

新聞「新埼玉」11月号より

 政府は9月に開いた土地「土地利用状況審議会」で土地利用規制法に基づく3回目の「注視区域」「特別注視区域」指定候補として、全国25都道府県180力所を示しました。地元自治体の意見聴取などを経て、年内にも指定を狙っています。今回の指定候補には県内6市町が含まれており、埼玉でも住民監視が本格化する恐れがあります。

調査内容や対象範囲/政府の判断任せ

緊急集会で報告する塩川鉄也衆院議員=10月8日、ふじみ野市

 士地利用規制法は内閣総理大臣が安全保障上重要とみなす「重要施設」の周囲約1キロメートルと国境にある離島を「注視区域」、その中で特に重要とされるものを「特別注視区域」に指定します。注視区域では国が土地の利用状況などを調査し、「機能阻害行為」が確認されれば国が中止を勧告・命令します。これに従わなければ刑事罰を課されることとなります。特別注視区域はこれらに加え、土地の売買について国に届け出が必要になります。

 「重要施設」とは米軍・自衛隊基地、海上保安庁施設のほか、自衛隊との共用空港や原発などの「生活関連施設」とされます。「生活関連施設」の範囲について法律上は限定がなく、鉄道駅や電気・水道などのインフラ施設も指定できるため、対象が際限なく広がる危険があります。しかも調査する情報の種類や調査方法、「機能阻害行為」の内容などについて政府の判断に任されており、軍事施設周辺でスケッチや写真撮影しただけでスパイ扱いされ罰せられた戦前・戦中の治安立法の再来になりかねません。

住宅集中地を指定/さらに対象広がる恐れ

「注視区域」のイメージ図

防衛省大井通信所
↑クリックでPDFがダウンロード出来ます
航空自衛隊入間基地
↑クリックでPDFがダウンロード出来ます
陸上自衛隊新町駐屯地
↑クリックでPDFがダウンロード出来ます

 埼玉に関係する今回の指定候補は、特別注視区域が防衛省大井通信所(ふじみ野市)、注視区域が航空自衛隊入間基地(狭山市・入間市)と陸上自衛隊新町駐屯地(群馬県高崎市)です。

 入間基地の周囲1キロには狭山・入間両市の市役所や西武鉄道の駅、住宅が集中している地域が含まれます。大井通信所の周囲1キロ圏内にも小中学校があり、多くの住宅が建っています。また、上里町の西側の一部が新町駐屯地の1キロ圏内に入ります。

 県内には陸上総隊司令部のある陸上自衛隊朝霞駐屯地(朝霞市など)や、国内唯一の化学部隊や化学学校のある同大宮駐屯地(さいたま市)があります。政府は今年度中に600ヵ所の指定を狙っており、今後さらに対象が広がる恐れがあります。

人権侵害の法律/廃止させよう

 候補地とされた地域では、住民がさまざまな動きを見せています。

 ふじみ野市では10月8日、日本共産党西部東地区委員会と同ふじみ野市委員会が緊急集会を開催。報告した塩川鉄也衆院議員は、住民調査が土地利用規制法の目的だと指摘し、「人権侵害の同法は廃止にしよう」と訴えました。

 日本共産党川越市委員会と同市議団は17日、撤回を国に求めることなどを市に申し入れ。狭山市議団は18日にこの問題で市と懇談しました。