入管法改正案の強行採決/政府与党に断固抗議

 法務委員会、そして衆院本会議で、入管法改正案の強行採決をおこなった政府与党に断固抗議します。

●第一に問われなければならないのは、入管法改正案の審議に当たって、政府資料のねつ造や大臣の虚偽答弁を不問に付したまま、強行採決を行ったことです。

 入管法改正案において、新たな在留資格の特定技能1号は、多くの技能実習生が移行する制度となっており、だからこそ26万人の技能実習生の労働実態把握は法案審議の大前提です。失踪技能実習生の聴取票はその実態に迫る貴重な資料です。しかし法務省は、その国会提出を拒否し、聴取票とりまとめだけでごまかそうとしました。聴取票そのものには「低賃金」「契約賃金以下」「最低賃金以下」となっているのに、聴取票取りまとめでは「より高い賃金を求めて」と、あたかも技能実習生が身勝手に逃げ出したかのように描き、また実習先の暴力の件数も小さく見せることで、深刻な労働条件と人権侵害を覆い隠そうとしたのです。そのようなねつ造されたデータに基づき、歴代法務大臣が虚偽答弁を繰り返したことは極めて重大です。

●先の通常国会で起こったことは何か。政府によるデータ改ざん、虚偽答弁が大問題となったではありませんか。今国会でも同じ過ちを重ねることは許しがたい。

 大島理森議長は通常国会を振り返って「所感」を出しました。「国権の最高機関であり、国の唯一の立法機関」である国会は、「法律を制定するとともに、行政執行全般を監視する責務と権限を有している。これらの権限を適切に行使し、国民の負託に応えるためには、行政から正しい情報が適時適切に提供されることが大前提になっている」。しかし「厚生労働省による裁量労働制に関する不適切なデータの提示」など「法律の制定や行政監視における立法府の判断を誤らせるおそれがあるものであり、立法府・行政府相互の緊張関係の上に成り立っている議院内閣制の基本的な前提を揺るがすものである」という指摘は、きわめて重いものがあります。

●通常国会での裁量労働制のデータねつ造も今回の技能実習生のデータねつ造も、いずれもその出発点には、安い労働力を確保したいという財界の要求があります。労働者の労働条件と権利の侵害をもたらす悪法を推進する政府与党の姿勢は認められません。

●第二に問われなければならないのは、政府与党は野党の慎重審議を求める声に耳を傾けず、安倍総理の外遊日程に合わせた採決日程を強行したことです。

 入管法改正案については、議運理事会で重要広範議案と確認したにもかかわらず、法務委員会では連合審査も行わない、地方公聴会もおこなわない、総理出席質疑さえ行わず、その上定例日外の審議強行まで行って、国民が求める慎重審議を踏みにじり、採決を急いだのです。質疑時間は17時間余り、いわゆる空回しを除けば、15時間にも満たないものでした。このような拙速な審議、採決強行の上、緊急上程をして、本会議で採決を行うものでした。なぜ急ぐのか。結局、安倍総理の外遊日程を優先し、総理の都合に合わせて国会審議を進めようとしているからではありませんか。この間、モリカケ問題など安倍総理の国政私物化が大問題となりましたが、国会日程までも総理の都合に合わせる最悪の国政私物化だと言わなければなりません。

 入管法審議は、参議院に移りますが、徹底審議で廃案に追い込んでいきたい。