【衆議院議院運営委員会のイタリア視察】8月25~26日・フィレンツェ

 8月25~26日、フィレンツェ。国立公文書館、国立中央図書館を視察。フィレンツェ在住の邦人の方々との懇談などを行いました。

 フィレンツェ国立公文書館は、フィレンツェ地域の歴史的重要文書の保存・公開を行うとともに、19世紀のイタリア統一後の行政・司法文書の保存・公開を担っています。

 日本に関係する文書の中には、1585年、天正遣欧少年使節が、メディチ家に寄贈した日本地図があります。最初の訪問地であったポルトガルで作成したもの。豊前、豊後など、当時の国の単位ごとに、教会が描かれ、イエズス会の布教が日本全土で進んでいることをアピールするものとなっていたようです。

 フィレンツェは、12世紀には自治権を獲得し、共和政を実施。13世紀末以降、評議会(議会)が設置され、国庫の管理、治安対策、軍事などについて審議していました。14世紀の評議会議事録を紹介してもらいました。そこには議員でもあったダンテが公金横領の罪でフィレンツェを追放されことが記載されていたといいます。その後、濡れ衣だということで、名誉回復のため、その記述が削除された跡が残されています。

 年間1万7千人が利用し、その2割が外国人。ルネサンスの研究が中心です。市民が利用する理由として、「購入した家の歴史を調べたい」「家系をたどりたい」などがあります。3代前に遡って、先祖がイタリアに居住していれば、イタリア国籍を取得できるそうです。

 年2~3回の企画展を実施しており、今は準備中。19世紀以降の建築物の展示を計画しています。

 年数が立てば、貴重な文書も劣化します。1966年、アルノ川が洪水を起こし、多くの公文書が被害を被ったこともあり、修復作業は非常に重要です。

 しかし修復作業は外注され、2000年に20人いた修復の専門家は現在ゼロ。「人を増やしてほしいが政府の腰が重い」と言います。

 フィレンツェ国立中央図書館は、イタリア及びヨーロッパにおいて最も重要な図書館の一つ。880万点の印刷本、約2万5千点の手稿、約4千点の15世紀初期活版印刷物等を所蔵。

 全ての刊行物の納入を義務づける納本制度に基づき、出版物を収集しています。元々はトスカーナ大公国が出版物をチェックするための検閲制度として納本を義務づけたという歴史的経緯があります。

 日本でも明治時代、出版物の検閲を目的として、納本制度が始まりました。現在は、戦後の日本国憲法の下、国民の知的財産の保存と国民の知る権利を保障するものとして、国立国会図書館が納本制度を運用しています。

 国立国会図書館法の前文には「国立国会図書館は、真理がわれらを自由にするという確信に立って、憲法の誓約する日本の民主化と世界平和とに寄与することを使命として、ここに設立される」とあることを肝に銘じて、国立国会図書館の運営を支えていきたい。

 フィレンツェ国立中央図書館では、出版社が発行している刊行物だけでなく、カレンダーやチラシ、選挙の宣伝物なども納本の対象になっているとのこと。政党の宣伝物も公開されているものは全て、収集対象です。

 私は、日本の政党史の記録としても、政党の宣伝物について、国立国会図書館や議会資料館である憲政記念館で収集することを提案しています。1年でなくなる政党もありますから。イタリアの取り組みを参考にしたい。

 1966年のアルノ川の大洪水で、図書館の収蔵物も被害を受けました。今なお修復の作業が続いています。地下の書庫には、洪水対策とスペース確保のため、収蔵物が真空パックで保管されていました。

 人手不足が深刻です。以前は300人いた職員が、今では140人。半年契約の非常勤職員が増えています。