自民党派閥の裏金事件を受けた政治資金規正法改正案の参考人質疑を行い、質疑に立ちました。
平野貞夫元参院議員は意見陳述で「裏金事件の本質を理解し、究明しなければ本格的な立法体制はつくれない」「自民党による集団犯罪の疑いがある問題をうやむやにできない」と述べました。
東京大学の谷口将紀教授は、党幹部が問題となったリクルート事件と違い「(今回は)裏金が地方、選挙に流れている」と地方組織も含め党全体の問題であると指摘しました。
私は、金権腐敗事件を契機とした30年前の「政治改革」では、企業・団体による「政党支部への献金」と「政治資金パーティー券の購入」という二つの「抜け道」がつくられ企業・団体献金が温存されたと指摘。二つの「抜け道」をふさぐ必要があるのではないかと質問しました。
谷口氏は「この際、企業・団体献金を禁止しようという主張も理解できる」と述べた上で、複数人の企業幹部による個人献金などが実質的な企業・団体献金となる可能性も考えるべきだと強調。
駿河台大学の成田憲彦名誉教授は「(二つの『抜け道』は)まさに日本の政治資金制度のゆがみだ」と指摘し、「寄付で企業献金を禁止するのなら、パーティー券購入と寄付(の扱い)を同じにしなければならない。パーティーの対価の支払いも企業は禁止にすべきだ」と主張しました。
「議事録」
第213回通常国会 令和6年5月27日(月曜日) 政治改革に関する特別委員会 第6号
○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
今日は四人の参考人の皆様に貴重な御意見を賜り、ありがとうございます。
最初に、四人の皆さんに御質問をしたいと思っておりますが、自民党の今回の裏金問題とは何なのかということであります。
平野参考人は陳述の中で、裏金問題の本質の解明、これが中途半端にとどまっているのではないのかというお話をされ、これでまともな判断ができるのかということもおっしゃっておられました。谷口参考人の大手紙へのコメントなども拝見しますと、リクルート事件よりも根が深いということをおっしゃっておられたと承知をしております。
そこで、自民党の裏金問題とは何なのか、その本質について、過去の政治と金の事件との違いを踏まえた特徴などについて、それぞれ御意見を賜りたいと思います。
○谷口参考人 御質問ありがとうございます。
今般の事件に対する率直な感想としては、やはりとまさかの両面がございます。
まず、やはりと申しますところは、冒頭の意見陳述で申し述べさせていただきましたとおり、従来から、この政治資金パーティー制度には抜け穴がある、つくろうと思えば裏金がつくれてしまうというような制度になっているという危惧は、かねてより、私も含めて様々な研究者が指摘をしてまいったところでございます。ですので、今般、このようなパーティーを利用した裏金づくり、いわゆる裏金づくりが行われたということは、やはりそうであったかという思いがしておるところでございます。
他方で、それが当時の安倍派、二階派という権力の中枢にある政策集団において組織的に行われているということに関しては私も全く想定をしておらなかったわけでありまして、このような点については想定外、まさかという印象を抱いて、ここは早急に法律の所要の改正が必要であるというふうに感じておるところでございます。
○成田参考人 お答え申し上げます。
私は制度の専門家でありまして、実態は、特に最近は永田町から離れておりますので、承知をしておりません。
ただ、政治と金の問題というのは、古くは贈収賄だったわけですね。ところが、最近は贈収賄という言葉はほとんど姿を消しまして、最も頻繁に行われているのは不記載の問題になりました。裏金問題というのも不記載のことで起きているのだと思います。
どうして贈収賄ではなく不記載が増えているかというと、やはり、ざる法と言われながら、いろいろな規制制度ができてきて、贈収賄に至る手前のところで法律で規制ができ網にひっかかるようになっている、そのせいではないかというふうに考えています。
しかし、贈収賄にしても不記載にしましても、やはり基本は、政治に金がかかる、あるいは政治に金をかけている先生方がいらっしゃるということが根本にあるんだと思いまして、それで、やはり金のかからない政治を実現するということが基本ではないかというふうに考えております。
○川上参考人 どうもありがとうございます。
私は、参考人の陳述でも申し上げたように、慣れと甘えと行き過ぎ、これに驚いているところであります。
先ほど成田参考人からありましたが、昔でいうと、もうちょっとざくっと、リクルート事件とか未公開株を受け取るとか、そういう贈収賄に近いような形が多かったわけですけれども、曲がりなりにも政治資金規正法ができて、でも、派閥はお金を集めなければいけない、そうすると、各国会議員にノルマを課す。このぐらいはやってもいいだろう、大丈夫だろうという慣れがあった。甘えですよね、パーティー券をこれだけ売れば自分のものにしていいよねという甘え。そして、それが、多い人であれば何千万。行き過ぎであります。
だから、私は、前のリクルート事件だとか、そういう政治とお金の問題と違うのは、政治資金規正法はできたんだけれども、やはり政権政党の中に、特に派閥に、慣れと甘えと行き過ぎがあったのかなと。こういう慣れと甘えと行き過ぎは二度とあってはいけないのではないかというふうに考えております。
ありがとうございます。
○平野参考人 私は、細川改革が抜け道をつくったとかいろいろ批判は多いんですけれども、それなりに効果があって、やはり政治資金が、企業から寄附をなかなか集めにくくなった。そして、ちょうど二十年ぐらい前になりますと、日本のやはり経済、景気がよくない、非常に経済が停滞した。そうすると、各企業から、経費で落とせるものをパーティー券として買うようになる。それを裏金にするのにつくられたのが裏金キックバックの原理じゃないかと思います。
何のためにつくったかといいますと、ちょうどその頃、小泉政権がずっと続くわけですが、一時替わりますが、基本的にこの安倍派の政策の、政治は、私、一言で言えば金権カルト政治だったと思います。政治改革をさせない、政治改革を妨害するための資金づくりではなかったかと、僕はそこに本質があると思っております。
以上です。
○塩川委員 ありがとうございます。
次に、成田参考人と平野参考人にお尋ねをいたします。
岸田総理、自民党総裁は、自民党裏金問題の真相解明の努力は続けなければならないと述べておりますが、自民党の法案提出者に、裏金問題は、誰がいつから何のために行ったのか、こういう問いをしましても、知る立場にないというにべもない答弁だったわけであります。自民党の聞き取り調査報告書の聴取事項にも、誰がいつから何のために、こういったことは問いにもなっておりません。
そういう点でも、自民党として裏金問題のそもそもについて真相解明の努力を行っていないことについてどのようにお考えなのか、この点についてお答えいただければと思います。
○成田参考人 自民党が真相解明の努力を行っているか行っていないかということについては、私は、ちょっと全く見当がつきませんので、その点についてはお答えを申し上げることはできません。
ただ、先ほど平野参考人が言われましたように、政倫審というのは事実を解明するためのものではないというところは私も全く同感でございますが、平野参考人と少し意見を異にするところは、事実の解明のために予算委員会を使うというのは私は反対でございまして、やはり、国政の課題を停滞なく遂行していくというためには、予算委員会及びそのほかの委員会であっても、この第一委員室を使うような委員会の場は避けた方が適当であろう。
そういうためには、やはり調査会をつくりまして、そこで別トラックで真相解明をやっていくというのは欧米では普通のやり方でございまして、かなりの長期間、何年もかけて、なおかつ二十冊、三十冊の報告書を作るという努力をやって事実の解明をやるわけでございます。日本は、予算委員会でやって、それで混乱して、すぐ忘れて終わりということになりますけれども、やはり別トラックで調査会を設置して事実を究明していくというやり方を、今回のことに限らず、日本の国会も身につけることが適当ではないかというふうに考えております。
○平野参考人 予算委員会を止めてというのはちょっと極端なんですけれども、私は、予算の審議と、この日本の議会の崩壊の問題とを比べた場合に、国民の納得する範囲でそれはできると思います。そこのところは、一つの、私は多少暴言的なところもあったんですが、そこはやはり、民意、国民の意思、世論調査等も含めて、総合的な判断ができたと思う、この問題は。ロッキード事件とか、そのほかのあらゆる事件の中で、戦後の最大の日本の議会の崩壊の問題だったと私は思っております。
○塩川委員 ありがとうございます。
次に、谷口参考人と成田参考人にお伺いいたします。
三十年前のリクルート事件を機にした様々な政治と金の問題についての対処があったわけですけれども、そういった中で、谷口参考人から政党支部の問題の意見陳述をいただきました、成田参考人からは企業・団体献金によって日本の資源配分はゆがめられているという御発言もいただきました。
私はやはり、三十年前の政治改革と称するもので、政治と金の問題について、特に企業・団体献金について、政党支部への献金と政治資金パーティー券の購入という二つの抜け道をつくることで企業・団体献金を温存してきた、そこに今回の裏金問題にも通じる点があると考えます。
裏金問題の解決のためには、政党支部への献金、政治資金パーティー券の購入という企業・団体献金の二つの抜け道を塞ぐことが必要ではないかと考えますが、御意見を伺わせてください。
○谷口参考人 御質問ありがとうございます。
政治資金パーティーと企業・団体献金、二つについて御質問をいただきましたが、一つにまとめてお答えを申し上げたいというふうに思います。特に企業・団体献金についてでございます。
企業・団体献金につきましては、先ほど来、再三言及がなされておりますとおり、八幡製鉄事件の最高裁判決において、政治資金を寄附することは会社の権利能力の範囲内とされておるところでございますが、同判決の、会社は自然人たる国民と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進し又は反対するなどの政治行為をなす自由を有するなどとされた部分につきましては、行き過ぎであるという評価が憲法学の通説であります。判決自体も、企業・団体献金の弊害防止については立法に委ねておるというところは、本委員会においても既に指摘のあったところでございます。
恐らく、このような観点も含めて、平成の政治改革においては、企業・団体献金に対する規制を強化し、個人献金と政党助成をもってこれに代えるという方向性が打ち出されたものというふうに承知をいたしておりますので、その延長線上にあって、この際、企業・団体献金を禁止しようという主張も理解をできるものであります。
ただし、直ちに企業・団体献金を禁止いたしますと、例えば、従来、一つの企業から百万円の寄附がなされていたものが、当該企業の幹部二十名が個人として五万円ずつ寄附をするようになる、いわゆる個人献金への迂回が発生するものと予想をされます。実質的に当該企業から百万円の寄附がなされているのにもかかわらず、それが現在よりも見えにくくなってしまう、政治資金の流れの透明性をかえって妨げるおそれがあるわけでございます。
したがいまして、企業・団体献金を禁止する場合においては、更なる個人献金の促進策、政党交付金の在り方、あるいは政治資金の支出の在り方等を総合的に検討した上で、激変緩和のための経過措置も含めて実効性のあるロードマップを描かないと、副作用が主作用を上回る事態になりかねないことを懸念する次第でございます。
○成田参考人 まず、政党支部も政党として企業が献金ができるというのは、規正法二十一条第四項でございます。それで、この規定は、細川内閣の政府案で、政治献金は政党及び政党の政治資金団体に限るということにいたしましたときに、そうすると地方議員には政治資金が入らなくなるということで、地方議員が政党に対する企業献金を得られるようにということで挿入をされた規定でございます。
あのとき、自民党は、議員の政治団体にも企業献金を認めるという規定をしておりましたから、政党支部を政党にするという規定は不要ということで、随分あのときは自民党に攻撃されました。こういう規定はおかしいということで盛んに言われましたけれども、今、自民党が大変その恩恵を受けているのではないか、こういうふうに思っております。
それから、パーティーと企業献金と二つという問題は、まさに非常に日本の政治資金制度のゆがみ、つまり、モグラたたきを繰り返してきた結果、至った姿ではないかというふうに思っておりまして、要するに、企業献金を是認するのか否定するのか非常にはっきりしないということで、少なくとも、パーティーと寄附というものはやはり統一的に扱うのがいいんじゃないかというふうに思っておりまして。
諸外国ではパーティーは全て寄附なんです。それで、今回の提案の中では、立憲、国民共同提案がパーティー禁止ということになっておりますが、全てのパーティーが禁止になっておりますが、やはりパーティーというのは寄附を集めるのに最も適切なやり方であり、政治以外の一般の世界でもパーティーを使って寄附を集めるということはやっておりますから、パーティーを禁止するということはしないで、パーティーは寄附と同じである、したがって、寄附で企業献金を禁止するならパーティーの対価の支払いも企業は禁止するという統一的な扱いにするのが現実的ではないかというふうに思っております。
以上でございます。
○塩川委員 時間が参りました。終わります。