【内閣委員会】下水道の民間委託押し付けやめよ

 私は、埼玉県八潮市で発生した下水道破損に伴う道路陥没事故について、下水道の維持管理の困難さに着目した財政支援を求めるとともに、民間委託を推進するウォーターPPPを押し付ける政府を追及しました。

 私は、国土交通省が設置した対策検討委員会の家田仁委員長が、今回の事故の影響は激甚災害に相当するような重大な事態だと指摘するとともに、下水道の維持管理の困難さについて、▽常に上流から水が流れていて止めることが困難で、かつ迂回路を持たない▽地下の構造物の点検は人が入ることが難しい▽周辺の地盤の状況も不確定要素が大きい、などを挙げていることを紹介。復旧工事に対する補助嵩上げや下水道事業に対する特別の財政措置が必要だと強調しました。国土交通省は「しっかり支援できるよう検討していく」と従来通りの答弁に留まりました。

 私は、国が汚水管の改築に係る国費支援に関して、27年度以降、ウォーターPPP導入を決定済みであることを要件化するとしていることに対して「PPPを導入しなければ国の交付金を出さないなどという脅しのようなやり方は許されない」と批判。伊東良孝内閣府特命担当大臣は「一理あるなという思いだ」と述べつつ、具体策については答えませんでした。

 私は22年から上工下水道一体での官民連携事業が行われている宮城県では、運営権者は更新投資を378億円、人件費等を183億円削減する提案をしていると指摘。民間の利益追求のために安全のコストが削減されることになるとして「PPPの押し付けはやめよ」と主張しました。

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「議事録」

第217回通常国会 令和7年3月7日(金曜日)内閣委員会 第5号

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 埼玉県八潮市の下水道破損に伴う道路陥没事故に関連して、ウォーターPPP等について伊東大臣にお尋ねをいたします。

 トラックドライバーの救出に御尽力をいただきたいと思います。陥没事故現場のすぐ下流にあります中川流域の下水道処理施設は、全国に二千二百ある下水道事業の中で九番目に大規模で、破損により、下水道を利用する百二十万人の住民の方の生活に深刻な影響が出ました。

 国交省にお尋ねします。

 国交省の対策検討委員会では、政策研究大学院大学の家田仁委員長が、百二十万人という人数は一つの大都市、これが非常に長期にわたって影響を受けているというのは、自然災害でいえば激甚災害に相当するような重大な事態だと述べておられます。

 検討委員会の議論では、事故発生など緊急時における財政支援なども検討すべきという意見も出されております。八潮市の下水道復旧工事に対して、補助かさ上げなど、国が特別の財政支援を行うべきではありませんか。

○松原政府参考人 お答え申し上げます。

 国土交通省では、救助活動や下水道の応急復旧が速やかに進むよう、専門家による技術的助言を行うとともに、陥没箇所の水位を低下させるため排水ポンプ車を配備するなどの支援を行っているところです。

 復旧に向けましては、埼玉県が設置した復旧工法検討に関する有識者委員会に国土交通省の職員も参加するなどの技術的支援を行っておるところでございます。また、財政支援につきましても、復旧工事の内容などを踏まえつつ、しっかり支援できるよう検討してまいります。

○塩川委員 しっかり支援できるよう検討すると。その中身を具体的に示してもらいたいと思います。

 家田委員長は、下水道というのは上流から水が流れてくる、ほとんど止めることができない、しかも迂回路を持っていない、また、地下に設けられている構造物の点検は非常に難しい、中に人が入ることが難しいし、構造物の周辺の地盤の状況も不確定要素が大きいと指摘しておられます。硫化水素発生による施設の腐食という問題もあるわけであります。

 道路やトンネル、鉄道、河川施設といった他のインフラと大きく異なるのが下水道事業であります。このような下水道事業の更新に対する特別な財政措置ということを考える必要があるのではないのか、この点についても国交省にお尋ねします。

○松原政府参考人 お答え申し上げます。

 地下に埋設されている下水道は、老朽化が進行していることから、計画的な施設の更新や長寿命化を着実に実施するため、予防保全型メンテナンスへの転換を加速することが重要であると認識しております。

 そのため、国土交通省では、点検、調査に関する技術の開発など技術的支援に取り組むとともに、地方公共団体に対し、下水道ストックマネジメント計画の策定を求めた上で、この計画に位置づけられた施設の点検、調査や、その結果に基づく計画的な改築更新などの重要な対策について財政支援を行っているところです。

 また、国土強靱化実施中期計画の策定方針では、下水道の老朽化対策について、埼玉県八潮市での道路陥没事故も踏まえて検討することが位置づけられており、今回のような大規模な事故の再発を防止することができるよう、実施中期計画に必要な施策を盛り込むべく調整を進めてまいります。

 引き続き、今回の道路陥没事故も踏まえ、必要な技術的、財政的支援を行い、強靱で持続可能な下水道システムの構築に取り組んでまいります。

○塩川委員 下水道は他のインフラにはないような特殊性を持っている、そういった下水道事業に対する独自の財政措置というのは必要だ。当然、今回の八潮市における下水道破損の事故に伴う特別の財政措置を国として行うことを強く求めるものであります。

 伊東大臣にお尋ねします。

 下水道事業に関して、国は民間委託の推進を図り、PPP、PFI事業の推進を図ってきました。今回の事故に関する埼玉県の国への要望書では、「現在、国が推進しているウォーターPPPについては、インフラの長期に渡る更新に目途がつくまでは、慎重に検討していただくようお願いします。また、下水道に対する国の財政的支援については、ウォーターPPPを前提条件としない制度設計を再考いただくようお願いします。」と、国によるウォーターPPPの推進に対して慎重な対応を求めております。

 国は、汚水管の改築に係る国費支援に関して、ウォーターPPP導入を決定済みであることを令和九年度以降に要件化するとしております。ウォーターPPPを導入しなければ国の交付金は出さないなどという脅しのようなやり方は許されない。ウォーターPPPの押しつけはやめるべきではありませんか。

○伊東国務大臣 今回の事故、恐らく想像するに、下水道の破損、漏れたところから水が流れ出し、それが周りを浸食して拡大していったもの、このように思うところであります。

 もう少し一体的、計画的、広範囲にきちっとした流量あるいは流れる形を想像して行っていれば、もう少し違ったかなという思いがするところでありますけれども、今回は、そういった面では、老朽化する下水道施設、設備の中で、やはり一部の破損あるいは老朽化からこれが大きく進展してしまったと思うところでありまして、本当はもう少し大規模に、きちっとした形で整備計画をされるべきもの、私はそういうふうな受け止め方をしたところであります。

 ですから、国がウォーターPPPに最終的に地方公共団体が責任を持つことを前提にして今度事業を進めるということであろうかと思いますので、その点、私から見ますと、それもまた一理あるところもあるなという、そんな思いをちょっとしているところでもあります。

 いずれにいたしましても、国土交通省等々としっかり打合せをしながら、どこかが破損しても、流れても、流出しても、それが止めどもなく拡大してしまうようなことのないような計画の立て方、工事の在り方、これを研究していかなければという、そんな思いをしているところであります。

○塩川委員 県の要望に一理あるなというお話であれば、これはやはりウォーターPPPについて見直してほしいというこの県の要望を正面から受け止めるべきだと。

 埼玉県は、県議会の答弁でも、PPPの導入に当たっては、モニタリングや情報開示、災害時の対応など様々な課題があると、PPPに関する懸念を述べてきたところであります。

 ウォーターPPPの先進事例として、宮城県では二〇二二年四月から、上水道、工業用水と下水道一体のコンセッション方式でのPFI事業が行われております。宮城県はこれにより約一〇%のコストが削減できるとしていますが、本当にそれで削減されるものは何なのか。

 事業者の提案は、二十年間で上工下水道の更新投資を三百七十八億円削減し、人件費等を百八十三億円削減するというものであります。修繕費を百一億円増やして設備の延命化を図るということですが、安定した運営と維持管理に欠かせない設備更新や人件費を大幅にカットをすれば、安全性の後退は避けられない。

 民間の利益追求のために安全のためのコストが削減されるということになるのではありませんか。

○伊東国務大臣 両方とも、二つの考え方があると思います。

 一つは、計画的あるいは大規模的に整備をして、つなぎがきちっとなされていること、あるいは、場当たり的に、その地域地域、小さく小さく工事が行われて、継ぎ足しで行われてきているようなところ、これはいずれにしても、そういうところでの脆弱性というのは指摘されるのではないかなと思うところでもありまして、それらを含めて、やはりしっかりした見直しをしていかなければならないのではないか、このように思うところであります。

○塩川委員 二十年間の契約で、終わったら、ぼろぼろになった施設が押しつけられるだけだ、こんなことでは県民、市民の暮らしは守れないという点でも、問題だらけのPFIは、押しつけはきっぱりとやめるべきだということを申し上げて、質問を終わります。