国民の通信情報を常時収集・監視し、政府の判断で警察や自衛隊が海外のサーバに侵入・無害化する「能動的サイバー防御法案」が8日の衆院本会議で、自民、立民、維新、国民民主、公明などの賛成多数で可決されました。日本共産党と、れいわ新選組は反対しました。
私は反対討論で、同法案は「憲法と国際法を「踏みにじる」と批判し、廃案を求めました。
私は、政府があらゆる民間事業者と協定を結ぶことで、本人の同意なく利用者の情報を吸いあげることが可能になると指摘。「(憲法21条に基づく)国民の『通信の秘密』侵害法案にほかならない」と批判しました。
収集した情報の外国政府への提供も可能で、個人情報の目的外利用や第三者提供には本人の同意を事前に得るという大原則を無視していると強調しました。協定を通じ取得した情報は目的外利用の範囲に制限がなく、警察や自衛隊が自らの業務への使用も可能だと指摘。公安警察が市民運動を行う市民の個人情報を収集・提供したことが違法と断じられた大垣事件に触れ、「国民への監視強化の危険も深刻だ」と訴えました。 また、「無害化措置」について自衛隊や警察が、相手国の同意なく「疑い」だ けで実行すれば、「国際法違反の先制攻撃とみなされる危険がある」と強調。安保法制に基づく「重要影響事態」などの際、日本が武力攻撃を受けていないのに米国と交戦する国に行えば「『参戦』とみなされる。憲法9条を踏みにじり、 日本に戦争の危険を呼び込む」と批判しました。
さらに、警察が犯罪処罰を超えて域外への実力行使が可能となり、「日本の警察のあり方を根底から覆す」と批判。裁判所の令状なく実行できる上、第三者機関は権力の濫用防止や人権を保障する機関ではないと述べ、「令状主義が形骸化し、警察の権限拡大につながる」と強調しました。
以下、討論の全文です。
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私は、日本共産党を代表して、いわゆる「能動的サイバー防御」法案に対し、反対の討論を行います。
反対理由の第一は、「通信の秘密」を根本から覆す違憲立法だからです。
本法案は、サイバー攻撃の実態把握を口実として、送受信者の同意もなく、政府が電気通信設備から通信情報をコピーできるようにするものです。さらに、自治体を含む基幹インフラ事業者のみならず、あらゆる民間事業者と協定を結ぶことで、利用者情報の吸い上げを可能とします。まさに国民の「通信の秘密」の侵害法案に他なりません。
自動選別により機械的情報のみを分析するといいますが、機械的情報はIPアドレスや指令情報など「通信の秘密」の対象となるものであることは政府自身も質疑で認めています。
さらに、その自動選別も、特定のサイバー攻撃に関係する「機器などの探査が容易になると認めるに足りる状況のある情報」も含まれており、政府による恣意的な選別が行われる懸念はぬぐえません。
また、収集した情報は、外国政府など第三者提供も可能です。そもそも個人情報は、必要以上に収集しないこと、目的外利用や第三者提供は事前に本人同意を得ることが大原則です。政府がこれらをことごとく無視するもので、極めて重大だと言わなければなりません。
国民への監視強化の危険も深刻です。協定を通じて得た情報は、海外からのサイバー攻撃被害防止の目的以外にも利用できる規定が盛り込まれています。目的外利用の範囲に制限はなく、警察や自衛隊などが自らの業務に使用することも否定しませんでした。まさに公安警察が個人情報を収集・保有、提供したことについて違法と断じた大垣事件の判決をないがしろにするものであり、全く容認できません。
反対理由の第二は、自衛隊と警察が、憲法と国際法が禁じる先制攻撃に踏み込む危険があるからです。
サイバー攻撃に関する世界の共通認識がいまだ形成途中であることは政府も認めるところです。そのような中、自衛隊と警察が海外の機器に対して侵入し、監視し、その機器を使えなくする「アクセス・無害化措置」を行えば、相手国から主権侵害と受け取られる危険があります。政府は国際法上の緊急状態によって違法性を阻却できると言いますが、そのように主張しているのは一部の国だけで、国際社会の共通認識とはなっていません。にもかかわらず、相手国の同意もなく、しかも「疑いがある」だけで、そのような措置にふみきれば、国際法違反の先制攻撃と評価される危険は否定できません。
さらに政府は、自衛隊による「アクセス・無害化措置」について、いわゆるグレーゾーン事態や重要影響事態で、米軍が軍事行動を行う相手国のサーバーに発動できることを認めました。日本が武力攻撃を受けていないにもかかわらず、アメリカと交戦状態にある相手国に対して、日本が先制的に「アクセス・無害化措置」にふみきることになれば、日本の側から参戦してきたとみなされ、エスカレーションの引き金を引くことになりかねません。憲法9条をふみにじり、日本に戦争の危険を呼び込むものであり、断じて容認できません。
また、警察が犯罪処罰を超えて安全保障に関わる域外の実力行使にふみこむことは、他国の領域主権を侵害し、日本の警察のあり方を根底から覆すものです。こうした行為を、裁判所の令状さえなく、第三者機関の承認などというまやかしで容認するものです。その第三者機関はあくまで法における措置の適正な実施を確保するための審査及び検査を行うための機関にすぎません。権力の濫用防止や、人権を保障する機関ではありません。戦前の反省のもと、警察権の乱用が起きないようとってきた令状主義の形骸化につながりかねず、警察の権限拡大そのものであり、全く認められません。
以上、憲法と国際法をふみにじる本法案の廃案を求め、討論を終わります。
国民監視・戦争呼び込む危険/能動的サイバー法案/衆院通過/共産党反対/塩川氏が討論
国民の通信情報を常時収集・監視し、政府の判断で警察や自衛隊が海外のサーバーに侵入・無害化する「能動的サイバー防御法案」が8日の衆院本会議で、自民、立民、維新、国民民主、公明などの賛成多数で可決されました。日本共産党、れいわ新選組などは反対しました。共産党の塩川鉄也議員は反対討論で、同法案は「憲法と国際法を踏みにじる」と批判し、廃案を求めました。(関連3・反対討論要旨4面)
塩川氏は、政府があらゆる民間事業者と協定を結び本人の同意なく利用者情報を吸いあげることが可能になると指摘。「(憲法21条に基づく)国民の『通信の秘密』侵害法案にほかならない」と批判しました。
収集した情報の外国政府への提供も可能で、個人情報の目的外利用や第三者提供には本人の同意を事前に得るという大原則を無視していると強調しました。協定を通じて取得した情報について、目的外利用の範囲に制限がなく、警察や自衛隊が自らの業務への使用も可能だと指摘。公安警察が市民運動を行う市民の個人情報を収集・提供したことが違法と断じられた大垣事件に触れ、「国民への監視強化の危険も深刻だ」と訴えました。
また、「無害化措置」について自衛隊や警察が、相手国の同意なく「疑い」だけで実行すれば、「国際法違反の先制攻撃とみなされる危険がある」と強調。安保法制に基づく「重要影響事態」などの際、日本が武力攻撃を受けていないのに米国と交戦する国に行えば、「『参戦』とみなされる。憲法9条を踏みにじり、日本に戦争の危険を呼び込む」と批判しました。
さらに、警察が犯罪処罰を超えて域外への実力行使が可能となり、「日本の警察のあり方を根底から覆す」と批判。裁判所の令状なく実行できる上、第三者機関は権力の乱用防止や人権を保障する機関ではないと述べ、「令状主義が形骸化し、警察の権限拡大につながる」と強調しました。
能動的サイバー防御法案/共産党の論戦が危険暴く/違憲 違法 廃案しかない
8日に衆院を通過した「能動的サイバー防御法案」を巡っては、個人情報の監視・収集による憲法21条が保障する「通信の秘密」の侵害、自衛隊と警察が憲法と国際法が禁じる先制攻撃に踏み込んで戦争を招くリスク、警察に令状さえ不要な実力行使の容認など、日本共産党の国会論戦で、その危険な実態が浮き彫りになりました。
通信の秘密 根底から覆す
法案は、政府が国民の通信情報を送受信者の同意なく電気通信設備からコピーできるとしています。日本共産党の塩川鉄也議員が「通信の秘密、プライバシー権の侵害そのものだ」と追及すると石破茂首相は「『通信の秘密』に対する制約は必要やむを得ない限度にとどまる」と侵害することを認めました。
塩川氏は、電気・水道など基幹インフラ事業者と協定を結べば、その利用者の通信情報が政府に提供されることについて、重要インフラであればほぼすべての国民が利用者にあたると追及。内閣官房の小柳誠二審議官は、重要インフラ事業者に限らず、自治体、家電や自動車メーカーなどあらゆる民間事業者と協定さえ結べば、利用者の情報を吸い上げることが可能であると認めました。
政府は「自動選別」でIPアドレス(ネットワーク上の住所)など「機械的情報」のみを分析するとしていますが、塩川氏の追及に対し小柳氏は「機械的情報」も「『通信の秘密』の保護を受ける」対象だと認めました。塩川氏は「自動選別」情報には「(政府が)機器などの探査が容易になると認めるに足りる情報」も含まれると指摘し、「恣意(しい)的な選別が行われる懸念はぬぐえない」と強調しました。まさに国民の「通信の秘密」を侵害する法案にほかなりません。
法案は、収集した情報を外国政府など第三者に提供することが可能な仕組みです。日本共産党は、必要以上に収集せず、目的外利用や第三者提供は事前に本人同意を得るという個人情報保護の大原則をことごとく無視するもので極めて重大だと追及しました。
塩川氏が、協定当事者の同意を得れば、取得した情報をサイバー攻撃の被害防止以外の目的に利用できる同法案の規定についてただすと、小柳氏は規定の存在を認めた上で、同規定が警察や自衛隊にも準用されると答弁しました。
塩川氏が、警察や自衛隊がサイバー攻撃の被害防止とは無関係な自らの業務に取得した情報を利用できてしまうと追及すると、平将明デジタル相は「利用目的は必ずしも特定被害防止目的に限られない」と認めました。
塩川氏は、脱原発運動や平和運動をしていた市民の個人情報を公安警察が収集・保有、提供したことを違法とする判決が出た「大垣事件」を挙げ、取得した情報が「市民運動を監視する目的で使われる可能性もある」と指摘しました。法案はこの判決をないがしろにするものです。
先制攻撃と評価 戦争招く
法案は、警察や自衛隊が疑わしいと判断したサーバーに侵入・監視し、その機器を使用不能にする「アクセス・無害化措置」を可能としています。政府は、同措置を国外にあるサーバーなどに対し行う場合、「緊急状態」(緊急避難)等の国際法上の法理を援用するなどして、国際法上許容される範囲で実施するとしています。
この点について塩川氏は、海外で緊急避難の「援用」が認められるとの見解を表明しているのはドイツ、オランダ、ノルウェーにとどまると指摘し、「援用」は「国際社会の共通認識にはなっていない」と追及。岩屋毅外相は「サイバー行動に適用される国際法について自国の詳細な立場を対外的に網羅的に明らかにしている国は一部にとどまる」と認めました。
塩川氏は「通信の傍受や他国領域に存在する情報システムに対するサイバー行動そのものが主権侵害を構成し得る」(ブラジル)など他国の見解を示し、「無害化措置の根拠に緊急避難を挙げても相手国から主権侵害を主張される恐れがある」と批判しました。
相手国の同意もなく「疑いがある」だけで同措置に踏み切れば、国際法違反の先制攻撃と評価される危険があります。
日本共産党の赤嶺政賢議員は、平時でも有事でもない「グレーゾーン事態」や安保法制に基づく「重要影響事態」の際も、米国が軍事行動を行う相手国に対し同措置などが可能なのかと追及。「特定の事態の発生の有無にかかわらず可能」と述べた平氏に対し、「日本が武力攻撃を受けていないにもかかわらず措置に踏み切れば相手国から参戦してきたとみなされる」と批判しました。
同措置が事態のエスカレーションの引き金を引くことになりかねません。憲法9条を踏みにじり、戦争の危険を呼び込むものです。
政府が、同措置は令状の必要な捜査行為ではないとしていることについて塩川氏が警察権乱用の危険を指摘すると、平氏は、第三者機関の承認などがあるため「乱用する恐れはない」と強弁。塩川氏は、同機関は人権を保障する機関ではなく、中身がブラックボックスで、首相が任命する組織であり独立機関と言えないと反論しました。
塩川氏は「警察が犯罪処罰を超えて安全保障に関わる域外の実力行使に踏み込むことは、他国の領域主権を侵害し、日本の警察のあり方を根底から覆す」と述べ、「戦前の反省のもと、警察権乱用が起きないようとってきた令状主義の形骸化につながりかねず、警察の権限拡大そのものだ」として廃案を迫りました。
「能動的サイバー防御」法案/塩川議員の反対討論(要旨)/衆院本会議
「しんぶん赤旗」4月9日・4面より
日本共産党の塩川鉄也議員が8日の衆院本会議で行った「能動的サイバー防御」法案についての反対討論の要旨は次の通りです。
反対理由の第一は、「通信の秘密」を根本から覆す違憲立法だからです。
本法案は、サイバー攻撃の実態把握を口実に、送受信者の同意もなく、政府が電気通信設備から通信情報をコピーでき、自治体を含む基幹インフラ事業者やあらゆる民間事業者と協定を結ぶことで利用者情報の吸い上げを可能とします。
自動選別で分析する機械的情報はIPアドレスや指令情報など「通信の秘密」の対象となると政府も質疑で認めています。特定のサイバー攻撃に関係する「機器などの探査が容易になると認めるに足りる状況のある情報」も含まれ、政府による恣意(しい)的な選別が行われる懸念はぬぐえません。収集情報は外国政府など第三者提供も可能です。個人情報は必要以上に収集せず、目的外利用や第三者提供は事前に本人同意を得るのが大原則です。これらを無視するもので極めて重大です。
協定で得た情報は海外からのサイバー攻撃被害防止目的以外にも利用できる規定が盛り込まれ、目的外利用の範囲に制限はなく、警察や自衛隊などが業務に使用することも否定しませんでした。公安警察の個人情報収集・保有、提供は違法と断じた大垣事件判決をないがしろにするものです。
反対理由の第二は、自衛隊と警察が、憲法と国際法が禁じる先制攻撃に踏み込む危険があるからです。
サイバー攻撃に関する世界の共通認識はいまだ形成途中で、自衛隊と警察が海外の機器に侵入し、監視し、使えなくする「アクセス・無害化措置」を行えば、相手国から主権侵害と受け取られる危険があります。政府は国際法上の緊急状態によって違法性を阻却できると言いますが、そう主張するのは一部の国だけで、国際社会の共通認識ではなく、相手国の同意もなく「疑い」だけでそのような措置にふみきれば、国際法違反の先制攻撃と評価される危険は否定できません。
政府は、自衛隊による「アクセス・無害化措置」を、グレーゾーン事態や重要影響事態で、米軍が軍事行動を行う相手国のサーバーに発動できると認めました。日本が武力攻撃を受けていないのに、米国と交戦状態にある相手国に先制的に「アクセス・無害化措置」にふみきれば、日本から参戦してきたとみなされかねず、憲法9条をふみにじり、日本に戦争の危険を呼び込むものです。
警察が犯罪処罰を超えて安全保障に関わる域外の実力行使にふみこむのは、他国の領域主権を侵害し、警察のあり方を根底から覆し、こうした行為を裁判所の令状もなく第三者機関の承認などのまやかしで容認するものです。第三者機関は法における措置の適正な実施を確保するための審査や検査を行う機関にすぎず、権力乱用防止や人権保障の機関ではなく、令状主義を形骸化させかねず、警察の権限拡大そのものです。