日本学術会議を解体する法案の参考人質疑を行いました。学術会議前会長の梶田隆章氏は法案に強い懸念を表明。「学術会議との真摯な協議を欠き、同意を得ないまま、組織・会員選考などの変更を法定化すること自体、ナショナルアカデミーの独立性・自律性を脅かす懸念がある」と述べ、再検討を強く求めました。
法案は、国の特別の機関である学術会議を特殊法人化。首相任命の監事や外部者でつくる会員の選定助言委員会などを新設します。
梶田氏は、学術会議は自律的に改革の方策を議論し実行してきたと述べ「新たな学術会議法を求めたことはない」と強調。「科学者の総意の下に」設立されると明記した現行法の前文を法案は削除していると批判し「科学者の総意の下と言えない組織が学術的に国を代表する機関なのか」と述べました。
梶田氏は、法案は国が幾重にも学術会議を監督する仕組みになっていると指摘。補助金は政府の裁量によるので不安定だと懸念し、法人発足時に特別な方法で会員を選考するのも「極めて不自然」だと強調しました。
私は、会員の選考は、ナショナルアカデミーの独立性、自律性の根幹だと指摘。法案の会員選考は学術会議の自主性、独立性を損なうのではないかと質問。梶田氏は主要国のアカデミーはいずれも現会員が次期会員を自律的に選考していると答弁しました。
日本弁護士連合会憲法問題対策本部副部長の福田護氏は、政府が法案の目的としている「独立性の徹底」との説明は成り立たないと主張しました。菅義偉首相による会員任命拒否に対し理由の説明と任命を求め続けていることなどから分かるように「学術会議は十分に独立して活動している」と指摘。「学術会議の独立性を違法に侵害した任命拒否について政府自身の責任を放置したまま、逆に学術会議を廃止して新たな法人にしようとする本法案は本末転倒であり、法的正義に反する」と主張しました。
私は憲法23条が保障する学問の自由について質問。福田氏は、法案は学術会議への制約が非常に大きいとして「学術会議の中で学問の自由が貫かれるかは、大変大きな危惧を持たざるを得ない」と述べました。
筑波大学長・国立大学協会長の永田恭介氏、元文部科学省科学技術・学術政策局長の有本建男氏は、法案に賛成の立場を表明しました。
内閣委員会は、委員会散会後に理事会を再開し、自民党が法案の委員会採決を9日に行うことを提案しました。私は「参考人質疑で、法案の問題点が改めて明らかになった。十分な審議が必要だ」と審議の継続を求め、引き続き協議を行うことになりました。
学術会議同意なく独立性脅かす/衆院委参考人質疑/梶田前会長ら解体法案批判/塩川議員が質問
衆院内閣委員会は7日、日本学術会議を解体する法案の参考人質疑を行いました。前学術会議会長の梶田隆章氏は法案に強い懸念を表明。「学術会議との真摯(しんし)な協議を欠き、同意を得ないまま、組織・(会員)選考などの変更を法定化すること自体、ナショナルアカデミーの独立性・自律性を脅かす懸念がある」と述べ、再検討を強く求めました。(参考人の陳述要旨4面)
法案は、国の特別の機関である学術会議を特殊法人化し、首相任命の監事や外部者でつくる会員の選定助言委員会などを新設します。
梶田氏は、学術会議は自律的に改革の方策を議論し実行してきたと述べ「新たな学術会議法を求めたことはない」と強調。「科学者の総意の下に」設立されると明記した現行法の前文を法案は削除していると批判し「科学者の総意の下と言えない組織が学術的に国を代表する機関なのか」と述べました。
梶田氏は、法案では国が幾重にも学術会議を監督する仕組みになっていると指摘。補助金は政府の裁量によるので不安定だと懸念し、法人発足時に特別な方法で会員を選考するのも「極めて不自然」だと強調しました。
日本共産党の塩川鉄也議員は、法案の会員選考は学術会議の自主性・独立性を損なうのではないかと質問。梶田氏は主要国のアカデミーはいずれも現会員が自律的に選考していると答弁しました。
日本弁護士連合会憲法問題対策本部副本部長の福田護氏は、政府が法案の目的としている「独立性の徹底」との説明は成り立たないと主張しました。菅義偉首相(2020年当時)による会員任命拒否に対し理由の説明と任命を求め続けていることなどから分かるように「学術会議は十分に独立して活動している」と指摘。「学術会議の独立性を違法に侵害した任命拒否について政府自身の責任を放置したまま、逆に学術会議を廃止して新たな法人にしようとする本法案は本末転倒であり、法的正義に反する」と主張しました。
塩川氏は憲法23条が保障する学問の自由について質問。福田氏は、法案は学術会議への制約が非常に大きいとして「学術会議の中で学問の自由が貫かれるかは、大変大きな危惧を持たざるを得ない」と述べました。
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学術会議解体法案で参考人質疑/衆院内閣委/意見陳述の要旨/前日本学術会議会長 梶田隆章氏
「しんぶん赤旗」5月8日・4面より
衆院内閣委員会が7日行った学術会議解体法案についての参考人質疑での梶田隆章・前日本学術会議会長と福田護・日弁連憲法問題対策本部副本部長が行った意見陳述の要旨は次の通りです。
日本学術会議は2021年4月22日の総会で「日本学術会議のより良い役割発揮に向けて」を決定しました。現行の日本学術会議の設置形態はナショナルアカデミーの5要件を満たしており、変更する積極的理由を見いだすことは困難と結論しています。
日本学術会議は新しい日本学術会議法を求めたことはありません。現行の日本学術会議法の前文は、法案からなくなり、「科学者の総意の下」の文字も消えています。「科学者の総意の下」と言えない組織が科学者の賛同を得て学術的に国を代表する機関なのか懸念があります。
日本学術会議との真摯(しんし)な協議を欠き同意を得ないまま、独立性や自律性に多大な影響を与えうる組織選考などを変更し法定化すること自体がナショナルアカデミーの独立性、自律性を脅かす懸念があります。
現在の日本学術会議法は、独立してその職務を行うとして「独立」が明記されていますが、法案では「独立」の文字は消えています。運営における自主性、自律性は配慮義務にとどまっており、独立性への懸念があります。
昨日、国際学術会議から、日本政府による日本学術会議の運営と会員選考の手続きに干渉しようとする度重なる試みに対し深い懸念を表明するとのメッセージを受け取りました。
第25期学術会議では、会員選考方針を自律的に定め、新会員の選考対象者をより広くから求めました。選考には年齢、ジェンダー、地域などの多様性にも配慮するなど、改革を進めながら行いました。
法案では、新たな法人発足時の会員選考に特別な選考方式が法定されています。発足時に特別な選考を行わなければならない理由はなく、極めて不自然な選考方式で懸念があります。通常時の会員選考では、会員以外から構成される選定助言委員会が選定方針のみならず、候補者選定についても意見を述べることができるとされています。候補者選定は特定の外部の影響を受ける懸念があります。
法案は、日本学術会議が求めているナショナルアカデミーの5要件と、日本学術会議の機能強化に資するものかどうかの点で懸念が拭えません。
日本学術会議がより良く役割機能を果たす観点から法案の再検討を強く求めます。性急な改革が学術に大きな混乱をもたらす懸念は、他国の例でも明らかになりつつあると思います。