日本学術会議を解体し、政府の監督下に置く日本学術会議法案が1日の衆院本会議で、自民、公明、日本維新の会の賛成多数で可決しました。日本共産党と、立憲民主、国民民主、れいわ新選組、参政、日本保守の各党は反対しました。
反対討論に立った私は、政府にはそもそも法案提出の資格がないと指摘。違法な学術会議会員候補の任命拒否を撤回せず「乱暴なやり方で『学問の自由』を踏み荒らす姿勢に断固抗議する」と述べました。
法案は、国の特別の組織である学術会議を特殊法人化し、首相任命の監事や外部者でつくる助言委員会などを新設。現行の日本学術会議法前文には「科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献」との文言がありますが、その前文は削除されます。
私は「戦前の日本が学術を政治に従属させ、学術が戦争遂行に加担したことへの痛苦の反省の上に『学問の自由』を保障する憲法に立脚し、科学者の総意の下、平和的復興への貢献を使命とした戦後の出発点を消し去ることは許されない」と批判しました。
坂井学内閣府担当相が9日の法案質疑で「特定のイデオロギーや党派的主張を繰り返す会員は解任できる」などと答弁したことを巡り、私は「政府の意に沿わない会員は、学識にかかわらず『党派的』と決めつけ排除する法案だ」と指摘し、「学問の自由」「思想信条の自由」へのあからさまな侵害だと批判。法案の本質は、学術会議の独立性を奪い、軍事研究はじめ政府・財界の意に沿うよう学術界を動員することだと強調し、「日本の進路をも誤らせる」と警告しました。
私は、学術会議の4月の総会声明が法案に深刻な懸念を示していることを重く受け止めるよう要求。法案に反対する多くの学者や市民とともに廃案に力を尽くすと表明しました。
賛成討論に立った維新の会の三木圭恵議員は、日本共産党が過去に学術会議の会員選考に介入したなどと主張。私は、事実をゆがめた暴言だと抗議し、撤回を求めました。
反対討論の要旨は次の通りです。
先ほどの日本維新の会の三木圭恵議員のわが党に対する発言は、事実を歪めた暴言で断じて認められません。統一協会の主張の丸写しで、維新の会の知的退廃と堕落を露呈しています。このような賛成討論をするしかないこと自体、本法案がいかに道理がないかを証明しています。断固抗議し撤回を求めます。
そもそも政府には本法案を提出する資格がありません。安倍・菅両政権が行った会員候補6人に対する違法・不当な任命拒否を撤回せず、理由も明らかにしないまま、一方的に現行の学術会議を全く別組織につくりかえ、「学問の自由」を踏み荒らす政府の姿勢に断固抗議します。
法案が廃止を明記した現行の日本学術会議法は、前文で「科学者の総意の下にわが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与する」と設立の趣旨をうたっています。戦前の日本が学術を政治に従属させ、学術の側も戦争遂行に加担したことへの痛苦の反省の上に「学問の自由」を保障する日本国憲法に立脚し、科学者の総意の下平和的復興への貢献を使命とした戦後の出発点を消し去ることは、到底許されません。
重大なことは、坂井学内閣府担当相が「特定のイデオロギーや党派的主張をくりかえす会員は、今度の法案では解任できる」と答弁したことです。政府の意に沿わない会員は、学者の学識にかかわらず「党派的」と勝手に決めつけ排除する法案だと述べたものです。「学問の自由」「思想信条の自由」へのあからさまな侵害で、法案の本質が、学術会議を解体して独立性を奪い、軍事研究をはじめ政府や財界の意に沿う方向への学術界の動員であることを示すものです。この道が、学問の自由を奪い、学術の衰退をもたらし、日本の進路をも誤らせることは歴史の教訓です。国学術会議の運営・財務、会員選考にまで政府が介入できる仕組みをつくろうとしていることに対し、学術会議の総会声明が「独立性の阻害が意図されている」と深刻な懸念を表明したことを重く受け止めるべきです。日本の学術を圧殺する法案に反対する多くの学者学協会や市民とともに、廃案にするため最後まで力を尽くします。
学術会議解体法案/自公維強行/学問の自由 踏み荒らす/衆院通過/塩川議員が反対討論
日本学術会議を解体し、政府の監督下に置く日本学術会議法案が13日の衆院本会議で、自民、公明、日本維新の会の賛成多数で可決しました。日本共産党と立憲民主、国民民主、れいわ新選組、参政、日本保守の各党は反対しました。
反対討論に立った日本共産党の塩川鉄也議員は、政府にはそもそも法案提出の資格がないと指摘。学術会議会員候補の違法な任命拒否を撤回せず「乱暴なやり方で『学問の自由』を踏み荒らす姿勢に断固抗議する」と述べました。
法案は、国の特別の機関である学術会議を特殊法人化し、首相任命の監事や外部者でつくる助言委員会などを新設。現行の日本学術会議法から「科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献」との文言のある前文を削除します。
塩川氏は「戦前の日本が学術を政治に従属させ、学術が戦争遂行に加担したことへの痛苦の反省の上に『学問の自由』を保障する憲法に立脚し、科学者の総意の下、平和的復興への貢献を使命とした戦後の出発点を消し去ることは許されない」と批判しました。
坂井学内閣府担当相が9日の法案質疑で「特定のイデオロギーや党派的主張を繰り返す会員は解任できる」などと答弁したことを巡り、塩川氏は「政府の意に沿わない会員は、学識にかかわらず『党派的』と決めつけ排除する法案だ」と指摘し、「学問の自由」「思想信条の自由」へのあからさまな侵害だと批判。法案の本質は、学術会議の独立性を奪い、軍事研究はじめ政府・財界の意に沿うよう学術界を動員することだと強調し、「日本の進路をも誤らせる」と警告しました。
塩川氏は、学術会議の4月の総会声明が法案に深刻な懸念を示していることを重く受け止めるよう要求。法案に反対する多くの学者や市民とともに廃案に力を尽くすと表明しました。
賛成討論に立った維新の会の三木圭恵議員は、日本共産党が過去に学術会議の会員選考に介入したなどと主張。塩川氏は、事実をゆがめた暴言だと抗議し、撤回を求めました。(関連2・3面、塩川氏の反対討論要旨5面)
維新・三木氏、また暴言/学術会議/平和理念を敵視/退廃と堕落を露呈
「しんぶん赤旗」年5月14日・2面より
日本維新の会の三木圭恵議員は日本学術会議解体法案を採決した13日の衆院本会議で、日本共産党の宮本顕治氏が1950年発行の機関誌『前衛』47号で「学術会議選挙で党員専門家が最高点を得た成果について『アカハタ』は大きくとり上げた」と述べていたことをあげ、「あからさまに会員選挙に党として介入した」などと述べました。
日本共産党の塩川鉄也議員は直後に行った反対討論の冒頭、三木氏の発言について「事実をゆがめた暴言で断じて認められない。暴言は統一協会の主張を丸写ししたものであり、維新の会の知的退廃と堕落を露呈したもの。このような賛成討論しかできないこと自体が、本法案がいかに道理がないかを証明するものだ」と厳しく批判しました。
塩川氏の批判は当然です。設立当時の学術会議は会員公選制をとり、科学者による直接選挙で会員を選んでいました。それぞれの候補者の思想・信条も公表したうえで、有権者である科学者の投票に委ねられていました。立候補した学者がどういう政治信条をもっているかは、その学者の学識に関わるものです。
日本共産党が学術会議に不当に介入、干渉していたかのように描くことは、まったく事実の歪曲(わいきょく)です。共産党員学者が立候補していたことで混乱が起きたという事実はどこにもありません。公選のもとで「党員専門家が最高点を得た」ことは、党としても誇るべきことで、当時、機関紙「アカハタ」が大きく取り上げたことは自然なことです。
会員は、その研究・業績を評価されて選出・推薦されてきました。その個人的思想・信条によって選別されることがあってはならないはずです。
もし共産党に所属する学者が会員になることが「介入」だというなら、自民党の猪口邦子参院議員が学術会議会員を務めた(2005年から)ことも「介入」だということになります。三木氏は全く制度の仕組みを理解せず、知性のかけらもないでたらめな攻撃をしているにすぎません。
一方で三木氏は、この日も「学術会議は設立以来、軍学共同反対のスローガンのもと、かたくなに国防技術の研究への協力を拒み続け、そのことが科学技術一般の進歩の妨げになってきた」などと言い放ちました。まさに「軍事、戦争によって科学技術が発展する」という軍事至上主義の本性を自ら語るものです。戦争がなければ科学の発展はないのか。そして核兵器開発に示されるように戦争によって科学の「発展」があったとしても、それが倫理に反することはないのか。その反省に立って、日本学術会議が「平和的復興」への貢献を理念に戦後の出発をしたのではないか。学術会議解体法案審議の根本問題として、厳しく問われます。
学術会議法案衆院通過/消える戦争の反省
「しんぶん赤旗」5月14日・3面より
学術会議解体法案が13日、衆院本会議で採決され、自民、公明、日本維新の会の賛成で通過し、参院に送られました。学問の平和利用という根本理念や学問の自由を脅かす重大な法案をわずか3日の実質審議で採決強行したことに、厳しい批判の声が上がっています。
狙いは軍事動員
政府案の最大の問題は、学術を軍事動員するために、これに抵抗する学術会議を解体するというその狙いにこそあります。防衛装備庁が2015年から始めた大学・研究機関に対し資金提供する軍事研究の委託制度である「安全保障技術研究推進制度」に対し、学術会議が17年の声明で慎重姿勢を呼び掛けました。防衛装備庁や自民党、軍需産業の関係者らから学術会議を敵視する発言が相次いでいました。
法案審議の中で、この狙いをあからさまに示す発言が出されました。
日本維新の会の三木圭恵議員は4月18日の衆院本会議で、17年の学術会議の声明が、1950年の「戦争を目的とする研究は絶対にこれを行わない」声明、67年の「軍事目的のための研究を行わない」声明を引用していることも示し「(学術会議は)防衛に関する研究を拒否し続けている」「かたくなな軍学共同反対のスローガンは改めろ」と壇上から叫んだのです。5月9日の内閣委員会でも同氏は、17年の声明で「多くの大学が軍事的安全保障研究にしり込みするようになった」と述べ、13日の本会議では「今後は防衛技術の研究に貢献していただきたい」などと言い放ちました。いずれの場面でも自民党席から喝采の拍手が湧き起こりました。
自公が公然と語れない学術会議解体の狙いをあけすけに代弁する、補完勢力としての本性をむき出しにしたのです。
意見違えば排除
国会審議を通じて、法案の危険性が明らかになりました。
日本共産党の塩川鉄也議員は、同法案が現行の学術会議法の前文を削除していることについて、「文化、平和の文言が消え、社会課題の解決に寄与することを目的とし、学術を経済社会の健全な発展の基礎と置き換えている」と指摘。学問の自由を保障する憲法に立脚した学術会議の理念を否定するものだと批判しました。坂井担当相は「継続性は失われることはない」と繰り返し、「表現を変えた」と称して「平和、文化」を削除した理由を答えられませんでした(4月25日、衆内閣委)。
現行法の「独立して職務を行う」の規定を削除した同法案は、幾重にも学術会議の独立性と自律性を侵害する仕組みを設けています。新たに「監事」や「評価委員会」が置かれ、活動を監督。両者とも会員以外から「内閣総理大臣が指名」します。会員選考では、会員以外の者でつくる選定助言委員会が選定方針や候補者選定に意見を述べるなどと規定。5月7日の参考人質疑で、梶田隆章前学術会議会長は独立性を奪われることに懸念を繰り返し表明しました。
坂井担当相は「特定のイデオロギーや党派的な主張を繰り返す会員は、学術会議の中で、今度の法案の中で、解任ができる」と発言。法案には「解任」の規定(32条2項)が新設され、「(会員が)著しく不適当な行為をしたとき」は解任を求めることができるとしています。「著しく不適当」が何かは不明確です。「特定のイデオロギーや党派的な主張を繰り返す」ことを「不適当」だとして、解任できるとなれば、学者の学識にかかわらず、「党派的」と決めつけて排除することになります。
“お抱え研究者”化の恐れ
学術会議法学委員会委員長 同志社大学教授 川嶋四郎さん
日本学術会議の法学委員会委員長として、内閣府に同法案のさまざまな問題点を指摘してきた川嶋四郎同志社大学教授に、政府の主張のいいかげんさと、同法案が成立することの危険性を聞きました。(若林明)
政府の法案は、現行の学術会議法の前文を無くしています。前文の中に「平和的復興」および「文化国家」という言葉があり、戦後期の将来に向けたあるべき姿が書かれています。
現行の学術会議法は、各学問分野から選ばれた構成員でつくられる学術体制刷新委員会の答申に基づいて制定されました。まさに科学者の総意を体現する法律であり、前文は法律のそういった基本的性格を顕著に示しています。
学術会議法の制定時には、科学者が国家に動員され、戦争に動員され、結局、国家を破滅に導いてしまったという自責の念が当然ありました。国民の福祉と利益のため、国民の皆が豊かになるように活用されるべき科学が、戦争に悪用された。それは許されないという強い反省のもとにつくられたことも前文は示しています。
科学者を代表する学術会議の同意を得ることなく前文を廃止し、勝手に新たな基本目的に変更することは、学術会議を根本的に変質させる危うさがあります。
内閣府は、法案は(組織について定める)組織法にすぎず、「前文」はいらないと言っていますが、学術会議法は、日本の科学全体の将来のあり方を考えていこうという「基本法」の性質も持っているのです。
内閣府は、前文の内容が、各条文に書かれているといいます。法案が削除した現行法の「科学が文化国家の基礎」「わが国の平和的復興」は、法案の「学術に関する知見が人類共通の知的資源」「経済社会の健全な発展」に含まれていると説明します。しかし、戦前は「満蒙(まんもう)は日本の生命線」と言って、日本のみ「経済」的な「発展」のために侵略戦争を正当化したのです。
政府は「独立性の問題はありません」と言いつつ、法案には、人事、活動、予算を監視・監督する仕組みを幾重にもつくられています。結局は、政府が関与・介入し、政府が統制できる組織をつくろうとしているということは明らかです。
自由な知の探究が認められていることを前提に、多様な考え方を認めることが学問の進歩を促し、それが国民の利益につながるのです。学術会議を、目先の「政治的利害」ばかり重視するお抱え“研究者集団”にしてはいけません。
衆院本会議・学術会議解体法案/塩川議員の反対討論(要旨)
「しんぶん赤旗」5月14日・5面より
日本共産党の塩川鉄也議員が13日の衆院本会議で行った日本学術会議解体法案に対する反対討論(要旨)は次の通りです。
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先ほどの日本維新の会の三木圭恵議員のわが党に対する発言は、事実をゆがめた暴言で断じて認められません。統一協会の主張の丸写しで、維新の会の知的退廃と堕落を露呈しています。このような賛成討論をするしかないこと自体、本法案がいかに道理がないかを証明しています。断固抗議し、撤回を求めます。
そもそも政府には本法案を提出する資格がありません。安倍・菅両政権が行った会員候補6人に対する違法・不当な任命拒否を撤回せず、理由も明らかにしないまま、一方的に現行の学術会議を全く別組織につくりかえ、「学問の自由」を踏み荒らす政府の姿勢に断固抗議します。
法案が廃止を明記した現行の日本学術会議法は前文で「科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与する」と設立の趣旨をうたっています。戦前の日本が学術を政治に従属させ、学術の側も戦争遂行に加担したことへの痛苦の反省の上に「学問の自由」を保障する日本国憲法に立脚し、科学者の総意の下、平和的復興への貢献を使命とした戦後の出発点を消し去ることは、到底許されません。
重大なことは、坂井学内閣府担当相が「特定のイデオロギーや党派的主張を繰り返す会員は、今度の法案では解任できる」と答弁したことです。政府の意に沿わない会員は、学者の学識にかかわらず「党派的」と勝手に決めつけ排除する法案だと述べたものです。
「学問の自由」「思想信条の自由」へのあからさまな侵害で、法案の本質が、学術会議を解体して独立性を奪い、軍事研究をはじめ政府や財界の意に沿う方向への学術界の動員であることを示すものです。この道が学問の自由を奪い、学術の衰退をもたらし、日本の進路をも誤らせることは歴史の教訓です。
学術会議の運営・財務、会員選考にまで政府が介入できる仕組みをつくろうとしていることに対し、学術会議の総会声明が「独立性の阻害が意図されている」と深刻な懸念を表明したことを重く受け止めるべきです。日本の学術を圧殺する法案に反対する多くの学者、学協会や市民とともに、廃案にするため最後まで力を尽くします。