【政治改革に関する特別委員会】選挙権奪う投票時間短縮/投票所増を 

 私は、国民の基本的な権利である投票権の行使を制約することにつながる投票時間の短縮や投票所総数の減少について質問。2024年総選挙で、投票時間繰上投票所は全体の39・2%。投票所総数は96年総選挙と比べ7785カ所の減少しています。

 私は、全投票所で投票時間短縮を行っている栃木県について、「人口51万人の宇都宮市は学生・若者も多いが、なぜ一律19時までなのか」と質問。

 笠置隆範・総務省選挙部長は「夜間の投票者が少ないこと、地域からの要望が寄せられていること等の理由と聞いている」と答弁。

 私は午後6時以降の投票者は、50歳代以上は少ないが若い現役の世代は割合が高いというアンケート結果を示し、「若い人の投票行動を見ても、閉鎖時刻の繰上げは逆行するものだ」と強調。

 これに対し、村上誠一郎総務大臣は、統計をとることを検討すると実態把握の必要性を述べたうえで、「厳正に対応するよう各選管に要請する」と答弁しました。

 また私は、投票所まで遠くなると投票参加率が大きく低下している結果を示し、「有権者の投票機会を奪わないよう、投票所そのものを増やしていく必要がある」と主張。

 村上大臣は「投票機会の確保につながる施策を積極的に講じるように要請する」と答弁しました。

 私は、1人であっても有権者の権利を奪ってはいけないという立場で、「国が選管を支援すべきで、ふさわしい財政措置を行うべきだ」と強調しました。

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「議事録」

第217回通常国会 令和7年5月13日(火曜日)政治改革に関する特別委員会 第14号

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 国政選挙執行経費基準法案に関わって、この間、私が取り上げてまいりました投票時間の繰上げ問題についてまず最初にお尋ねいたします。

 主権者国民の代表を選ぶ選挙は民主主義の根本であり、公務員の選定、罷免権の行使という憲法上保障された国民主権と議会制民主主義上の原則に関わる問題であります。国民の参政権行使を保障するには投票機会の保障が不可欠であり、これなしに選挙権の保障はありません。

 一九九七年に投票時間が二十時までと延長されたにもかかわらず、投票時間を繰り上げる、投票時間を短縮する投票所が増大しております。そこで、まずお尋ねしますが、一九九六年の総選挙と二〇二四年の総選挙において閉鎖時間を繰り上げている投票所数、全投票所数に占める割合はどれだけかについてお答えください。

○笠置政府参考人 平成八年、一九九六年の衆議院議員総選挙において、閉鎖時間を繰り上げている投票所は三千九か所でございます。投票所総数が五万三千二百十四でございますので、総数に占める割合は五・七%となってございます。

 一方、令和六年、二〇二四年の衆議院議員総選挙において、閉鎖時間を繰り上げている投票所は一万七千八百十三か所でございまして、投票所総数四万五千四百二十九に占める割合は三九・二%となっております。

 なお、投票所の閉鎖時刻につきましては、平成八年当時は原則午後六時までとされておりまして、先ほどもお話をいただきましたけれども、平成九年の公選法改正によって原則午後八時までとされたというところでございます。

○塩川委員 九六年の総選挙では時間繰上げの投票所は五・七%だったものが、回数を経るごとにどんどんと割合が高くなって、今では四割近くの投票所で閉鎖時間の繰上げを行っております。

 この問題について、我が党は、国民の基本的な権利である投票権の行使を制約することにつながるのではないかと何度も取り上げてまいりました。二〇二二年改定の際にも、投票所の閉鎖時刻をむやみに繰り上げることは決して好ましいことではないと考えておりますとの答弁もあったところであります。

 そこで、お聞きしますが、二〇二一年の総選挙と二四年総選挙を比べて、繰上げ投票所数、繰上げ投票所の割合を共に減少させている都道府県はどこでしょうか。

○笠置政府参考人 令和六年、二〇二四年の衆議院議員総選挙において、令和三年、二〇二一年の衆議院議員総選挙から繰上げ投票所数と繰上げ投票所の割合が共に減少した都道府県は、岩手県、秋田県、埼玉県、富山県、静岡県、三重県、和歌山県、島根県、徳島県、愛媛県、高知県、宮崎県、鹿児島県の十三県となってございます。

○塩川委員 十三県が繰上げ投票所数を減らし、その割合を減少させております。あわせて投票所そのものも減少させており、この点は極めて問題であります。

 群馬県では、二〇一二年の総選挙、二〇一三年の参院選、二〇一四年総選挙の間、九九%の投票所が投票時間短縮を行っていました。私もその際に取り上げましたが、その後の二〇一六年の参院選では九〇・四八%、二二年の参院選では八七・五七%まで繰上げ投票所は減少しました。

 二〇一四年当時、群馬県で唯一午後八時まで投票を受け付けていたみなかみ町の月夜野地区の関係者は、たとえ一人でも有権者の権利を奪ってはいけないと述べておられたということです。二〇一五年の知事選から投票時間を元に戻した大泉町の選管は、立会人からは非常に長いと言われたこともあるが交代制を取るなど工夫している、そういう努力の話がありましたし、投票時間を原則どおりとしている明和町の選管は、繰り上げるにはよほど特別な理由が要るはず、投票の機会をなるべく設けたいという国の方針に従っていると述べておられたということです。また、投票時間の短縮を行っていない神奈川県選管は、ぎりぎりに駆け込む人もいる、投票権の行使には同じ時間を継続させることが大事だと。大阪府の選管も、過去、台風直撃で繰り上げたところもあったが、フルで開けておくのが基本だ、逆に早める特別な理由がないと述べておられます。

 国は、この立場で選挙事務を行う選挙管理委員会などを支援すべきですし、ふさわしい財政措置を行うということが求められております。

 一方で、繰上げ投票所を増やしている県があります。その一つの栃木県は、二〇一九年の参院選時に二〇・四八%だったのが、二一年の総選挙では五九・〇六%、二二年の参院選では九一・一三%、二四年の総選挙では一〇〇%の投票所で繰り上げたということです。そこで、お尋ねしますが、栃木県が全ての投票所で投票時間を短縮しているのはなぜか。特に人口五十一万人という宇都宮市、大学もたくさんあります、学生、若者も多い、そういった宇都宮市でもなぜ一律十九時への繰上げになっているのか。その点について御説明ください。

○笠置政府参考人 投票所の開閉時間の繰上げ又は繰下げにつきましては、市町村の選挙管理委員会の判断ということで行うことができるということでございます。

 栃木県におきましては、夜間の投票者が少ないこと、地域からの要望が寄せられていることなどの理由で投票所閉鎖時刻の繰上げが行われていると聞いてございます。

○塩川委員 夜間の投票が少ないって、本当にそうなのかと。後でも紹介しますけれども、本当にそういった市町村の選管の判断が妥当なのかということが問われているところだと思います。

 群馬県においては、二四年の衆院選で繰上げ投票所をまた増やしているということもありました。一時間前倒しをした前橋市の選管は、開票も一時間早く始められ、市職員の働き方改革にもつながると。県庁所在地の前橋市の選管は、期日前を増やした方が投票率向上につながるなどの要望があったと述べております。また、千葉県館山市の選管は、二二年の参院選で初めて繰上げを行い午後六時に全投票所を閉めた、事前に削減効果を試算し、職員の手当を約九十二万円削減できると述べています。

 こんな効率性重視で有権者の投票権を制限するということについて、やはり問題が問われなければならない。有権者の投票権を何だと考えているのかということが問われていると思います。都市部での繰上げは、特に投票機会を奪うことになります。

 二〇一五年のとき、当時の高市大臣は、都市部で投票所の閉鎖時刻をむやみに繰り上げてしまうと投票人の投票の機会を奪うことになると答弁しておりました。

 明るい選挙推進協会が行った二〇二四年総選挙のアンケートによると、午後六時から八時の間においての投票者は全体では一六・七%でありました。そのうち、三十歳代は二一・四%、四十歳代は二一・一%が六時から八時の間に投票しています。確かに五十歳以上における投票者の数は六時から八時は少ないんですけれども、若い現役の世代の方々は六時から八時の割合が高いんですよ。そういったときに市町村の選管が夜間の投票者が少ないからという理由で繰り上げるのは、妥当なものとは言えないということを言わざるを得ません。若い人の投票行動を見ても、閉鎖時刻の繰上げは逆行するものだと思います。

 そこで、大臣にお尋ねをいたします。投票時間の繰上げは、投票人の投票機会を奪うことになります。若い世代の投票機会を確保するためにも、繰上げ投票所の増加を食い止め、投票権を制限しないためにどのような対策を行うのかについて、お答えください。

○村上国務大臣 塩川委員の御質問にお答えします。

 ただ、私のようなところの田舎は期日前でばんばんやっちゃうもので、六時以降がどれだけあってどれだけ少なくなるかというのは、先ほど質問にもあったように統計を一回取ってみないと分からないと思うんですが、そこら辺を考えながら答弁を申し上げます。

 投票所の開始時刻の繰下げ又は閉鎖時刻の繰上げにつきましては、各市町村の選挙管理委員会の判断で、選挙人の投票に支障を来さないと認められる特別の事情がある場合に限り行うことができるとなっております。

 こうした中、地域の実情により、例えば山間部などは大半の選挙人が早めに投票を済ませていることなどを理由に繰り上げることがあるというふうに承知しております。

 総務省としましては、投票所の開始時刻の繰下げ又は閉鎖時刻の繰上げにつきましては、地域の実情等を十分に検討した上で厳正に対応してもらい、選挙人に対して丁寧に説明を行うことが必要と考えておりまして、引き続き各選挙管理委員会へその旨を要請していきたい、そういうふうに考えております。

○塩川委員 統計を取って考えないといけないというお話もありました。是非実態をリアルにつかんで、宇都宮のような大都市で七時に繰り上げるというのは、そこはどう考えても投票人の投票機会を制約するものと言わざるを得ないといった点などについてもしっかりと見ていただきたいと思っております。

 その上で、投票所そのものが激減していることが大問題ということで、一九九六年の総選挙のときに投票所数は五万三千二百十四か所だったものが、二四年の総選挙では四万五千四百二十九か所と、七千七百八十五か所も減っております。

 明るい選挙推進協会の二四年総選挙のアンケートによると、投票所までの所要時間と投票参加率が関連づけられているわけですけれども、五分未満で投票所に行けるという場合に参加率は八三・四%、十分未満で行けるという投票所の場合には七七・三%、二十分未満の場合には六五・四%、二十分以上かかるという投票所の場合には参加率が五三・一%へと、所要時間が増加するのに伴い投票参加率も大きく低下をしています。五分未満の人と二十分以上の人の値の差は三〇ポイントに達する、このように協会の文書にもあるところであります。

 大臣にお尋ねします。このような期日前投票が増えているから投票日の投票所は現状のまま減らし続けていてもよいということにはなりません。有権者の投票機会を奪わないように、投票所そのものを増やしていく必要があるのではないのか。減らすという方向ではなくて、増やす必要があるのではないか。大臣のお考えをお聞かせください。

○村上国務大臣 総務省におきましては、国政選挙や統一地方選挙に際しまして、投票所からの距離や選挙人の数を踏まえた投票所の設置につきまして、各選挙管理委員会に対して要請しているところであります。

 投票所の数については、選挙人の数の減少や投票区の見直しなどで減少してきているものと承知しております。

 その中で、投票所への交通手段の確保が難しい選挙人のための投票所への移動支援や、かつて投票所があった地域での期日前投票所の設置など、選挙人の投票機会の確保に向けて取り組んでもらっているところであります。

 引き続き、各選挙管理委員会に対しまして選挙人の投票機会の確保につながる施策を積極的に講じるよう要請していきたい、そのように考えております。

○塩川委員 我が国の公選法は投票日当日投票所投票主義を取っているわけでありますから、投票日の重みにふさわしい体制を取るといった点においても投票所の確保というのは必要だ。投票所そのものを増やすという方向が求められているということと、高齢の方や障害で移動困難な方々の投票機会の確保の観点から、我が党は巡回投票制度が必要だということを訴えております。選管が立会人と一緒に投票箱を持って車に乗って、施設や自宅など、要望がある場所に行き投票できる巡回投票を提案してきました。その点、移動期日前投票所も有用な制度だと思っております。大分広がってきていることだと思います。

 二四年の総選挙では、北海道の大樹町では移動式の期日前投票所(車)を開設して、一日限定ですけれども、投票箱を乗せた車が希望する有権者の自宅まで運び、そこで投票する、こういったことが行われているということが報道されました。まさに巡回投票であります。こういった取組を是非とも国が大いに支援していただきたいといった財政措置も求めて、質問を終わります。