【内閣委員会】八潮道路陥没事故/大規模化推進してきた国の責任で特別の財政措置を

 私は、下水道の広域化・大規模化を進めてきた国の責任を追及し、その責任に見合った財政支援を行うよう求めました。

 国土交通省の検討委員会は5月28日、埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故と同類の事故を防ぐための第二次提言をまとめました。私は、提言にある下水道の点検等の困難さに関する記述を確認。国土交通省は、▽地下にあり点検が困難である、▽大規模な下水道の下流部では常に流量が多いこと、▽硫化水素の発生や大雨による急な増水などによる危険、などを挙げました。

 私は、提言で下水道の点検・調査を行う判断要素として「事故発生時の社会的影響の大きさ」の視点を新たに盛り込んだことに触れ、「八潮の事故では120万人が影響を被った。下水道の広域化・大規模化を推進してきた国の責任は大きい」と指摘。国はその責任を受け止めて、大規模下水道管の維持・改築に特別の財政措置を取るべきだと強調し「新たな補助金・交付金を創設するのか。あるいは既存の補助金・交付金の総額を増やすのか」と質問。国交省は「予算の確保に努めていく」と答えるに留まりました。

 私は提言には問題点もあるとして、下水道料金の値上げを掲げていること、民間委託を推進する問題だらけのウォーターPPPの推進を掲げていることは容認できないと批判しました。

衆議院TV・ビデオライブラリから見る


「議事録」

第217回通常国会 令和7年6月6日(金曜日)内閣委員会 第26号

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 埼玉県八潮市の下水道事故について質問いたします。

 一月二十八日に埼玉県八潮市で発生しました下水道管路崩落に伴う道路陥没事故を受けて議論を重ねてきた国交省の検討委員会が、五月の二十八日に第二次提言を出しました。下水道の安全に関する基本認識について、下水道管路は極めて過酷な状況に置かれたインフラであるとしております。どのような意味か、国交省からお答えください。

    〔國場委員長代理退席、委員長着席〕

○松原政府参考人 お答え申し上げます。

 下水道管路につきましては、状況把握に高い不確実性を伴う地下空間に布設されていること、要は地上のインフラと比較して点検等による状況把握が難しいこと、下水中の硫化水素に起因して発生する硫酸は管路に化学的腐食をもたらすこと、特に大規模な下水道システムの下流部では下水の流量変動が小さく、メンテナンスのための流量調整が難しいこと、硫化水素の発生や降雨による急な増水など管路内作業には危険が伴うこと、このようなことから、過酷な状況に置かれたインフラであるとの認識が示されているところでございます。

○塩川委員 下水道管路というのは他のインフラにはない過酷な状況に置かれているということの説明であります。

 今後の下水道の点検、調査の在り方についてですが、管路の安全へのハザード、損傷の発生のしやすさと事故発生時の社会的影響の二つの視点から措置すべきとしております。どのような視点で取り組むということでしょうか。

○松原政府参考人 委員御指摘のとおり、第二次提言におきましては、下水道管路の点検、調査について、管路の損傷の発生のしやすさと、もう一つは事故発生時の重大な社会的影響の回避、これら二つの要素を勘案することが重要とされております。

 その上で、点検、調査につきましては、管路の損傷の発生しやすさが大きい箇所、こういった箇所については頻度を高める、社会的影響が大きい箇所では複数の点検の手段を組み合わせるなど方法を高度化すること、両者とも大きい箇所では頻度を高めることと方法を高度化することの両方、これを検討すべきであるとされております。

 一方で、限られた人員、予算で確実に点検、調査を実施する観点から、調査、点検にめり張りをつけるべきであり、管路の損傷の発生のしやすさと事故発生時の重大な社会的影響が共に小さい箇所については時間計画保全や事後保全とすることを検討すべきであるとされております。

 国土交通省といたしましては、この提言を踏まえて点検の頻度や方法について見直しを行い、強靱で持続可能な下水道を構築してまいります。

○塩川委員 下水道の点検、調査は、過酷な状況による損傷の発生のしやすさと事故発生時の社会的影響に関する視点に立って措置する必要があるということであります。

 この点で、事故発生時の社会的影響の大きさということにつきましては、今回の八潮の事故においても百二十万人の方々が影響を被る甚大な被害につながったわけですけれども、それも大規模化を推進してきた中で行われている流域下水道において、埼玉などが大きな規模になっている。

 こういった大規模化を推進してきた国の責任が事故発生時の社会的な影響をもたらしてきた、そういう国の責任が極めて大きいということをしっかりと受け止めるべきではないかと思うんですが、国交省、いかがですか。

○松原政府参考人 国土交通省といたしましては、このような同様の道路陥没事故が二度と起こらないようにという観点で、今回提言されました二次提言、こういったものを踏まえまして、しっかり老朽化対策について対応してまいりたいと考えております。

○塩川委員 事故発生時の社会的影響が大きいということをもたらしたのは、国が大規模化を推進してきたということがあるんじゃないですか。その責任をどう受け止めるのかと聞いているんですが。

○松原政府参考人 埼玉県におきますいわゆる流域下水道でございますけれども、この流域下水道につきましては、複数の市町村でそれぞれ下水道の整備を行っていてはなかなか時間もかかる中で、効率的に下水道を整備するために実施されてきたものでございます。

 いずれにしましても、このような今回の八潮における事故について、二度と起きないようにと重く受け止めまして、国交省といたしましては、しっかり老朽化対策に取り組んでまいりたいと考えております。

○塩川委員 こういった大規模化を推進をしてきた、そういう中で、百二十万人が被害を被るようなこういった事故にもつながってきた、そういった国の責任をやはりしっかり受け止めて、必要な財政措置や法制度の措置を行うべきだということを申し上げておきます。

 今回の八潮の下水道事故において、埼玉県が二月の補正予算に計上した九十億円の下水道管路復旧事業に対して、その後、三月十八日、国は、予備費四十五億円を使って、緊急下水道管路改築事業として、予備費において交付金を交付をしたところであります。ですから、九十億円に対して四十五億円、予備費で国が措置をしたということです。

 今回、埼玉県は、この二月の補正の九十億円の工事に続けて、六月の補正予算案に、下水道管の破損及び道路陥没への対応として約三十九億円を計上するとしております。三月の予備費で措置した緊急下水道管路改築事業と同様に、この三十九億円に対しても国として財政支援を行うべきではありませんか。

○松原政府参考人 埼玉県では、破損した下水道管の復旧に当たりまして、地盤改良や現場の臭気や騒音を軽減するための工事などを実施する必要があり、現在の予算額では不足が見込まれることとなったため、三十九億円の増額補正予算を六月定例会の方に提案することとしたというふうに承知しております。

 国土交通省といたしましては、埼玉県より工事内容の詳細などをよくお聞きしながら、必要な支援について検討してまいります。

○塩川委員 既に行われた九十億円の事業、更に継続するということですから、当然のことながら、二分の一の交付措置を行うなど必要な対策を取ることを求めていくものであります。

 下水道を利用する市民百二十万人の世帯や事業者に対して、お風呂や洗濯など排水の頻度を下げるなど、下水道の使用自粛を要請したのが今回の事故でありました。一時、固定電話や光回線のインターネットが利用できなくなるなどの複合的な被害も生じております。

 道路陥没箇所付近には、中川流域下水道の管路だけではなくて、八潮市の下水道管、八潮市の雨水管、八潮市の用水路、工業用水路、八潮市の水道、東京ガスのガス管、NTTの通信管などが地下部分に複層的に集中しておりました。大規模な陥没となれば、地域のインフラ、ライフラインが機能しなくなる深刻な事態に至るということであります。大規模下水道管路の維持、改築には特別の対策が必要であります。

 国交省の検討委員会の提言では、「補助金・交付金を効果的に活用し、特にリスクの高い箇所の計画的な施設点検・改築・更新を重点的に財政支援すべき」としています。また、「能登半島地震や八潮市における道路陥没事故等の教訓を踏まえた、集中的な耐震化・老朽化対策などに対し、国が重点的に財政支援すべき」とあります。これらを受けて、提言の「おわりに」では、全国特別調査に基づく大口径下水道管路の改築・更新や、大規模下水道システムのリダンダンシーの確保等について、予算要求や制度改正を要請しております。

 下水道事業に関する既存のメニューには、社会資本整備総合交付金や防災・安全交付金、これら交付金のスキームの一つである下水道総合地震対策事業、それに下水道基幹施設耐震化事業という個別の補助金があります。今回の提言を踏まえて、これらとは別に新たな補助金、交付金を設けるということでしょうか。

○松原政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、有識者委員会の二次提言では、国として集中的な耐震化、老朽化対策を重点的に財政支援すべきなどの御指摘をいただいたところでございます。

 国土交通省といたしましては、この提言を踏まえた老朽化対策それから耐震化につきまして、本日閣議決定された国土強靱化実施中期計画に位置づけたところであり、今後、必要な予算の確保に努めてまいるとともに、大口径下水道管路の改築やリダンダンシーの確保を集中的に進めるために、必要な対応を検討してまいります。

○塩川委員 必要な対応というところに、既存のものに加えて新たな交付金、補助金の措置を行うのか。その点、もう一回。

○松原政府参考人 繰り返しになりますけれども、実施中期計画に盛り込まれた社会的影響が大きい大口径下水道管路の改築、それから多重化、分散化によるリダンダンシー確保といった取組を集中的に進めるために、必要な対応をしっかり検討してまいります。

○塩川委員 集中的に進めるということもありましたけれども、これは、要は既存の補助金、交付金について、それを増額をするということも考える、具体化をするということでしょうか。

○松原政府参考人 本日閣議決定された国土強靱化中期計画におきまして、下水道の耐震化それから老朽化対策が位置づけられたところでございます。この実施中期計画に位置づけられた取組も含めまして、下水道の耐震化、老朽化対策について必要かつ十分な予算の確保に努めてまいります。

○塩川委員 必要かつ十分な予算ということでは、必要な既存の補助金、交付金の総額を増やすということと同時に、例えば、そういった既存の補助金、交付金についてのかさ上げ措置を行うとか、そういうことも含めて考えるべきじゃありませんか。

○松原政府参考人 国土交通省といたしましては、中期実施計画、それから、先ほど来出てきております第二次提言を踏まえまして、下水道の強靱で持続可能な形を構築していくために、しっかり予算の確保等に努めてまいります。

○塩川委員 この八潮市下水道事故復旧のための複線化工事に埼玉県は取り組んでおりますけれども、その埼玉県からも予算総額の確保の要望が出されているところであります。

 やはり、既存の補助金、交付金の総額を増やす、また、必要であれば補助のかさ上げ措置を行う、さらに、求められる新たな課題等に対応した新たな補助金、交付金を創設する、そういうことを含めて、集中的にこういった大規模管路に対しての対策を進めていくことを求めるものであります。

 今回、事故原因の究明も県のところで進めておられるところですけれども、事故原因の究明に対して国がしかるべき対応を行うことを求めると同時に、是非、事業者や住民の方への補償についても、県が今対応しておりますが、国のしかるべき措置も求めていきたいと思います。

 それから、提言では下水道料金の値上げを掲げており、被害を被った利用者にツケを回すものであり、容認できるものではありません。また、広域連携に基づく大規模化が被害を深刻なものにしたわけで、広域連携の推進という方針は撤回をすべきだと思います。さらに、ウォーターPPPの推進も掲げているのは重大であります。

 担当の伊東大臣にお尋ねいたします。

 下水道事業に関して、国は民間委託の推進を図り、PPP、PFI事業の推進を図ってきました。前回もお聞きしたんですが、埼玉県の国への要望書では、現在、国が推進しているウォーターPPPについては、インフラの長期にわたる更新にめどがつくまでは、慎重に検討していただくようお願いします、また、下水道に対する国の財政的支援については、ウォーターPPPを前提としない制度設計を再考いただくようお願いをしますと、国によるウォーターPPPの推進に対して慎重な対応を求めております。

 こういった埼玉県の国への要望について、伊東大臣はどう受け止めておられますか。

○伊東国務大臣 塩川委員の御質問にお答えしてまいります。

 人口減少に伴いまして、地方自治体、地方公共団体の技術職員の減少が進む中、ウォーターPPPには、地方公共団体が最終的な責任を持つことを前提に、民間の人材や技術力の活用によりまして下水道等に係る施設の維持管理等を効果的に進められる等のメリットがあると認識をいたしております。

 そのため、国土交通省におきましては、下水道事業を将来にわたって持続可能なものとするため、令和九年度以降、地方公共団体が自らの資金だけでなく国の交付金等を活用して汚水管の改築を行う場合には、ウォーターPPPの導入を決定済みであることを交付要件としたと聞いているところであります。

 国交省が、ウォーターPPPについて、最終的な責任を地方公共団体が持つということを前提にして推進することにつきましては、私としては適切である、このように考えております。

○塩川委員 ウォーターPPPの先進事例の宮城県などではいろいろな問題が出ているわけで、問題だらけのウォーターPPP、PFI事業の押しつけはやめよということを申し上げて、質問を終わります。