▼2020年臨時国会の取組(閉会中審査を含む)▼【6】公務員制度 (1)ハローワーク体制/相談員常勤化はかれ (2)仕事量増加に逆行/公務員「合理化」撤回を

【6】公務員制度
(1)ハローワーク体制/相談員常勤化はかれ内閣委員会、2020/11/13
 ハローワーク相談員は雇用保険手続き、就職支援、求人開拓などを担い、専門知識や心の悩みなどへのカウンセリング技術など高い専門性が求められる。膨大な求職ニーズに対応するため、この10年間で非常勤相談員が1万5千人を下回ったことはない。

 私は、専門的恒常的な仕事である相談員の仕事は、常勤職員を充てるのが当然ではないか、と質問。厚生労働省の担当者は、重要な仕事と認めつつ、「仕事量は行政ニーズによって変化する。その対応のため非常勤職員を配置する」と答えた。

 1万5千人以上の規模で恒常的に存在する業務を臨時的な仕事と扱うことが問題だ。非常勤を常勤化すべきだ。

 この10年でハローワークの常勤職員も14%減となり、恒常的な仕事に見合う定員が措置されていないことが根本問題だ。定員削減を押し付ける定員合理化計画は撤回せよと迫った。河野太郎公務員制度担当相は「定員合理化に取り組み、必要に応じて再配分する」と答えた。

(2)仕事量増加に逆行/公務員「合理化」撤回を内閣委員会、2020/11/18
 政府の定員合理化計画で公務の現場に深刻なゆがみが生じている。国土交通省は大規模な自然災害の際に、地方整備局の職員を被災自治体への支援に派遣している(通称テックフォース)。私は、派遣される職員は、自らの業務を担いつつ、テックフォースの業務も行っている。負担が大きい、と追及。国交省側は「合理化が進み、定員が厳しい。災害激甚化でニーズは高まり、近年テックフォースの活動規模が大きくなっている」と答弁。

 私が、活動規模の拡大に合わせた要員の確保が必要だ、と強調したのに対し、国交省側は「決められた定員削減の中で努力している」と答えた。私は、先に定員合理化がある。現場の仕事量が増えているのに逆行する措置だ。今すぐ撤回せよ、と要求。河野太郎公務員制度担当相は「社会経済情勢の変化に伴い業務量は変化する。再配置の原資を出すために合理化は必要だ」と繰り返した。

▼2020年臨時国会の取組(閉会中審査を含む)▼【5】カジノ (1)「腐敗の温床」/カジノやめるべきだ

【5】カジノ
(1)「腐敗の温床」/カジノやめるべきだ内閣委員会、2020/08/26
 秋元司衆院議員(自民党を離党)は、カジノ汚職事件の収賄容疑で逮捕・起訴されており、20日には保釈中に贈賄側の被告に虚偽の証言をするよう働きかけ再び逮捕されている。

 私は、秋元氏がIR担当副大臣として、IR・カジノの制度設計を行う立場だった、と指摘。「疑惑は極めて重大で、何らの説明責任も果たしていない。国会議員の資格はない、議員辞職すべきだ」と主張しました。IR議連事務局長でIR推進法案提案者の西村康稔経済再生担当相に、カジノを推進してきた政治家として汚職事件が起こったことに反省はないか、と質した。

 西村担当相は「秋元議員の逮捕は大変残念だ。政府としてはIR整備法に基づいて必要な準備を進めていく」と繰り返した。

 私は、カジノ事業は刑法で禁じられた賭博を特定の事業者に認め、莫大な利権が絡むため、癒着が排除できないと指摘。不正・腐敗の温床であるカジノ・IRはきっぱりとやめるべきだ、と強調した。

▼2020年臨時国会の取組(閉会中審査を含む)▼【4】河井選挙買収事件 (1)民主主義冒涜の犯罪/選挙買収を批判

【4】河井選挙買収事件
(1)民主主義冒涜の犯罪/選挙買収を批判内閣委員会、2020/07/08
 河井克行・案里両議員の大規模買収事件。選挙買収は、カネの力で選挙の公正をゆがめるものであり、民主主義を冒涜(ぼうとく)するものだ。選挙違反の中で最も悪質な犯罪だ。

 私は、河井夫妻が昨年の参院選前に首長・地方議員らに現金を配っており、このような選挙買収事件は、国民の不信を招く行為。選挙前にカネを配ることはしないといえるか、と追及。西村康稔経済再生担当相は「疑念をもたれた政治家はそれぞれが説明責任を果たしていく」「公正な選挙が何より大事だ。法にのっとって適正に活動し、選挙で選んでいただく」と従来通りの答弁しかしなかった。

 私は、自民党本部から河井夫妻に提供された1億5000万円のうち、1億2000万円が税金を原資とする政党助成金との報道もあり、資金を提供した自民党の説明責任がある。「説明責任」との答弁があったが、自民党総裁としての安倍晋三首相の責任が厳しく問われる。

▼2020年臨時国会の取組(閉会中審査を含む)▼【3】災害対策 (1)豪雨被害/二重の打撃「心折れる」/従来以上の支援を

【3】災害対策
(1)豪雨被害/二重の打撃「心折れる」/従来以上の支援を内閣委員会、2020/07/08
 コロナ禍で大きな影響を受けた事業者が梅雨前線豪雨災害でも甚大な被害を受けるという二重の打撃を受けている。従来の対策にとどまらない支援策をと強く求めた。

 党国会議員団の現地調査でも、大分、熊本両県の温泉地では、新型コロナウイルスの影響で停止していた予約の受け付けを再開した直後の被災で「心が折れそうだ」など悲痛な声が寄せられた。コロナと水害の二重の打撃のもとで事業者を励まし、営業再開を後押しするため、過去に実施した支援策はもちろん、従来の対策にとどまらない支援策を行うべきだ、と主張。

 コロナ対策担当の西村康稔特命担当相は「私は経済再生も担当している。人命救助が第一だが、復旧・復興に向け、さまざまな事業者が生業(なりわい)を継続していけるよう、支援を行っていくのは当然だ」と表明した。

 私は、「3密」状態の避難所にパーティション(間仕切り板)や段ボールベッドも届いていない実態を指摘。その他の被災県にもしっかりと対応をと要請。マスクや消毒液などコロナ対応の物資も確実に届けるよう求めた。

▼2020年臨時国会の取組(閉会中審査を含む)▼【2】学術会議任命拒否問題 (1)「推薦に基づき全員任命」文書存在/学術会議人事介入を追及 (2)学術会議法/こっそりと解釈変更/「違法な政治介入だ」と批判 (3)内閣法制局が答弁を訂正し、謝罪/任命拒否違法であることは変わらず

【2】学術会議任命拒否問題
(1)「推薦に基づき全員任命」文書存在/学術会議人事介入を追及内閣委員会、2020/10/07
 日本学術会議が新会員として推薦した6人の任命を菅義偉首相が拒否した問題について追及。この中で内閣府は1983年の同会議法改定の際の「任命は形式的なもの」などの一連の国会答弁は認識しているとし、内閣法制局も「推薦に基づき全員を任命する」とした文書の存在を明らかにした。菅首相の任命拒否が、国会審議で確定した法の解釈をねじ曲げた違法な行為だと事実上認めるものとなった。

 また、83年当時の「推薦をしていただいた者は拒否はしない」との政府答弁も示し、総理大臣が形式的に任命するという法律のスキーム(制度)も変わっていない、と指摘。日本学術会議の福井仁史事務局長は「スキームは変わっていない」と認めた。

(2)学術会議法/こっそりと解釈変更/「違法な政治介入だ」と批判内閣委員会、2020/11/11
 菅義偉首相が日本学術会議の会員候補6人を任命拒否した根拠としている2018年に学術会議事務局が作成したとされる「推薦の通り任命しなければならないわけではない」との文書について、学術会議法の重大な解釈変更をこっそり行ったことは許されないと追及。

 私は、この文書が当時の山極寿一会長に知らされなかった経緯を追及。学術会議の福井仁史事務局長は、文書は「これまでの解釈を確認しただけのもの」として、会長に見せる必要はないと判断したと述べた。

 私が、山極前会長は、政府が言う『これまでの解釈』を知っていたのか、と追及したのに対し、福井氏はまともに答えられなかった。

(3)内閣法制局が答弁を訂正し、謝罪/任命拒否違法であることは変わらず内閣委員会、2020/11/20
 日本学術会議会員の任命拒否をめぐる私の10月7日の同委員会での質問に対し、内閣法制局の木村陽一第1部長は「推薦に基づき全員を任命する」と記された文書があるとした自身の答弁について、「全員」は「会員」を読み間違えたものだと訂正し、謝罪した。

 私は、答弁の誤りについて、同委員会で訂正もしないうちに加藤勝信官房長官が記者会見で誤りと釈明するなど、委員会の審議をあまりに軽んじるものだ、と批判。

 その上で、内閣法制局が「読み間違え」た1983年の学術会議法改定案に関する想定問答集には、「推薦に基づいて会員を任命することとなっており、形式的任命である」とあると指摘。これは「学会から推薦されたものは拒否しない」などの当時の政府答弁を裏書きするもので、菅首相による任命拒否が違法であることを重ねて示すものだ。

 さらに、「推薦通りに任命しなければならないわけではない」との法解釈を示す文書は、政府が任命拒否の根拠としている学術会議事務局作成とされる2018年の文書だけで、「推薦に基づき全員を任命すると読んだのは、実態としては正確だった」と指摘しました。

▼2020年臨時国会の取組(閉会中審査を含む)▼【1】新型コロナウイルス感染症対策 (1)政府専門家会議/官邸に沿わぬと廃止か (2)PCR拡充と財政支援/行政検査全額負担を (3)PCR検査拡充せよ/公費で行うことが必要 (4)12月2日、野党共同提案で、コロナ特措法改正案を提出

【1】新型コロナウイルス感染症対策
(1)政府専門家会議/官邸に沿わぬと廃止か内閣委員会、2020/07/08
 政府の新型コロナウイルス感染症対策の専門家会議が突然廃止されたのは、官邸の意図に沿わぬ専門家会議を政府対策本部から遠ざけようとしたものではないかと西村康稔特命担当相をただした。

 これまで専門家会議は感染実態の状況分析や3密回避対策などを提言し貢献してきた。これらの提言が反映され基本的対処方針となっている。専門家会議が「感染対策として行動変容を促す意図から政府に経済的な補償の要請(6月24日)に言及してきた」と述べていることを指摘。官邸の意向に沿わない提案を行ってきた専門家会議を政府対策本部から遠ざけようと意図したものだと言わざるを得ない。

 西村氏は「まったくそういった意図はない」と否定。

 私は、科学的知見を軽んずる姿勢ではコロナ対策を進めることはできない、と批判した。

(2)PCR拡充と財政支援/行政検査全額負担を内閣委員会、2020/08/26
 新型コロナウイルス感染防止のためのPCR検査等の体制拡充と自治体、医療機関などへの財政支援を求めた。

 世田谷区が、感染が広がると深刻な影響がでる医療機関や高齢者介護・障害者施設等で働く人への定期的な検査を実施する「社会的検査」の費用を国が助成するよう求めている。

 厚労省はクラスターが発生している地域にある医療施設、高齢者施設等の職員・入所者については、当該施設に感染者がいなくても検査が可能だとしつつ、「社会的検査」が行政検査として認められるかは明言しなかった。

 私は、抜本的な検査拡充のために、地方創生臨時交付金をはじめ自治体、医療機関への十分な財政支援が必要だと強調した。

(3)PCR検査拡充せよ/公費で行うことが必要内閣委員会、2020/11/11
 新型コロナウイルスの感染拡大防止にむけて、PCR検査の拡充を自治体任せではなく国が先頭に立って行うよう求めた。

 医療機関、介護・福祉施設等に、定期的なPCR検査(社会的検査)を行政検査として公費で行うことが必要だと追及。厚労省は「保健所の判断で行政検査として実施できる」と現場判断に任せる姿勢を示した。

 行政検査費用には都道府県負担分がある。検査拡充には、自治体の負担を軽減するため、国としてさらなる財政措置が必要だ。

(4)12月2日、野党共同提案で、コロナ特措法改正案を提出
 コロナ感染拡大の下、政府がまともな対策を取らない中、喫緊の課題について立法化するもの。

 最前線でコロナ対策に取り組む知事会の要望を踏まえ、補償的経済支援、検査体制の強化などを図る。感染症対策の実効ある措置として、罰則強化ではなく、生活営業支援を行うものとなっている。

(5)コロナ急拡大/医療者/賃下げに直面/国は減収補てんを内閣委員会、2020/12/16
 私は、日本医労連の調査で、医療従事者の冬のボーナスは約43%の組合でマイナスとなっており、下げ幅が最も大きい東京都内の施設では、約35万円減となっている実態を示し「コロナ対応に全力を尽くしている医療従事者の待遇悪化はあってはならないことだ」と追及。西村大臣が「医療機関には約3兆円の緊急包括支援交付金を計上している」と答えたのに対し、私は、実際にボーナスカットは行われている。今のやり方では対応できないということだと指摘した。

 問題の根底は病院がぎりぎりの経営を強いられていることだ。3病院団体が行っている病院経営定期調査では、経常利益率が2017年度0.0%、2018年度は0.1%であり、他の産業(製造業は18年度で6.6%、非製造業で5.0%「法人企業統計調査」)と比較しても利益率が低い。医療機関の経営危機は、国が公定価格(診療報酬)で医療機関にぎりぎりの経営を強いてきたためだ、と強調。国の責任で減収補てんを行えと求めた。

ゆずの生産、販売の状況について懇談/埼玉・毛呂山町

 埼玉県毛呂山町(もろやままち)を訪問し、いるま野農協毛呂山柚子部会の市川覚会長らから、名産の桂木ゆずの生産、販売の状況について懇談。

 江戸時代から特産品として知られていた桂木ゆずは、香りの高さが最大の特徴です。北風が吹き抜けない温暖な土地が美味しいゆずをつくります。

 コロナ禍で直売にも影響が出ています。生産の効率化、販路の開拓が大きな課題です。商品開発を工夫するなど、地域資源を活用したまちおこしにつなげていければと思います。

 


出荷量減人も雇えぬ/埼玉・毛呂山/塩川氏らにユズ農家

「しんぶん赤旗」12月23日付・首都圏版より

 埼玉県毛呂山町で21日、日本共産党の塩川鉄也衆院議員と牧瀬明町議らは、地場産業の実態調査の一環として、町内のユズ農家と懇談しました。

 同町は「桂木ユズ」の栽培が盛んで、日本最古の全国有数の産地です。

 いるま野農協毛呂山柚子(ユズ)部会の市川覚会長は、ユズの出荷先は町がつくった加工所がほぼ全てであり、他は直売所などしかなく、青果市場にはあまり流れていないと説明。「加工所は搾って果汁にするだけ。加工業者がジュースなどをつくっている」「できれば町で商品化から販売までやれるようにしたい」と話しました。

 塩川氏が「収穫の人手確保は大変ではないか」と尋ねると、市川氏は「買い上げ単価が安く、人を雇うと赤字になってしまう。農協の直売所だと良いものは1㎏1000円以上になるが、量が多いと売れ残ってしまう」と回答。新型コロナの彫響については「出荷先の菓子屋が入荷量を30%減らした」と訴えました。

 塩川氏は「コロナ禍で地方分散へと社会のありようが変わるでしょう。地方で住み続けられる環境づくりが政治の仕事になる。地場産業の振興が必要で、農業が一番の地域資源だ。応えられるように国政レベルで取り組んでいく」と語りました。

コロナ危機/雇用とくらし、営業への支援を/埼玉・川越駅前で街頭演説

 川越駅前で街頭演説会。田村智子副委員長、梅村さえこ衆院北関東比例予定候補、守屋ひろ子県議とともに。

 コロナ危機打開のために、全額国費負担でのPCR検査実施、医療機関への減収補填、GoToトラベル即時中止、観光業・飲食業への直接支援、持続化給付金や家賃支援給付金は複数回支給に踏み出せ。

 年越しできるような雇用とくらし、営業への支援を!

辺野古新基地建設ストップ、日米地位協定の抜本改定を/埼玉・所沢駅前で街頭演説

 所沢駅前で街頭演説会。田村智子副委員長が講演。神田三春埼玉9区予定候補、梅村さえこ衆院北関東比例予定候補とともに訴え。

 米軍所沢通信基地がオスプレイの訓練場となり、汚染が懸念される米軍横田基地の土砂の捨て場になるなど、米軍の横暴勝手はひどすぎる。

 辺野古新基地建設ストップ、日米地位協定の抜本改定を!

 

GoToただちに中止して直接支援を/埼玉・久喜駅前の街頭演説

 久喜駅前の街頭演説会で市田副委員長が訴え!埼玉13区の赤岸まさはるさん、埼玉14区の田村勉さんとともに決意表明!寒風の中、お聞きいただいた皆さん、本当にありがとうございます!

 埼玉のコロナ感染者数は、過去最多の201人に。入院中・入院調整中の患者合計は、確保病床の7割。危機的状況です。

 それなのに菅首相は、人の移動を拡大するGoToトラベルに固執する。ただちに中止して、観光業・飲食業への直接支援を!検査体制の抜本的強化、医療機関への減収補填、医療従事者に特別手当を!

 

学術会議任命拒否問題を考える県民集会で講演/埼玉革新懇主催

 埼玉革新懇主催の「学術会議任命拒否問題を考える県民集会」で講演。

 菅首相の任命拒否は、学術会議の独立性を侵し、学問の自由を侵害し、国民の表現の自由を脅かすもの。

 時の政権の政策に科学を奉仕させようとすることは、侵略戦争に科学を動員した過ちを繰り返すもの。

 科学的知見を軽んじる政治は、国民の信任を得ることはできない。菅首相のコロナ対策を見ても明らか。

【内閣委員会】コロナ急拡大/医療者/賃下げに直面/国は減収補てんを

 新型コロナウイルス感染急拡大のもとで、医療従事者のボーナス引き下げを放置する政府の姿勢を批判し、「国の責任で医療機関の減収補てんを」と求めました。

 医療機関や高齢者福祉施設でのクラスター増加(資料参照)に伴い、医療機関・医療従事者の負担も増大しています。私は、政府の認識を問いました。

 西村康稔担当大臣は「重症化する患者が増えており、医療機関の負荷が重くなっている」と答えました。

 私は、日本医労連の調査で、医療従事者の冬のボーナスは約43%の組合でマイナスとなっており、下げ幅が最も大きい東京都内の施設では、約35万円減となっている実態を示し「コロナ対応に全力を尽くしている医療従事者の待遇悪化はあってはならないことだ」と追及。

 西村大臣が「医療機関には約3兆円の緊急包括支援交付金を計上している」と答えたのに対し、私は、実際にボーナスカットは行われている。今のやり方では対応できないということだと強調しました。

 問題の根底は病院がぎりぎりの経営を強いられていることだと指摘。3病院団体が行っている病院経営定期調査では、経常利益率が2017年度0.0%、2018年度は0.1%であり、他の産業(製造業は18年度で6.6%、非製造業で5.0%「法人企業統計調査」)と比較しても利益率が低い。医療機関の経営危機は、国が診療報酬で医療機関にぎりぎりの経営を強いてきたためだ、と強調。

 医療従事者の過酷な労働実態と賃下げ等の待遇悪化が離職の契機になり、コロナ対策そのものを後退させることになると指摘し、国民の命と健康がかかった深刻な事態だからこそ、国が責任をもって減収補てんを行えと主張しました。

 西村大臣は「緊急包括支援交付金等を計上している」との答弁を繰り返しました。

 私は、最後に、医療体制が深刻な危機にある今こそGoToトラベルを即時中止し、観光・飲食業への直接支援策を行うよう求めました。

全国のクラスター発生の件数(クリックで拡大)
医療機関と高齢者福祉施設におけるクラスター発生の累計件数(クリックで拡大)

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「議事録」

<第203臨時国会 2020年12月16日 内閣委員会 7号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、コロナ対策、特に医療機関への財政支援、そして、GoToトラベル事業について質問をいたします。
 十二月十日の厚労省のアドバイザリーボードにおきましては、新規感染者数は、過去最多の水準が続いており、引き続き最大限の警戒が必要な状況。今般の感染拡大では、新規感染者の規模が大きく、高齢者の絶対数も多くなっている。これに伴い、入院者数、重症者数の増加が続いており、医療提供体制及び公衆衛生体制の負荷が増大をしているということであります。
 そういう中で、医療機関や高齢者福祉施設におけるクラスターが増加をしている、こういう状況にあるのではないかと思いますが、この点について厚生労働省に確認をいたします。
○佐原政府参考人 お答えいたします。
 厚生労働省では、自治体のプレスリリースなどをもとに、同一の場で二名以上の感染者が出たと報道されている事案の件数を集計しております。昨日火曜日時点の累計の件数三千四十四件となっております。このうち、医療機関は四百九十三件、高齢者福祉施設は四百二十六件というふうになっております。
 以上でございます。
○塩川委員 資料をお配りさせていただきました。
 二枚ありますけれども、一枚目が、全国のクラスター発生の件数を月別に取り上げているものであります。第一波の四月の時点で二百二十件、これが、第二波の八月を取り出しますと五百二十三件、そこから余り落ちずに、十一月をとりましても七百六十七件という形で、大きくクラスターが増加をしております。
 二枚目が、高齢者福祉施設そして医療機関におけるクラスター発生の累計の件数ですけれども、こういうふうに区分分けをしてデータをとり始めているのが九月以降ということですので、九月以降の数字になっていますけれども、ごらんいただいてわかりますように、大きく増加をし、さらに今、その頻度が増しているということが、こういうところにも見てもらえると思います。こういう現場の状況がある。
 埼玉医大でコロナ対策を担当しておられる岡秀昭教授は、第三波では家庭内や福祉施設の感染が広まり、重症の高齢者がふえている、そこが第一波、第二波と違うと述べておられます。
 高齢者、基礎疾患のある患者は、軽症で入院しても、中等症、重症へと悪化することがあります。介護施設から入院した患者の場合には、介護職員の行っていた仕事を看護師が行うようになります。一般のコロナ患者に比べて三倍の負荷がかかると言われております。
 高齢者、基礎疾患のある患者がふえる中で、患者の重症化が進み、医療機関、医療従事者の負担が増しているという状況にあると思いますが、西村大臣、このような医療機関、医療従事者の負担が増しているという実態についてどのように受けとめておられますか。
○西村国務大臣 御指摘のように、感染者の数が、新規陽性者の数が非常に高い水準で続いてきております。当然、入院される方、そして重症化される方もおくれて増加されてきますので、そうした中で、今、医療提供体制、医療現場への負荷が、負担が大変重いものになってきているという認識を持っております。幾つかの地域では病床も逼迫をしてきているわけでありまして、医療現場の支援、医療提供体制への支援に全力を挙げているところであります。
 まさに、専門家の皆さんと、そして都道府県知事と、こうした強い危機感を共有しながら対応してきているところであります。
 現場で医療に当たっている医療従事者の皆さん方に、改めて感謝申し上げたいと思います。
 その上で、こうしたことに応えていくために、これまでも、診療報酬の大幅な増額であるとか、あるいは空床確保への単価の引上げであるとか、また、清掃などの業務を民間事業者に委託する、これは看護師さんたちの皆さんの負担を軽減することにつながるわけですけれども、こういったことを補助するなど、医療従事者の負担軽減を行っているところでありますけれども、さらに、厚労省から医師や保健師の派遣、あるいは都道府県から看護師さんの派遣、自衛隊から医療チームの派遣など、医療現場の支援に全力を挙げているところでございます。
○塩川委員 医療現場の負荷が重くなっているというお話であります。
 コロナ対応のフル装備を現場でしますと、長時間作業は耐えがたいものになる。ある病院では、そういったフル装備での作業そのものは十五分以内にとどめたいということでの努力をしているんだけれども、実際には、午前中に入ったらお昼まではそういう作業が続かざるを得なくなるような、そういう大きな負担がある中での仕事に従事しておられるということで、訓練されていない方も、現場、最前線の仕事に従事せざるを得なくなっている、リハビリのスタッフの方にも感染の懸念も広がっている。こういう大きな負担感のある中での仕事をしておられるのが、医療機関の現場の実態だと思います。
 こういった仕事に従事しておられる医療従事者に対して、ボーナスが引き下げられているという問題が出ております。
 ことしの夏のボーナスについても、三病院団体の調査で、四分の一を超える病院が減額支給せざるを得なくなったということでした。
 冬のボーナスに関する日本医労連の調査では、加盟労働組合のうち、昨年実績と比較可能な三百九十六組合のうち、約四三%に当たる百七十組合でマイナスだったということであります。中でも、そのうちの三十三組合は組合員平均で十万円を超える大幅減額を提示されて、下げ幅が最も大きい東京都内の施設では約三十五万円の減となったということです。
 大臣、お尋ねしますけれども、コロナ対応で本当に全力で頑張っておられる医療従事者のボーナスが下がるようなことなど、あってはならないことだと思いますが、大臣はどのように受けとめておられますか。
○西村国務大臣 改めて、医療現場の皆様が本当に感染リスクを抱えながら最前線で対応していただいていること、敬意を表したいというふうに思います。そうした献身的な活動にしっかりと報いていかなければならないというふうに考えております。
 御指摘のように、四病院団体の協議会の調査では、この冬季の賞与について、減額支給を予定している病院が約二三%程度あるという結果が出ているものと承知をしております。
 政府としては、これまで包括支援交付金など約三兆円を医療機関への措置としてきたところでありますけれども、残念ながら、実際に届いているのはまだ〇・八兆円程度というふうに聞いております。都道府県においても、それぞれの議会の手続は終わっていると承知しておりますが、さらに、この執行事務を行う都道府県に対して厚労省から、この迅速化について、早期執行について要請をしているものというふうに聞いております。
 まずは、こういった支援が医療現場の皆様方にしっかりと届くことが大事でありますので、引き続き、私の立場からもお願いをしていきたいというふうに思います。
 また、独立行政法人の福祉医療機構、いわゆるWAMでありますけれども、無利子無担保などの融資の枠を拡充してきております。こうしたものも活用いただければというふうに思いますし、医療機関の皆様にはどういった支援策があるのかというコールセンターを十二月四日から、総合的な相談を受け付けるということで設置をしております。そうした相談を今受け付けているところであります。
 あわせて、今般の総合経済対策におきまして、緊急包括支援交付金の増額を約一・二兆円、三次補正において積み増しをすることとしておりますし、また、医師や看護師などを重点医療機関に派遣する場合の支援額を倍増するという措置も講ずることとしたところであります。
 いずれにしましても、私の立場からも、厚労省そして都道府県と緊密に連携をして、一刻も早く医療機関に支援が届けられるよう支援をしてまいりたいというふうに考えております。
○塩川委員 いろいろな支援を行っている、これからも三次補正などで対応するということなんですけれども、現にこの十二月のボーナスがカットされているんですよ。これに対して、今からでも、穴埋めをする、それができるんだ、そういう支援になっているということですか。
○西村国務大臣 本当に残念、まだ届いていないということで残念なことではあるんですけれども、約三兆円の手当てを、医療機関への措置を計上してきているところでありますので、これが実際に届いているのがまだ〇・八兆円ということでありますから、これをまず届けることが何より大事だというふうに考えております。
 厚労省、都道府県と連携をして、迅速に届けられるように取り組んでまいりたいというふうに考えております。
○塩川委員 いや、ですから、今のボーナスカットの問題をどうするんですか。現場で働いている皆さんは、何よりももう精神的につらい、加えて、肉体的、身体的にもつらい。その上に、そういう環境の中で奮闘しておりながら、こういった、待遇が悪化をするということはどういうことなんだと。献身的に頑張っておられる医療従事者のそういう思いに逆らうようなことが現場で起こっていることに対して、少なくともボーナスカット分については穴埋めをします、政府の今のこの支援策でできますとはっきり言ってもらえませんか。
○西村国務大臣 繰り返しになりますけれども、医療機関への支援、約三兆円を計上してきております。これを一刻も早く届けることが大事だというふうに考えておりますし、その間の資金繰りについては、先ほど申し上げた無利子無担保の融資の仕組みもあります。そして、相談窓口もつくっておりますので、医療機関からの相談も受けながら、また、厚労省、都道府県と緊密に連携をとりながら、まずは資金を届けて、そして、それぞれの皆さんの処遇の改善につながるように取り組んでまいりたいというふうに考えております。
○塩川委員 医師、看護師派遣についての支援額を倍増するというのは入れた、これはこれで必要な手だてかもしれません。しかし、そういう形で個別に対策もとるのであれば、ボーナスカット分について穴埋めをします、この例えば包括支援交付金などを使ってそれができますということを現場に伝えるということが何でできないんですか。そういう措置を行う必要があるんじゃないですか。
○西村国務大臣 繰り返しになりますけれども、こうした資金を活用して医療機関への支援を行っていく、そうした中で、当然、現場で本当に献身的に働いておられる皆さん方の処遇改善にもつなげてまいりたいというふうに考えているところであります。
○塩川委員 それではやはり現場のボーナスカットの問題に対応できない。
 北海道の医労連の緊急アンケートでも、こういう精神的な負担を感じるという回答が七三・四%あったということです。冬のボーナスも三十五施設中十六施設で減額で、昨年比では四万六千円下がった。看護師の使命感だけに頼るというのはもう限界だ、医療現場には赤信号がともっていると訴えておられます。
 このように、医療従事者の過酷な労働実態と賃下げなどの待遇悪化というのは、労働意欲を減退をさせ、離職の契機にもなり得る、コロナ対策そのものを後退させることになる。今からでも、こういうボーナスカット分を穴埋めするような支援策を行うべきだ。同時に、なぜ医療機関がこういう、ボーナスカットなどを行うというところは、病院、医療機関経営全体の減収が大変大きいという問題があるわけです。
 二千五百の病院が加盟する国内最大の病院団体である日本病院会の相澤孝夫会長は、コロナ禍以降、全国の状況はボクシングでいえばノックアウト寸前の状態が続いています、コロナ禍以前から病院の経営は極めて厳しかった、一八年度、一九年度、二期連続で赤字となった病院は四分の一を占める、医療機関の倒産はここ十年で最多となった、追い打ちをかけるようにコロナというパンチが飛んできたんですと。
 このように、医療機関の減収補填をしっかり行う、このことこそ必要じゃないですか。大臣、いかがですか。
○西村国務大臣 これまでも御説明申し上げてきていますけれども、約三兆円を包括支援交付金などにおきまして措置をしてきております。そのほかに、診療報酬の特例的な措置ということで、集中治療室におけるその評価、それから、中等症以上の患者における評価五倍などしてきているところであります。
 さらに、先般、三次補正におきまして、小児科等への支援、それから、新型コロナウイルス感染症からの回復患者の転院支援に係る診療報酬上の特例的な対応、こうしたものも含めて、緊急支援交付金を約一兆二千億円の積み増し、これを図ることとしております、閣議決定したところであります。こうしたものも活用していただきながら、厳しい状況にある医療機関の経営をしっかりと支援をしてまいりたい。私の立場からも、厚労省、都道府県と連携して対応してまいりたいというふうに考えております。
○塩川委員 コロナ対応のいろいろな細目についての積み上げ的な費用、これはこれで必要なところはあるでしょう。しかし、今の受診抑制などを含めて医療機関全体が大幅な減収となっているということが、地域医療を支えるそういう医療機関の経営を困難にしていく、医療従事者の皆さんのこういった労働条件を悪化させることになる、これを改めるとしたら、減収そのものにしっかりと補填するということが必要だ。
 そもそも、産業別に見ましても、製造業での経常利益率は大体六・六%、非製造業は五・〇%です。しかし、医療機関の経営というのは、病院経営の定期調査を見ると、三病院団体の調査では、経常利益率、二〇一七年度は〇・〇%、二〇一八年は〇・一%なんですよ。ここに国の制度として診療報酬のように公定価格が定められていて、ぎりぎりの経営が強いられている状況があります。慢性的な経営危機にあるというのが医療機関であって、非営利なので大もうけをすることはないけれども、赤字には少なくともしないという仕組みであるはずだったのではないのか。
 そういったときに、コロナの異常事態ですから、こういう異例の事態に備えて、国が責任を持った財政措置こそ必要であって、減収補填をしっかり行うことが日本の医療体制を支える、コロナ体制に万全を期す、その上で必要なことではありませんか。
○西村国務大臣 繰り返しになりますけれども、これまでも約三兆円の医療機関への支援を措置してきたところであります。
 その上で、診療報酬などでも特例的な対応で、集中治療室については三倍増であるとか、中等症以上の患者さんについて五倍増であるとか、そしてまた、影響を受けている科目として小児科等への支援、さらには転院支援に係るまた特例、こういったものも含めて、今回、約一兆二千億の交付金の積み増しを行うこととしているところであります。
 コロナの影響によって診療体制を弱体化させることなく地域の医療機関が診療を継続していくため、これが重要であります、御指摘のとおりであります。まさに、医療提供体制の確保に万全を期すという観点から、こうした支援をしっかりと実行していきたいというふうに考えております。
○塩川委員 答えておりません。医療従事者をしっかり支える上でも、医療機関は絶対に潰さない、こういうことをしっかりと伝えられるような支援策を行う、そういう減収補填こそ行えということを強く求めておきます。
 こんなときにGoToトラベルをまだ続けるのかという問題であります。
 二十八日から一月十一日まで全国一斉に一時停止ということですけれども、危機的事態の今こそ、今から全国一斉停止すべきではありませんか。
○西村国務大臣 分科会からの提言をいただいております。これは、ステージ3相当の対策が必要となる地域について一時停止を行うということ、あわせて、年末年始、静かな年末年始を過ごすようにというこうした提言をいただいております。
 まず、最初の方の提言を受けて、私ども、大阪市、札幌市、そして今回、名古屋市、東京都について一時停止などの措置を対応したところであります。感染が拡大している地域との行き来を奨励することはないようにということで一時停止しているわけであります。
 その上で、静かな年末年始を過ごすべき、こういう御提言を踏まえて、年末年始の時期はお店も企業も休みになるところが多いですから、接触機会を削減する、これは有効なタイミングであるということで、年末年始について、GoToトラベルについては全国一斉に停止をするという、いわば予防的なことも含めてそうした対応を決めさせていただいたところであります。
○塩川委員 菅総理は、年末年始にかけてこれ以上の感染拡大を食いとめる、医療機関などの負担を軽減するため、最大限の対策を講じるというふうに、医療機関の負担軽減と言っているのであれば、まさに年末年始に深刻な逼迫状況を生み出さないように、今からGoToトラベルを一時停止するというのが行うべき仕事なんじゃないでしょうか。改めて。
○西村国務大臣 医療が逼迫している状況も含めて、この四つの地域について、かなり厳しい状況になっているということでありますので、この四つの地域について、GoToトラベルについては一時停止などの措置を講じているところであります。そしてあわせて、いわゆる時間短縮の要請も、それぞれの地域で、かなり長い期間にわたって、これは本当に飲食店の皆さんには大変厳しい状況になると思いますけれども、そうした皆さんにも支援をしっかりと行いながら、これにぜひ応えていただいて、何とか、もう既にそうした対応はとられていますので、年末に向けて感染拡大を抑制していけるように、全力を挙げて取り組んでいきたいというふうに考えております。
○塩川委員 GoToトラベルは直ちに停止をする、観光業、飲食業への直接の支援策をしっかりと行え、このことを求めて、質問を終わります。

日本共産党の躍進で、野党連合政権の道を確かに/栃木・佐野市で演説会

 栃木県佐野市で演説会。田村智子副委員長が講演。衆院北関東比例予定候補の大内くみ子さん、栃木1区の青木ひろしさん、栃木5区の岡村恵子さん、佐野市議選予定候補二人とともにあいさつ。

 全国でコロナ感染拡大が広がり、栃木県のコロナ病床稼働率も43.8%と、深刻な事態。そんなときに菅政権は、予備費を医療支援に充てず、GoToに注ぎ込む。逆立ち政治を正し、暮らしと営業を守る政治に転換しよう!

 米国いいなり、財界中心という自民党政治の二つの歪みをただす日本共産党の躍進で、野党連合政権の道を確かなものとしよう!

【「しんぶん赤旗」掲載】行政のデジタル化は何をもたらすか/塩川鉄也衆院議員に聞く(5)

「しんぶん赤旗」12月12日付・6面より

特定企業の利益重視

 ▶デジタル庁は強力な権限をもつことが想定されていますが、何が問題になるでしょうか。

 デジタル庁の創設によって、官邸直結の司令塔機能を設置し、さらに財界・特定企業の利益重視へ向かうことが、問題です。

 この間、安倍政権では、個人情報の利活用を進め、個人情報をもうけの種にした「ビッグデータ利活用」を成長戦略に掲げ、行政手続きや業務は「紙からデータへと転換」しオンライン利用の原則化、国や自治体保有の個人情報を民間企業が活用できるようにしました。

 経団連に求められるまま作り上げた官民データ活用推進基本法と相まって、行政サービスを簡素化させて、行政が保有する情報をデジタル化し、ビッグデータを活用できる大企業をもうけさせようとするものです。菅首相がいう「改革」とは、この間、官邸機能強化を最大限に活用した財界・特定企業の要求に応えた「改革」です。

権限・業務…徐々に明らか

デジクル庁の業務
▽国の情報システムを整備・管理し、関係予算は一括計上。システムの統合や一体化を行う
▽地方自治体の行政システムを統一し、全国規模でクラウトに移行
▽マイナンバー制度、カード普及の企画・立案を移管し、カードの発行や管理システム運営をしている地方公共団体情報システム機檎(J-LIS)への関与を強化
▽民間などのデジクル化を支援
▽デーク利活用を推進
▽サイバーセキュリティーの専門チームを設置し内閣サイバーセキュリティーセンクー(NISC)と連携
▽民間企業と行政機関を人材が行き来する体制を構築

 検討中のデジタル庁の権限・業務について、政府はなかなか公表しませんが、報道で徐々に明らかになってきています(表)。デジタル庁は、「強力な司令塔機能を有し、官民を問わず能力の高い人材が集まり、社会全体のデジタル化をリードする強力な組織とする」としています。平井卓也デジタル改革担当相は、デジタル庁の「民間人材の登用」を声高に述べており、デジタル庁設置の作業をしている準備室にも民間から12人採用しています。デジタル庁の体制は、500人のうち100~150人を民間から登用、事務次官級の「デジタル監」も民間から起用する方針も報道されています。

癒着排除必要 政治の転換を

 デジタル庁による国の情報システム統合によって、2025年度までに運用経費などを3割削減すると言っています。しかし、ICT(情報通信技術)化する業務が増えれば、関連予算が増加することは当然のことです。この5年間、情報システム関係予算は増加しています。各省庁のIT・情報システム予算は、今年度から順次内閣官房のIT総合戦略室(IT室)が予算査定から執行段階まで一元的に管理することになっていて、デジタル庁発足前から、すでにIT室が予算配分・執行に直接口出しできるようになっています。

デジタル庁創設に向けたデジタル改革関連法案準備室の職員に訓示を行う菅義偉首相=9月30日(首相官邸ホームページから)

 官民癒着の観点から見ると、現在IT室は、約半数の76人が民間企業の出身の非常勤職員です。政府は私の追及に対し、これらの職員が、出身企業に籍をおいたまま出向し、出身企業から給与補てんされていることについて、否定していません。このような民間企業の社員が、非常勤の国家公務員として、直接、政府のデジタル政策策定に関与し、しかも、予算配分にまで関わるようになっているのです。一部の大企業は「IT特需」にわき、国民には負担がのしかかり続けるということです。

 強力な権限と予算をもつデジタル庁になれば、さらに、官民癒着がいっそう問われることになります。官民癒着を排除し、このような政治を転換する必要があります。(おわり)

【「しんぶん赤旗」掲載】行政のデジタル化は何をもたらすか/塩川鉄也衆院議員に聞く(4)

「しんぶん赤旗」12月11日付・8面より

自治体を鋳型に収め

 ▶菅首相は、システムの統一・標準化を行うと言っていますが、どういうことでしょうか。

 デジタル化による行政サービスのシステムの統一・標準化は、重大な問題です。

 菅首相は、「2025年度末までに自治体の業務システムの統一・標準化を目指す」と述べています。現在、政府は、地方自治体のデジタル化を進めるために、複数の自治体の情報システムを集約し共同利用し標準化する「自治体クラウド」(※↓)の導入を推進しています。

標準化強要しサービス抑制

富山県上市町の事例をあげて行政手続きを原則オンライン化するデジタル手続き法案の問題点をただす塩川議員=2019年4月26日、衆院内閣委

 富山県上市町では、日本共産党町議の「3人目の子どもの国保税免除、65歳以上の重度障害者の医療費窓口負担免除」との提案に対し、町長が「自治体クラウドを採用しており、町独自のシステムのカスタマイズ(仕様変更)はできない」と答弁しています。「自治体クラウド」によって、「システムに行政の仕事内容を合わせる」ことが目的となり、自治体独自のサービスは抑制されているということです。

 システムの統一で情報共有がしやすくするともいっていますが、実際には情報抑制になりかねません。例えば、コロナ感染情報の公表について、内閣官房のIT総合戦略室が統一化を図ろうと、東京都のコロナ情報サイトのシステムを各道府県に押し付けましたが、公開情報が少ない東京がモデルのため、各道府県は別サイトでも情報を公開しています。一方で、「個人保護条例が厳しい自治体があるため、政府のシステムに乗らない」といって、条例の統一化も狙っています。

 このような自治体への統一・標準化の押し付けは、サービス低下を引き起こし、地方自治の多様性をなくし、自治体の自立性を失わせます。これは、「住民の福祉の増進を図ることを基本」とした地方自治体の住民自治・団体自治を侵害するものです。

 また、標準化の問題でいうと、引っ越しや死亡の際、民間を含め、複数の手続き・サービスを一括で実現させるコネクテッド・ワンストップを政府が進めています。しかし、決められたメニューから利用者がサービスを選ぶことになるので、選択肢が減ることになり、一概に利便性が向上するとは言えないのではないでしょうか。

 行政サービスの統一・標準化が引き起こすのは、官邸・デジタル庁がつくった鋳型にぴったりと収まるものでしか、サービスは受けられないということです。結果として、行政サービスは抑制的になりかねず、「自己責任」を押し付けることになります。

国会審議なし強力な支配も

 さらに、行政のデジタル化を急ピッチで進めることも問題です。デジタル庁をはじめとして、政府のデジタル化をどのような機能・権限を構築していくのか、設計の段階が重要です。

 特にデジタル技術は強力な支配をもたらすことが指摘されています。例えば、デジタルコンテンツの違法コピーを防止するには、複製を不可能とするプログラムをメディアに埋め込めばいいとなり、著作権法は実質不要となります。しかし、複製を拒むプログラムは、著作権法上合法な私的複製まで不可能にするということです。結局、国会審議を通じて行われる立法過程を飛ばして、システム設計によって、法的に認められている権利まで制約する、法を超えることを可能にするということです。

 拙速なデジタル庁創設ではなく、国民に開かれた形で、立法府が関与する必要があることは言うまでもありません。

※自治体クラウド=複数の自治体の行政に関するデータを、データセンター内にて管理・運用し、システムを共同利用すること。

(つづく)