2010年12月27日「しんぶん赤旗」掲載記事を転載します。
アナログ停波200日/崖っぷちの地デジ(2)
ビル陰共聴施設/遅れる政府の支援策
「来年7月までやれるはずがない。無理ですね」。全国約3200のマンション管理組合が加盟する「NPO法人全国マンション管理組合連合会」(全管連)の谷垣千秋事務局長は言い切ります。
谷垣さんが指摘するのは、ビル陰の電波障害に対応する共同受信施設(共聴施設)の地上デジタル化が、来年7月の地デジ移行=アナログ放送打ち切りまでに間に合わないということです。
3割が未対応
9月末時点での総務省の調査では、全国のビル陰共聴施設のうち、地デジ対応が済んだのは70・2%。京都府(50・5%)、千葉県(50・7%)と都市部での遅れが顕著です。
ビルやマンションなどの建造物が原因で電波障害が起きた場合、その建物の所有者の負担で、共同アンテナから各戸にケーブルを引くなどの対策を講じてきました。全国で約6万8千施設、690万世帯が利用しています。
共聴施設を管理するマンション住民にとって、アナログからデジタルへの変更は、まったく想定外の事態。受信調査や施設の改修・廃棄には多額の費用と時間がかかります。総会で居住者の承認を得るだけでなく、施設を利用する地域住民への通知や説明会も開かなくてはなりません。
最近、共聴施設の改修を終えた埼玉県三郷市のマンションの場合、改修を終えるまでに費やした時間は1年半。管理組合役員は「地デジの知識や情報がまったくないなか、費用の捻出や地域住民への説明は本当に苦労しました」と振り返ります。
全管連では2007年1月、共聴施設の地デジ改修費用の国庫負担などを政府に求めました。しかし、助成制度が始まったのが昨年5月。完了まで面倒をみる「総合コンサルティング」支援は今年の5月になってから。
「政府の対応は後手後手なうえ、肝心の情報が伝わってこない」と管理組合役員。谷垣さんは「支援策ができても、伝わるのは管理会社止まり。これが『遅れ』の原因です」と指摘します。
改修のめどは
実際、助成制度の利用件数も伸びていません。今年の11月末まで4800件分の予算を用意していましたが、実際の申し込みは約1700件にとどまりました。いまだに改修のめどがたっていない「計画なし」の施設も、総務省の調査で8・3%。世帯に換算すると40万に達します。
日本共産党の塩川鉄也衆院議員が10月に訪問したケーブル会社「J−COM所沢」(埼玉県所沢市)の担当者によると、ビル陰対応が必要なマンション約100棟のうち、改修が済んだのはまだ半分程度。担当者は「対策が必要なマンションを回っていますが、まだ把握できていない施設も数多くあります。総務省のリストだけでは数は合いません」と危惧します。
塩川議員は、総務省の調査方法に疑問を投げかけます。「ビル陰共聴施設の管理者が、利用している地域住民に『個別でも受信できる』とチラシなどで周知すれば『地デジ対応済み』とカウントされる。これでは、双方がきちんと地デジに対応したのか、正確な実態が反映されません」
改修が間に合わなくても、アナログ波を止めるのか――政府の対応が問われています。 (つづく)
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