2010年12月30日「しんぶん赤旗」掲載記事を転載します。
アナログ停波200日/崖っぷちの地デジ(5)
塩川議員に聞く/沖縄の遅れ全国の課題
地上デジタル放送受信機の普及が、最も遅れている沖縄県。日本共産党の塩川鉄也衆院議員は11月25日の総務委員会で「沖縄の遅れは全国の課題」だとして特別の対策を求めました。9月の下旬に現地調査をした塩川議員に聞きました。
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調査の目的は、沖縄の実態を把握することで、残り期間がわずかとなった地デジ移行の課題を明らかにすることです。「デジサポ」や各自治体との懇談に加え、県内の民放3社の社長さんからも要望を伺いました。
全国で最下位
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竹富町役場で川満栄町長(右)と懇談する塩川衆院議員(左) |
総務省の9月末の調査で、沖縄県の地デジ普及率は全国で最下位の78・9%。全国平均より10ポイント以上も遅れている要因は何か。
まず第1に、地デジ放送の開始が沖縄では遅れたという問題がありました。国内で地デジ放送が始まったのは2003年12月ですが、沖縄本島では06年、宮古島や石垣島を含む先島諸島では09年10月です。他地域より地デジ対応の準備期間がありません。
2番目が、地理的な困難さです。沖縄は離島が多いうえ、31ある有人離島のうち電器店のある島は24。竹富町には一つもありません。総務省の調査でも、宮古島市と宮古郡の地デジ世帯普及率は65%、石垣市は69・7%と、沖縄本島(80・3%)よりもさらに10ポイント以上の差があります。
3番目はホテルや旅館に設置されているテレビのデジタル化の遅れです。有数の観光地でありながら、総務省は実態をまったく把握していません。あるホテルの支配人は「160室すべて地デジテレビに替えたら1千万円以上かかる。対応のめどが立たない」と嘆いていました。
最も深刻なのが、低所得者層への普及の遅れです。沖縄の県民所得は全国平均の約7割といわれます。現在、国では生活保護世帯など「NHK受信料全額免除世帯」(最大280万件)を対象に、アナログテレビに取り付ける地デジチューナーを無料支給しています。沖縄県でも独自の支援策として、市町村民税非課税世帯を対象に地デジテレビの購入費用として1万2千円を補助しています。
支援策進まず
しかし、県内で国の支援策はほとんど活用されていません。全国レベルでも、最大280万件が対象なのに、今年の7月までの申し込み件数は88万件にすぎません。
なぜか。デジサポでは「NHKの受信料を払っていない世帯が多いので、受信料契約とリンクした国の支援策の利用が進まない」といいます。また、この機会に地デジテレビに買い替えたい人にとっては、県の支援策の方がありがたい。
来年度、国はチューナー支給の対象を住民税非課税世帯にも拡大することを決めました。しかし、地デジテレビ購入にも補助をするなど、支援メニューも柔軟に対応しないとこれまでと同じ失敗を繰り返すだけです。
このように、沖縄での地デジ普及の遅れは、多かれ少なかれ全国の地方部では共通する問題です。支援策の強化・拡充とともに、来年7月のアナログ停波計画の延期を、おおいに検討し具体化する時期にきているのではないでしょうか。 (おわり)