2010年12月29日「しんぶん赤旗」掲載記事を転載します。

アナログ停波200日/崖っぷちの地デジ(4)


基地周辺被害/軍用機原因の電波障害


沖縄・宜野湾市役所内の「地デジ相談コーナー」訪れた塩川衆院議員

 沖縄県宜野湾市役所。フロアの一角に設けられた「地デジ相談コーナー」に来ていた男性が、日本共産党の塩川鉄也衆院議員に訴えました。

 「ドラマの一番いいところだったのに、米軍機が飛んできてテレビが映らなくなった。何のために高いお金を出して地デジテレビを買ったかわからない」

全然映らない


 9月末、地上デジタル放送問題の調査で宜野湾市を訪れた塩川議員。「米軍普天間基地は、市のど真ん中にあります。基地の周辺は航空機の爆音被害だけでなく、地デジ放送の電波障害被害も深刻でした」と語ります。

 航空機などで電波がさえぎられる障害(フラッター障害)はアナログ波でも起こりますが、地デジ波では画面がまったく映らなくなったり、モザイク状になるのが特徴です。
「さらに、普天間基地のヘリコプターや輸送機は、頻繁に飛び立って低空でゆっくり旋回するため、被害がより大きくなる」と塩川議員は指摘します。

 同市基地渉外課によると、市民から苦情が寄せられるようになったのは2007年以降。沖縄本島で地デジ放送が始まった06年直後のことでした。08年5月から市民に情報提供を呼び掛けたところ、今年の9月までに寄せられた被害は75件。その場所を地図に落とすと、被害は基地を取り囲むように広がっています。

 「米軍のヘリコプターが上空を飛行するたびにテレビ画面が消える」「家が滑走路の延長線上にあるため、ほとんど毎日テレビ画面が真っ暗になる。調査し早急に改善してほしい」――。寄せられた市民の叫びは深刻です。

 「解決」するためには、まず、地方自治体が事前に被害の有無を調査し、防衛省に対策を要請。その後、防衛省で独自に調査して被害の範囲を特定し、アンテナの整備やケーブルテレビへの移行などの対策を実施するという流れ。手間と時間がかかります。

 宜野湾市では基地の返還とともに、この間題についても08年10月に総務省や防衛省に調査を要請。ようやく今年の9月末から調査が始まり、対策工事は来年度から。「地デジに完全移行する来年7月24日までに間に合うのか」(市の担当者)予断を許さない状況です。

自治体が声を


 もう一つの問題が、「基地による電波障害の被害が起きていても、自治体が声をあげなければ、防衛省は対策を行わない」(塩川議員)仕組みです。

 たとえば、埼玉県の航空自衛隊入間基地。基地を直接抱える狭山市のほか、隣接する入間市や所沢市でも電波障害が想定されますが国に対策を要請したのは狭山市だけです。

 塩川議員は10月、入間、所沢の両市役所を訪れ、「住民から聞き取り調査を行って被害があれば、ぜひ国に対策を要望してほしい」と申し入れました。

 「本来、基地による地デジ電波障害対策は、地方自治体に負担をかけることなく、国が率先して対策をとるべきものです。また、対策としてケーブルテレビに移行する場合、月額視聴料金にも補助するなど、視聴者に負担をかけない仕組みづくりも必要です」 (つづく)

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