▼2018年通常国会の取り組み▼【4】地域振興 TPP・PFI・ホンダ狭山工場閉鎖問題(1)TPPの論戦(2)PFI法案の審議(3)ホンダ狭山工場閉鎖/大企業の社会的責任棚上げの産業政策を批判(4月6日、内閣委員会)

【4】地域振興 TPP・PFI・ホンダ狭山工場閉鎖問題
(1)TPPの論戦
1)日米交渉/国民に打撃/TPP11がベースに(5月16日、内閣委員会)
 関税撤廃などを盛り込んだ環太平洋連携協定(TPP)加盟11か国による新協定「TPP11」について、米国からはTPP11をベースに日米二国間協議でさらなる追加措置が求められる危険があると指摘しました。

 トランプ米大統領が「アメリカ第一」の立場から、「TPPに戻りたくない」「二国間協議がいい」と明言しているもとで、安倍首相が日米の新たな経済協議の枠組みをつくることで合意したことは、きわめて重大。日米二国間交渉のゆくえを中心にただした。

 トランプ大統領がTPPから離脱し、貿易協定は二国間交渉で進める意向を示したことで、日本の麻生太郎副総理と米国のペンス福大統領の経済対話、茂木敏光TPP担当大臣とライトハイザー通商代表部(USTR)代表の新協議機関(FFR)の創設を積み上げてきた。

 FFRで取り上げる課題は何かと質問。茂木担当大臣は「日米の関心事を出し合っていく。できるだけ具体的なテーマで議論したい」と答えました。

 すでに日米経済対話で、USTRが今年3月末に公表した2018年「外国貿易障壁報告書」に示された要求項目が議論され、具体的な措置もとられている。

 「外国貿易障壁報告書」では「(BSE問題は解消したとして)牛肉市場の完全な開放」を求めている。米国のBSE調査は1%未満だ。食の安全基準を犠牲にしてよいのかが問われている。国民の安全を損なうやり方は認められない。

 TPP,TPP11、日米二国間交渉が日本経済と国民生活に大打撃を与えることは必至だ。

2)参考人質疑 本質は多国籍企業の利益追求と参考人指摘(5月17日、内閣委員会)
 米国を除く11力国の環太平洋連携協定(TPP11)の関連法案について参考人質疑が行われ、政府の作成したTPPの影響試算の評価について質問しました。

 鈴木宣弘東大教授は「影響試算は、これだけの影響が出るからこれだけの対策が必要だという順序で進めなければいけない。政府の試算は“影響がないように対策するから影響がない”と計算している。対策を検討するための試算になりえない」と指摘しました。

 わたしはまた、TPP11で多国籍企業が投資先国を提訴するISDS条項など22の「有害条項」が「凍結」された効果を尋ねました。

 NPO法人アジア太平洋資料センターの内田聖子共同代表は「有害条項は22条項以外にも、食の安全や金融サービス等、非常に多くある。TPPの危険性は基本的に変わっていない」と答えました。

 わたしは、そもそもTPPは日米のグローバル企業の利益追求のためではないかと聞きました。

 鈴木教授は「ご指摘の通り、アメリカのグローバル企業が自分たちがもうけられるルールをアジア・太平洋地域に広げたい、これが端的なTPPの本質だ。日本のグローバル企業にとっても同じこと。アジアで直接投資を展開できる。グローバル企業の利益は増えるが、現地の人は安く働かされる。国内の人々は安い賃金で働くか失業する」と説明しました。

3)TPP11関連法案強行で反対討論(5月23日、内閣委員会)
 11力国による環太平洋連携協定(TPP11)関連法案が、自民、公明、維新の賛成多数で可決。反対討論に立ちました。

 山際大志郎委員長が職権で委員会の質疑を短時間で打ち切り、採決を強行したことに厳しく抗議。野党は、公聴会、関係委員会との連合審査、テーマ別審議などを要求してきました。TPP11が経済と国民生活にどのような打撃を与えるのか、などの国民に問題点を明らかにすべき国会の責務を果たしたとは到底言えない。

 もともとTPPは2年前の国会で国民の厳しい批判にさらされ、審議中に米国が離脱したにもかかわらず、政府・与党が採決を強行したものだと指摘。TPP11でも、関税・非関税措置の撤廃や、重要農産物の除外などを求めた「国会決議」に反する実態がそのまま生きており、認められない。

 また、4月の日米首脳会談で新たな経済協議の枠組みをつくることで合意したことは重大だ。米国に際限ない譲歩を迫られ、自由貿易協定(FTA)に行きつく。日本経済と国民生活に大打撃を与える。

 参考人質疑に出席した鈴木宣弘東大教授が、TPPで日本のグローバル企業の利益は増える一方、国内の人々は低賃金で働くか、失業すると明言した。世界の流れは、各国の食糧主権と経済主権を尊重した平等互恵の貿易と投資のルールづくりだ。

4)「経済・食料主権を侵害」本会議で反対討論(5月24日、本会議)
 米国を除く11力国が署名した環太平洋連携協定(TPP11)関連法案の採決が衆院本会議で強行され、自民党、公明党、維新の会の賛成で可決されました。日本共産党、立憲民主党、国民民主党、無所属の会、自由党、社民党は反対しました。

 TPP11は、TPPを丸ごと組み込んだものであり、国会決議に真っ向から反する。経済主権や食料主権を侵害するもので、断じて認められない――と反対討論しました。

(2)PFI法案の審議
1)PFI/優遇措置なしには成り立たず/制度見直せ(5月9日、内閣委員会)
 民間資金を活用して公共施設の整備促進をはかる「PFI法」改定案では上下水道事業について、民間が運営する「コンセッション制度」を導入した際に自治体の財政負担を軽減する措置などが盛り込まれています。

 PFI法が1999年に成立して以降、法改正を重ね、PFI事業者に金融支援するファンド創設や、専門ノウハウを持つ公務員の派遣制度などが導入されてきた。PFI事業者への優遇措置のオンパレードだ。法目的で、民間ノウハウ・資金の活用で効率的に社会資本を整備するとしているが、結局は優遇措置なしには成り立たないのがPFIの実態ではないかと質問。

 梶山弘志地方創生担当大臣は「PFI導入にはハードルがあり、その解消のための法改正だ」と述べました。

 総務省によるPFIを実施した自治体アンケート調査報告(2011年)では、7割以上が「今後予定はない」と回答していた。「一度やってもう懲りた」というのが自治体の声だ。こうした声に反して政府は、PFI導入の優先的検討を自治体に求める指針を出すなど、国が目標を決めて、自治体に押し付けている。

 梶山大臣は「PFIの導入はそれぞれの自治体が適切に判断することだ」と述べるに留まりました。

 わたしは「国が目標を決めて、自治体などに強く要請し、優遇措置を次から次へと打ち出さないと成り立たないのがPFI事業だ。抜本的に見直すべきだ」と強調しました。

2)PFI法改定反対/地方自治侵害と地元企業参入の妨げに(5月11日、内閣委員会)
 民間のノウハウと資金を活用して公共事業の整備促進をはかる「PFI法」改定案を採決し、賛成多数で可決。日本共産党は反対しました。

 昨年からPFI事業の中止を含む大幅な見直しを行っている愛知県西尾市で、二年前の市議会に提出されたPFI事業の「提案書」が墨塗りだらけだったこと、西尾市が行った「PFI事業検証報告書」の中で「民間事業者の著作権意匠権が絡むことで、情報開示が制限された」と述べている。住民自治の観点から重大な問題だ。PFIが事業者の都合を優先するがために起こる情報開示の後退だ。

 梶山弘志地方創生担当相は「適切な情報公開が重要」と述べるに留まりました。

 水道事業へのPFIコンセッション方式導入を進める静岡県浜松市が、内閣府からの全額補助で行った調査報告書の中で、コンセッション方式導入によって、地元事業者が排除されれば安定的・継続的な水道事業への障害となる懸念を指摘している、と質問。 

 梶山大臣は「もっともな指摘だ」と認めました。

 日本PFI・PPP協会作成の「PFI選定代表企業ランキング」では、ランキング上位は大手ゼネコンばかりで、上位10社だけで全体の35%を占める。結局、PFI事業は大企業の参入を促進し、地元企業を排除する仕組みとなっている。

 梶山大臣は「PFI導入は自治体の判断だ」と述べました。

 PFI事業は、地方自治を侵害し、地元企業の参入を妨げ、住民サービスの後退につながると批判した。

(3)ホンダ狭山工場閉鎖/大企業の社会的責任棚上げの産業政策を批判(4月6日、内閣委員会)
 ホンダ狭山工場の閉鎖が計画され、2021年度をめどに、寄居工場に集約するとしています。わたしは「寄居工場に行ける人ばかりではない」など不安の声が上がっていると指摘。

 厚生労働省は「狭山工場の約4600人の従業員の中には様々な事情で転勤できない方もいる」と認めました。

 ホンダは昨年10月に工場集約について記者発表して以降、まったく説明を行っていない。地域にきちんと説明するのはホンダが果たすべき最低限の責任だ。

 茂木敏充経済再生相は、「個別企業の経営判断について、コメントは控えたい」と述べました。

 ホンダが積み増した内部留保は国内4位の7兆4800億円に達している。黒字経営のホンダがなぜ、狭山工場を閉鎖しなければならないのか。多国籍企業の利益と、国民、地域経済の利益は一致しない。地域未来投資促進法で個別の企業へ支援を特化させるなど、大企業の社会的責任を棚上げし、産業集積、産地振興を投げ捨てているのが安倍政権の地域産業政策であることを批判しました。